北陸新幹線で行く,はじめての金沢

お庭,お菓子,お魚,お酒が揃う城下町をまわるため,金沢出身・東京在住者が往復しながらヒントを書いていきます。

金沢市営の観光施設3館でGoogleインドアビューを公開:能楽美術館は能装束の着用体験あり

Googleストリートビューで,建物の中を見られるインドアビュー。そこに,金沢市営の観光施設が3つ新しく公開されました。検索のために,3館を別の記事に。建物の前で撮った写真から。

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松の左側に見える枝は,右側の枝がガラスに反射しているのに,1本の木に見える不思議なコリドー。透けて見えているのではありません。偶然と思いますが,面白い写真が撮れます。

21世紀美術館前の施設でバスは多い

場所は,観光客の集まる金沢21世紀美術館と同じ敷地で,しいのき迎賓館の向かい側。金沢駅兼六園口(東口)の6番(または3番)バス乗り場から,兼六園シャトルを含むすべてのバスで11分ほど。広坂バス停下車すぐです。

このほか,7番乗り場の周遊バスも広坂バス停に止まりますが,金沢駅からは上のバスより大回りで,数分長くかかります。市内の他の観光施設からは,周遊バスの方がわかりやすく,それがおすすめ。

21美には入口が複数あって,降りたバス停によっては見落としがちなところ。しいのき迎賓館対面の大通りから,この通路が見えます。通路の奥,松の先に見えているのが21世紀美術館です。能楽美術館は下の通路の左側。

通路右側はふだん使いもできる工芸品の展示販売

写真の通路の右側は,金沢の伝統工芸品を展示・販売する金沢クラフト広坂です。食器や身の回り品が主体。若手から中堅作家の作品に重点を置いているので,普段使いのできる品揃えで,おみやげにも役立ちます。

他にない能装束の着用体験が無料

能楽美術館は,謡曲を嗜む人が多かった金沢で,能楽関連の装束等を展示する施設。なかでも面白いのは,能の装束を着られるところ。10時から16時まで,下のスペースで能装束を着せてもらえます。

とくに追加料金なし。画像の衣装を上にまとうだけで,手間のかかる着付けはいらないので,10~20分程度で完了とされています。また,この部分は,自分のカメラで撮影も可能です。

こういう企画の雰囲気が簡単にリンクできるようになったのは,インドアビュー公開の成果。外から想像できないけれど,実は面白い展示がある施設ほど,お客さんが増える可能性があります。

2階は能面と能装束の展示

2階の展示室では,能装束のほか能面などを展示。

能舞台に見立てたコーナーに,能装束が展示されています。振り返ると能面各種。なお,実際の能舞台を見たいなら,徒歩6分ほどの石川県立能楽堂で,催し物がない日に,無料で見学ができます。

右手に,KYOGENという,おそらく外国向けに作られたポスターが見えます。そういえば,狂言とか仕手とか,大人の戦略的な行動を表す現代用語も,語源はこの分野でした。

和食が認定されたユネスコの無形文化遺産では

ところで,もう数年前,ユネスコの無形文化遺産に和食が選ばれたことが,大きなニュースになりました。世界遺産の無形文化財版です。確認してみると,それは2014年。関係者が膨大なので,日本の世界遺産で無形文化遺産というと,今なお和食のイメージが圧倒的です。

和食は21件目で,1件目は能楽

とはいえ,和食は,日本に関する無形文化遺産認定で21件目。それより前に,日本で20件も認められていたことは,あまり報道されませんでした。

では,ユネスコの無形文化遺産日本第1号は何かというと,これを書くので調べてわかったことですが,能楽でした*1

能面を付けることをはじめ,人物がかなり抽象化されたステージは,たしかに特異。観衆に予備知識があってはじめて成立する芸能です。あまり本筋とは関係ありませんが,能楽がどういう位置づけか,とくに外国人向けの説明にはよいかも知れません。

チケットは21美とのセットもあるが21美の企画展は別

入館料は大人300円,65歳以上200円。21美の大型企画展以外のコレクション展(期間により変動して,360円から)とのセット券510円があります。通常は,このコレクション展のチケットで,写真をよく見るレアンドロのプールの下まで到達できます。

ただし,21美で入場者が多く集まるのは大型の企画展で,それは1000円以上のことが多いもの。そういう企画展との共通券はなく,見たいもので判断を。

他の市営施設も回るならパスポート1日券も

なお,21美を除く市営の文化施設16館をすべて回れるパスポートもあって,1日券510円,3日券820円,年間2050円です。1日券では,21美以外の市営有料施設を2館回るなら,もう得になります。

クレジットとSuicaなどが利用可

すでに,金沢市営の観光施設では,入館料の支払いにクレジットやSuicaなどが使えます。1日券からの共通パスポートの購入でも大丈夫。詳細は過去記事を。

高校生以下は無料で,学習の一環にも

高校生以下なら追加負担がないので,修学旅行などのワンポイントにもおすすめです。団体への内容の説明も予約により可能で,別に研修室の利用料がかかります。実は,お隣の21美も,上述の企画展以外のコレクション展は,窓口で手続きがいるものの,高校生以下を無料にしています。

現在の学習指導要領では,高校の音楽教育で,歌舞伎や能楽などの学習を求めています。グローバル化が進む現代では,海外の文化の理解とともに,日本固有の文化の海外への説明も重要だからです。とはいえ,能楽堂のある大都市部と古い都市以外では,能面や能装束の現物を見る場所がないという学校がほとんどでしょう。高校生以下の見学無料については,そういう活用法も期待されます。

*1:正確には,2008年に無形文化遺産に認定されたのは,能楽,人形浄瑠璃文楽,歌舞伎の3つ。しかしこれは,2001年から3回にわたる「人類の口承及び無形遺産に関する傑作の宣言」で選定されたものを継承しています。その3つの中で最初に認定されていたのは,2001年の能楽ということで,3者の中でもはじめの選定でした。

金沢市営の観光施設3館でGoogleインドアビューを公開:安江金箔工芸館はひがし茶屋街からすぐ

Googleストリートビューで,建物の中を見られるインドアビュー。そこに,金沢市営の観光施設が3つ,新しく公開されました。検索のために,3館ごとに別記事に。

周遊バスの通る大通り沿いの安江金箔工芸館は,ダーク調に金の縦ストライプの直線的なつくり。

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ひがし茶屋街中心部から徒歩3分

こちらは,ひがし茶屋街中心から徒歩3分ほどの大通り沿いで,アクセスはひがし茶屋街の各種案内と同じく,橋場町バス停下車徒歩2~5分です。ただし,周遊バス左回りなら,隣のバス停・東山三丁目下車の方がやや近く,徒歩2分です。ひがし茶屋街との位置関係はこちらの記事を。

この場所には2010年に移転新築したもので,金箔職人・安江孝明氏の寄贈による収蔵品をもとにしています。ひがし茶屋街には,金箔メーカーの出店が,オセロゲームと言われるほどに集中していて,それとあわせて散策できる場所への移転でした。

ひがし茶屋街は,新幹線開業後に人通りが急増。それにあわせて,カフェや料理店,工芸系のショップなど多様な出店がつづきました。一方,この館内にはカフェや工芸品の物販はなく,以前の静けさのまま。無料部分にも少し椅子があって,休憩ができます。

金箔の製造工程の紹介

展示の一つは,金塊(インゴット)から金箔をつくるまでの説明。

右上の金塊(インゴット)を,右下にある炉茶碗に入れ,約1300℃まで加熱して融かして成形。そこからは常温で,段階的に圧力をかけて伸ばします。

ここではものの展示だけですが,1g約4500円と高価なものが,どろっといく様子というのは一度見てみたいものです。一回の作業で融かす金塊は,1kgのインゴットで,時価450万円台。450万円を融かすのは,びびりますが,それだけカタルシスがあるのではと。

その後,その原料を厚さ約1/10000mmまで伸ばすことで,1辺10.9cmの金箔が約2万枚できるそうです*1。すると,原材料の原価としては,225円/枚(=450万円/2万枚)程度。手作業の工程が多いために割高となる人件費を加えても,十分に実用的な装飾材料になります。

なお,付属する研究所の動画では,融かす金のインゴットが見えるのですが,刻印が三菱マテリアルや田中貴金属などではなく,クレディスイスなのはびっくりしました。

金箔が重要な役割の工芸品も展示

もう一つのメインは,金箔を使った工芸品の展示。他の公立美術館のように,収蔵品すべてを展示するスペースはなく,展示品は時期により変わるようです。

ストリートビュー撮影時は,人間国宝・吉田美統みのり氏の九谷焼で,釉裏金彩大山蓮華文皿ゆうりきんさいおおやまれんげもんざらです。

厚みの違う金箔を貼り付けてから焼き上げる釉裏金彩の技法で,人間国宝の認定。広い面積で微妙に違う輝きを作り出せるところに,金箔の特性が活かされています。その代表的な作品はこちら。

購入は,金沢市内なら,歴史ある鏑木商舗野村右園堂諸江屋(あいうえお順)などで。これらお店は,金沢駅ビルの金沢百番街「あんと」にも出店があって,そのインドアビューに写り込んでいます。

ガラスケースの上段左で,存在感のある光彩です。そして,この一角が金沢百番街で最も高額の商品。ガラスケースの上段あたりが,お二方の人間国宝をはじめとする作家の品で,円で6桁から7桁です。

なお,金箔を利用した作品も含め,高い水準の工芸品が多く所蔵される施設に,石川県立伝統産業工芸館石川県立美術館があります。2館とも,兼六園に隣接です。

金箔需要を支えた金沢独特の仏壇

金箔工芸館のインドアビューに戻ると,金沢周辺ならではのものが目に付きます。旧家には今でもあるもので,一番驚かれるのはこちら。

典型的な金沢仏壇で,寄贈者の安江孝明氏ご自身が金箔の製作にあたられたものです。日本の住宅用の仏壇では,木の素材そのままか,素朴な漆塗り基調のものが標準的。一方,金沢では,すべて黒の漆塗りに金箔を多用したこうした装飾が見られます。

手の込んだ装飾で,お寺さん用かと思われますが,寺院向けにはもっとずっと幅広のものが別に作られています。こちらは扉を閉じると,幅が半間(畳の短辺の長さ)となる,戸建住宅用。この地域に独特の伝統工芸ですが,この装飾が往時の金箔の需要を支えたことは確かです。

以上の館内は撮影禁止で,これまでは内容の説明が難しかったところ。インドアビューの公開で,内部をぐりぐりと探索できるのは便利なことです。

入館料は300円,1日乗車券などで50円割引

入館料は大人300円,65歳以上は200円。50円割引となる対象として,北陸鉄道バスの1日乗車券(500円),いしかわ観光旅ぱすぽーとのほか,JAF会員クラブオフ福利厚生倶楽部ベネフィットワンなどがあります。

また,高校生以下は無料なので,修学旅行などで,レポートをまとめる一素材としても。

16館回れるパスポートは1日510円

このほか,21世紀美術館を除く市営の文化施設16館をすべて回れるパスポートもあって,1日券510円,3日券820円,年間2050円です。1日券では,21美以外の市営有料施設を2館回ると,もう得になります。

展示品の好みは各館それぞれで,いくつか回って波長のあう展示に出会うのがおすすめ。幸い,パスポートで入れるところは,周辺に集まっています。安江金箔工芸館から徒歩5分で,泉鏡花記念館,徳田秋聲記念館,金沢文芸館,徒歩6分で金沢蓄音機館,徒歩7分で寺島蔵人邸です。

クレジットとSuicaなどが利用可

すでに,金沢市営の主な観光施設では,入館料の支払いはクレジットやSuicaなどが利用できます。1日券からの共通パスポートの購入でも使えます。詳細は過去記事を。

注意:安江さんの寄贈で,安江町ではありません

なお,名称に安江を冠しているのは,安江さんの寄贈という意味で,地名の安江町や横安江町の商店街とは無関係です。また,2010年に移転する前の住所・北安江でもありません。安江の金箔工芸館というと,北安江時代の場所や,安江町にあるのかなと誤解されることがありますので,尋ねる際には住所(金沢市東山1丁目3-10)の確認を。

*1:金箔メーカー・箔座による,1分でわかる金箔,Vol.6の計算をもとにしています。

兼六園や21世紀美術館など主な観光施設で,クレジットと電子マネーの多くが利用可能に

2016年の3月末に,金沢市営の観光施設17か所で,クレジットカードと電子マネーが使えるようになりました。その後,兼六園の入園料など,県営の主な観光施設も追従しています。なお,兼六園は,入口の料金所や県営のお茶席・時雨亭での支払が対象で,その他の民間のお店は対象外です。

使えるカードをすべて紹介したページが他にないようで,試した結果と詳細を。

使えるカードの一覧

窓口にある表示は,下の写真のようです。日本で使われるカード・ブランドと電子マネーを,ほぼすべてカバー。

金沢21世紀美術館など金沢市営の観光施設で使えるクレジットカードと電子マネー

クレカが広く使えるので,手元の円を減らしたくない外国人旅行客にも,受けそうです。また,外貨両替よりもクレカ払いの方が,適用される為替レートがよいのも,外国人には有利な点。

使えるクレジットカード

JCB,VISA,MasterCard,アメリカン・エキスプレス,ダイナース,中国銀聯,デビットカードとしてJ-Debit

使える電子マネー

Suica,ICOCA,PASMOをはじめ交通系ICカード全国相互利用に対応
関西私鉄系のPiTaPaや,北陸鉄道のICaなど地域限定のICカードは除く

楽天Edy,QUICPay,iD,WAON,nanaco

使えないものの方がわずかで,QUICPayが使えるのも好都合。それが発行できるクレカでは,ポイント還元はクレカと同一。事前のチャージの面倒なく,決済は電子マネーと同様にタッチだけです。

市営の観光施設ほぼすべてで利用可能

利用できるのは,観光客が訪れる施設で,市営のものは,ほぼすべて:

金沢21世紀美術館,鈴木大拙館,中村記念美術館,金沢能楽美術館,金沢市老舗記念館,安江金箔工芸館,金沢蓄音器館,前田土佐守家資料館,寺島蔵人邸,泉鏡花記念館,徳田秋聲記念館,室生犀星記念館,金沢文芸館,金沢ふるさと偉人館,金沢湯涌江戸村,金沢湯涌夢二館,金沢卯辰山工芸工房

以上17施設の入場料とショップ(一部を除く)などで支払可。自販機やロッカー,21美地下にある有料駐車場などは未対応の部分があります。

利用者の多い,21美のカフェレストランは,もともとクレカ対応で,現在は電子マネーも対応。21美のショップは,クレカのみ対応です。

県営では兼六園や金沢城の有料部分など

石川県営の観光施設でも,2016年度になって導入が進んでいます。現在までに導入済みの施設は以下の通りで,使えるカードの種類は金沢市と同じ。

兼六園(入園料のほか,お茶席・時雨亭も),金沢城公園(入園は無料で,有料施設の菱櫓・五十間長屋などとお抹茶のある玉泉庵など),県立美術館県立歴史博物館など

なお,兼六園内のお店には民間のものが多く,それは対象外です。県立美術館のカフェは,以前からクレカ対応です。

たとえば,兼六園桂坂口の料金所では,こんな感じ。

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金沢城内の玉泉院丸庭園は,もともと入園無料。そこにあるお茶席・玉泉庵の支払いも,電子マネーとクレカでできます。

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こちらは兼六園内の県営のお茶席・時雨亭と同じく,窓口から和服でのおもてなしです。

兼六園の入園料をクレカで払う英語のCM

なお,アメリカンエクスプレスカードのCMに,外国人観光客が兼六園の入口の料金所でクレジットカードを利用するシーンがあります。このCMはYouTubeで公開中。

登場するのは,2つ上の写真の窓口で,本当に使えます。京都や広島と並べてもらえるのは,ありがたいことです。

民間の運営施設では未対応

観光施設の一部は,各種財団や民間の運営で,クレカ・電子マネーとも未対応です。以下がその例です。

成巽閣せいそんかく,加賀本多博物館,志摩(ひがし茶屋街),野村家(長町武家屋敷跡),忍者寺(妙立寺),銭屋五兵衛記念館,大野からくり記念館など

ご注意:各種割引は先に提示を

一部の施設では,対象者に50円割引や団体料金の適用があります。たとえば,北陸鉄道バスの1日乗車券(500円),いしかわ観光旅ぱすぽーとのほか,JAF会員クラブオフ福利厚生倶楽部ベネフィットワンなどです。

従業員の福利厚生のため,勤務先が一括してこれらの会員になっている場合も多く,その会員証などはお忘れなく。当然ながら,それは支払いの前に提示を。クレカや電子マネーでは,支払後に提示しても,割引適用ができません。

どれが得か

クレカや電子マネーのポイント還元は,各所で比較されています。今回の導入施設ではクレカ全般が使えるので,年間利用額に応じたボーナスポイントなども考えると,有利なカードは人により様々でしょう。クレカ付帯のQUICPayなら,決済の時間も電子マネーと同じでワンタッチ。

チャージして使う電子マネーでは,以下のクレジットカードからのチャージが還元率1%超で,目立ちます。

それで,私のスマホの電子マネーとカードは,こんな感じに。

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還元率の点で,Suicaにはビューカード,nanacoにはリクルートカード(写真のプラスはもう新規加入停止に)を利用。電子マネーへのクレカ・チャージの便利さと,一部にあるポイント還元を知ってしまうと,おサイフケータイ機能のあるアンドロイドが手放せません。

おそらく,金沢駅の改札にICOCAが導入される2017年4月に,JR西日本のJ-WESTカードとJR東日本のビューカード,その他どれが有利か,また便利かが,話題になりそうです。このブログ,まったり金沢旅のはずですが,アクセスが多いのはそういう記事で,そのうちまとめます。

なお,Suicaが,コンビニも含めて街中でかなり使える現在でも,財布が膨らまないおサイフケータイでは,WAONとnanacoもあった方がお得です。WAONはイオンでの各種割引,nanacoはセブンでのクオカード購入や各種払込票の決済にも使えるからです。このあたりは長くなるので,また別記事に。

複数回るならパスポートも検討を

今後もお庭や建物の写真を撮るならと,この際,金沢市営の観光施設の年間パスポートをnanacoで買ってみました。決済はCARDNETの端末です。

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パスポートにはこの他に,1日有効の510円と,3日間有効の820円があります。有効期間や対象施設などは,以下の公式サイトへ。

金沢市文化施設共通観覧券|金沢文化振興財団

なお,同じ金沢市営でも,開催される企画展の料金が多様となる21世紀美術館は,このパスポートの対象外です。また,県の施設は割引だけで,さらに兼六園などは割引も対象外なのにご注意を。

*1:ビューカードでは,1回1万円以上の支払は,VIEW's NETの操作で,ボーナス一括払いに変更できます。この変更は,Suicaチャージの場合でもできるため,結局1万円以上のSuicaチャージは,ボーナス支払月の1月と8月まで無金利で繰り延べられます。ただし,1万円未満のチャージでは,この変更はできません。
 それで,必要な金額分だけをチャージしていくよりも,1万円ちょうどチャージして最大6か月(平均約3か月)ずつ金利ゼロで支払いを遅らせていくのが,経済的です。

ひがし茶屋街を見通す2階に和カフェの新店・波結(はゆわ)

金沢の写真の定番・ひがし茶屋街の通りを正面に

金沢旅行の写真として,兼六園のことじ灯籠,金沢駅の鼓門と並んでよく登場するのが,ひがし茶屋街のこの風景。

ひがし茶屋街のメインストリートを和カフェ波結(はゆわ)から眺める

古くは江戸時代からの風情ある茶屋建築が,奥まで両側に見通せます。火除けの役割もあるこの広見が,ひがし茶屋街でも人通りが最も多い場所。新幹線開業2年目,2016年5月の平日でも,散策と写真撮影の旅行者が途切れません。

ところで,これはどこから撮ったのかというと‥

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屏風状の簾戸越しに,ひがし茶屋街を眺められるテーブルには,抹茶パフェ。眺めのある食べ物の写真が趣味ですが,室内側が暗くなってしまうので,改めてパフェだけを。

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開店したのは和カフェ・波結はゆわ。ここから一つ北側の路地にある工芸品店・縁煌えにしらが出す2店目です。

抹茶アイスは定番として,抹茶をまぶしたわらび餅や白玉を添えています。奥には抹茶ブラウニーで,さらに甘栗をトッピング。ソフトクリームで覆わないのが,かえって新しく,もふもふ,もちもち,かっしりを,アイスを溶かしつつ楽しめます。

せっかくなので,上生菓子とお抹茶のセットも。

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遊び心のある金のプレートは,工芸品店ならでは。上生菓子は,加賀市の山海堂さんのものとのこと。

後日,再訪したときは,新メニューとして,アイスクリームに抹茶をかけて楽しむ,抹茶アフォガートが登場していました。

金沢・ひがし茶屋街の和カフェ波結(はゆわ)の抹茶アフォガート

1つの町家建築に2つ別の店

店の外観はこのような感じ。

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和カフェ・波結は右手に進んで2階にテーブル席。先ほどの写真は,2階のレトロなガラス戸越しの風景です。1階にも窓向きカウンター席が少しありますが,道行く人が多く,やはり眺めは2階から。ただし,テーブル席は窓側だけではなく,混み具合で眺めの良さも変わります。

実はこのお店,ひがし茶屋街で統一されている看板の行灯が,斜めに2店分かれています。

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1棟の町家建築に2軒のお店が入っていて,しかも両方とも和菓子とお抹茶を揃えているという変わったつくり。間違えないようにご注意を(というか自分が間違えた)。左手奥は,和菓子とお抹茶のある別の新店,菓舗Kazu Nakashimaさんです。

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そちらは,兼六園下交差点すぐの老舗和菓子店・中島の新ブランドと和カフェということで,そのうち機会があれば書いてみます。

地元ではコールドパーマで通じていた場所

こんな好立地が2016年にようやく新店なのは,コールドパーマの看板がかかっていた,歴史ある「さくらい美容室」の場所だから。ひがし茶屋街で,この通りを振り返る構図で撮影されたことのある方は,あの正面の場所かとわかるでしょう。少し前まで,Googleマップではコールドパーマの表記でした。その美容室は,反対側で営業を継続しています。

今はなきコールドパーマの看板は,ひがし茶屋街の奥から振り返って写真を撮ると必ず写るもので,検索すると昔の写真がたくさん出てきます。その場所が和カフェになったわけで,ひがし茶屋街でおそらく最後の好立地のお店です。

ところで,コールドパーマって何というのが,ここではじめてその看板を見た方の?だったのですが,現在のふつうのパーマがコールドパーマ。その昔,コールドでない,ホットなパーマがあって,その時代には新しいパーマの方法ということで看板にされていました。

平日でも人が途切れないひがし茶屋街

2016年5月の平日,木曜日の午後2時台に,何枚か写真を撮ってみましたが,混んでくるとこんな感じです。新幹線開業2年目でも,兼六園や21美に続く目的地として定着しているようです。

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写っているのはこの範囲に150人くらい。新幹線開業前は,平日昼なら,この範囲全部で数人程度の人通りだったはず。もっとも,店に入る人は歩いている人の一部で,店内では,お茶や買い物とも,ゆとりがあります。新店も,周辺部までじわじわ増えています。

その頃は,通行中に写真を頼まれても,茶屋建築の一棟全体を背景に,誰もかぶらない写真がすぐに撮れました。今では,写真にも工夫のいる人通りです。

カメラが少しかがんで人物と家並みを上向きに撮ると,周囲の人は構図の下に消えます。全体の写真とは別に,カメラと人物とも建物に近づいて,斜めに奥を見通す構図もあり。絞りが変えられるカメラなら,背景の人通りをぼかす方が自然でしょうか。

じっくり写真なら,別の路地や主計町も

写真が撮りにくければ,一本路地を変えると,人のかぶらない写真がまだまだ撮れます。街歩きは過去記事に。

こちらは1本南側の路地で,夜はバーになる,そばの武右衛門の前。

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さらにクランク状に進むと,工芸品店くるみやと,ランチのあと,夜は午前まで営業するカフェバー粋蓮の前。

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さらに奥へ進むと,午前3時ごろまでやっている茶房&BARゴーシュの前。

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振り返ってクランクを見通すと,ひっそりとした佇まい。

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こちらは,通りから1本北側の路地の奥,和菓子店・森八が出す,陶器の販売も兼ねた和カフェ「うつわの器」前。

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浅野川大橋を渡って大通りの反対側まで5分ほど歩けば,主計町かずえまち茶屋街で,日本料理店・嗜季しきの前。

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片側が浅野川と並木になる景観も,また独特です。

桜が一年を教えてくれる

桜も見納めですが,今年は落ち着いて桜を撮れる機会がありました。1年に数日だけの桜が,この1年を教えてくれます。兼六園内はネット上に膨大な桜の写真があるので,あえてそれ以外の公園や公道からの撮影ポイントを。

2017年のために,参考情報を追加しました。

金沢城公園周辺

百間堀ひゃっけんぼり(お堀通り)から石川門・石川橋を望んで。

金沢城石川門の桜満開の様子を百間堀から

兼六園の蓮池門口の下で,真弓坂口からは石川門方向へ少し歩いたところです。21美からも徒歩5分くらいと手頃なアクセス。周遊バスも通る道路の両脇に桜が並ぶ開放的な風景で,もとはお堀です。桜並木が続く道路左側が金沢城公園で,桜の上に見えるのが石川門に続く石川櫓。

道路右側は兼六園の外周部で,こちらにも点々と桜があります。奥に石川櫓と石川橋,右上の桜がふわっとかぶる撮影ポイントを探すと,遠近感や立体感が引き出せます。

その百間堀を行く,周遊バスの右回りを,道路反対の金沢城側から。

桜満開の百間堀(お堀通り)を行く城下まち金沢周遊バス右回り

4月1日から大型バスになったもので,撮ってみました。画像を明るくすると,結構乗っていることがわかります。人出にもかかわらず,バス停にゆとりができたのは,大きな改善です。

このあたりの写真の定番で,重要文化財の石川門・石川櫓。

満開の桜をしたがえる金沢城石川門の石川櫓

この下が,花見のこれも定番である沈床園ちんしょうえんで,花見客がお昼からすでに,夜の場所取りをしています。

そして,兼六園桂坂口から石川橋を渡って石川門方向。

兼六園桂坂口から金沢城石川門を満開の桜の時期に

兼六園と金沢城をつなぐ唯一の歩道橋で,両方を行き来すると必ず通る道。平日昼下がりでもなかなかの人出です。あえて,人出がわかるような構図の一枚です。

その石川門の手前です。

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このあたりは,撮影が主目的の人が集中していました。工夫のしどころなのでしょう。

石川門を入り,城内から外の桜をのぞくと。

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まっすぐ前を撮ると,人の顔ばかりになるので,この上向きの構図が限界です。写真で切れている下を,見物客がずっと流れています。

本多の森・石川県立歴史博物館

咲き始めのころですが,1909年から連続して竣工した,赤煉瓦の洋館を背景に。こちらも重要文化財です。

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桜は正面と後ろ側の数本だけですが,赤煉瓦の建物を背景に,人物などを撮りたい方にとっては,季節を問わず穴場です。

重要文化財指定を受けているため,外面にはお店などを作っておらず,明治から現代の多様な設定で,さまざまなコスチュームに合うでしょう。路面も同系色の煉瓦と芝で違和感がなく,人や車がかぶらないのも,撮影には好都合です。

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釉薬による艶のある,金沢ならではの黒い屋根瓦が照り返します。並んで3棟あるのも,面白い構図が試せるかと。

浅野川河畔・ひがし茶屋街方向

ひがし茶屋街は浅野川から路地を奥へ入ったところですが,その手前の河畔の桜並木を浅野川大橋から写したもの。

金沢・浅野川大橋からひがし茶屋街方向の桜並木が満開

奥の梅ノ橋あたりまで,対岸に桜が並びます。その上流にはアーチ型の天神橋が望めます。ひがし茶屋街は路地の奥で,桜と組み合わせられないため,浅野川の川面と河原,上流の橋との構図を決めたいところ。

桜の右上あたり,卯辰山中腹には,日本料理の松魚亭,ステーキの六角堂の新館などが見えます。その上がやや陰になりますが日本料理店・卯辰かなざわです。

木造の欄杆で車が通れない梅ノ橋は,2時間ドラマなら何かが起こる場所で,映画・舞妓Haaan!!!のロケ地でも。

主計町かずえまち茶屋街は,桜,川,茶屋が揃う

こちらは,浅野川沿いに今なお続くお茶屋さんや,現代の営業に改めた新旧の料理店,さらにバーなどが並ぶところ。その前が桜並木です。

金沢・主計町茶屋街の浅野川沿いに咲く桜が満開(浅野川大橋方向)

考えてみると,金沢の三茶屋街で唯一,桜,川,茶屋が揃うところ。桜の写真としては,全国でも珍しい構成かも知れません。この花見の時期だけ設けられるぼんぼりには,お店か芸妓さんの名前が入ります。

その主計町茶屋街の街並みを,川下の方向に見通すと,こんな感じ。

金沢・主計町茶屋街の浅野川沿いに咲く桜が満開(浅野川大橋から中の橋方向)

夜の営業に備えて,日本料理の嗜季しきの前では,打ち水をされていたところです。この茶屋街は夜だけ営業の店がほとんどで,以前ならば平日昼の人通りはわずかだったのですが,今ではふつうに旅行や撮影目的の人々も行き交います。

1つ川下の橋である中の橋から,浅野川大橋方向の眺め。

金沢・主計町茶屋街の浅野川沿いに咲く桜が満開(中の橋から浅野川方向)

浅野川の左奥がひがし茶屋街で,右が主計町茶屋街,奥が卯辰山方向です。中の橋の上から,木造の欄杆も含めて,川の上流を見通す構図では,このように。

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浅野川の主計町茶屋街側は,中の橋から浅野川大橋まで,桜並木が続くのがわかります。浅野川大橋より上流は,桜並木が対岸のひがし茶屋街側に移ります。桜並木の奥行きがわかる構図で,ピントの置き場所や絞りも工夫のしどころ。手間をぼかしても面白いかも知れません。中の橋は歩行者と自転車専用で,前を人や車が横切らず,車の通行の邪魔にもならないため,じっくり試せるよい場所です。

浅野川大橋方向に戻って,主計町側から中の橋を背景に。

金沢・主計町茶屋街の浅野川沿いに咲く桜が満開(中の橋上から浅野川大橋方向)

最後に,主計町茶屋街の検番前にある照葉桜てりは・ざくら

金沢でもっとも早く咲くと言われる,主計町茶屋街の暗がり坂下・検番前にある照葉桜(てりは・ざくら)が満開から散り始め

泉鏡花の小説「照葉狂言」にちなんで植えられた桜です。金沢でも早く咲くそうで,同日回った上の金沢城では蕾もあったところ,ここはすでに散った花びらが路面にたくさん。

当時金沢で一番の繁華街だった尾張町から,大通りを通らず,この花街に向かう抜け道が,こちらの暗がり坂。名前通り,昼なお暗いのですが,両側を木造三階建,奥を階段に囲まれて,風が通らず桜には温かいのかも。

花街の路地の温もりに,ひっそりと咲いて散る桜です。

金沢の観光地入場者数ランキング,兼六園・金沢城・21美のトップ3は200万人台へ増加

2016年3月末に昨年分の金沢市の観光調査報告書が公表され,2015年1~12月の観光施設の入場者数がまとめられました。新幹線開業前を2か月半含んでいますが,変化の傾向がわかり,観光スポットを選ぶ参考にもなります。それを20位まで抜粋したのが下の表です。

金沢の観光施設の入場者数ランキング(人/年)
順位 施設 2014年 2015年
1 兼六園 1,969,694 2,887,894
2 金沢城公園 1,240,573 2,261,766
3 金沢21世紀美術館 1,678,513 2,213,780
4 石川県立美術館 411,707 444,309
5 妙立寺(忍者寺) 141,205 252,305
6 武家屋敷跡野村家 116,845 227,118
7 四高記念文化交流館 162,857 183,617
8 志摩(ひがし茶屋街) 85,399 159,127
9 県立歴史博物館 改装休館 157,575
10 県立伝統産業工芸館 107,859 118,948
11 成巽閣 59,623 112,256
12 足軽資料館 46,469 81,250
13 西茶屋資料館 37,036 66,549
14 鈴木大拙館 32,593 58,875
15 老舗記念館 35,979 49,790
16 県立能楽堂 50,728 48,262
17 天徳院 13,215 40,456
18 からくり記念館 32,680 38,444
19 金沢能楽美術館 29,545 37,173
20 安江金箔工芸館 23,920 33,300

出典:金沢市経済局,『金沢市観光調査結果報告書(平成27年)』,2016年3月
注意:この調査では客数が把握できない箇所に,街としてのひがし主計町かずえまち・にし茶屋街,長町武家屋敷,尾山神社近江町市場などがあります。調査できれば上位です。

やはり,兼六園がトップで,さらに90万人の伸び。隣接する金沢城公園は2位ですが,伸び率はさらに高く,82.3%と急増です。3位の21世紀美術館も順調に増加で,ここまでのトップ3は,いずれも年間200万人超となりました。

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写真は兼六園で,霞ヶ池を通して眺める唐崎の松。縦よりも横が長く,池に張り出して水面のわずか上(写真右方向)に長く枝を這わせてます。

近江町市場は,1日の通行量調査から推測すると4位相当か

観光客も多い近江町市場やひがし・主計町・にし茶屋街は,客数を全数把握できる場所がなく,年間集計はありません。

随時,通行量調査などが実施されているようですが,継続して公表されているのは,他の大通りや商店街とあわせて近江町市場のみです。その中で最多のポイントの推移は下の表の通り。

近江町市場の通行量最多地点と通行者数*1
通行者数/日 2013年10月 2015年10月
平日(エムザぐち 4915 7445
休日(よこい青果前) 4072 14313

出典:金沢市,『金沢市歩行者通行量調査報告書(平成27年)』,2016年1月

休日の3倍増に驚きます。地元客を含んでいますが,片方向としても平日に3722人,休日に7156人が通過。季節変動を無視すれば,年間170万人は堅そうで,21美の次に集客力のある場所です。

面白いのは,平日の最多通行量は大通りのいちば館前バス停側・エムザ口なのに,休日は市場奥のよこい青果前と変動する点。理由は,観光客向けの海鮮丼等の飲食店や駐車場が,その奥に位置するからでしょう。

兼六園より金沢城公園の伸び率が大

金沢城の風景で定番といえる,重要文化財・石川門。

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以前はここまでだったのが,城内にあった金沢大学移転後に,遠大な復元整備が進行中。菱櫓,五十間長屋,河北門,橋爪門などときて,2015年3月に玉泉院丸庭園が完成しました。いずれも,史料にもとづいた木造が基本です。それは当たっていて,観るところが増えるにつれ,観光客は伸びています。

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その他に,兼六園より伸びが大きな理由として考えられるのは,入園は無料で,上のように付加価値のある施設ごとに料金が必要な仕組み。写真はお茶室の玉泉庵です。SNS時代には,写真が自由に撮れるほど,関心のある次の入園者に広まりやすいため,無料エリアがあることは重要そうです。

この金沢城の築城には,当時の藩主・前田利家に預けられ,国外追放となる年まで26年間金沢に住んでいたキリシタン大名・高山右近が,指導にあたりました。2015年に,ローマ法王から日本人単独でははじめての福者に認定されたことで,その業績の1つとして再認識されるでしょう。住んでいたのが,3位の21世紀美術館の位置というのも奇遇です。

21美も3割増で,ここまで年間200万人台

21世紀美術館も,当初所蔵品がないところから新設された,地方の美術館としては,特異な伸びを続けています。天地ガラス張り円形の開放的な外観と,無料エリアを通り抜けられる構造。さらに,SNSで楽しめる,撮影可能な展示が多いことなども,効果をあげていると思います。

その点では,収蔵と保存に重点を置く旧来の美術館とは比較できないジャンル。

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兼六園と同じくらいの入場者数ですが,屋内に人が集まる分,金沢でもっとも混むスポットです。その回り方のヒントは,別記事にしました。

なお,21美の共同設計者の一人,妹島和世氏が,西武鉄道の新型特急電車を設計することになったのは,今後の話題になりそうです。西武側のプレスリリースでも,21美を代表作とされています。

時間に応じて楽しめる集積度

兼六園・金沢城・21美は,金沢駅からのバスも数分に1本で,着いたら3つを徒歩で回れる範囲。金沢駅兼六園口6,7番乗り場の(ごく一部の柳橋行を除く)すべてのバスで,兼六園下か広坂で降りれば到着。時間と好みに応じて,その場で先を考えられるのも,この3つに人が集まる理由でしょう。よくある「3時間観光」なら,このうち好きなものを観て,残り時間に周辺でお茶するのが簡単です。

4位の県立美術館には仁清の香炉(国宝)

21美が現代美術の企画展に力を入れるのに対し,県立美術館の常設展示は,古美術に特徴があります。加賀藩のもとで興隆した九谷焼などの陶磁器と,蒔絵・沈金に特徴のある漆器などの工芸品が主力。

常設展示の頂点は,国宝の野々村仁清作・色絵雉香炉。江戸時代初期に京都の仁和寺前に窯があった仁清の作品が,加賀藩前田家伝来で残っています。

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雉香炉は雌雄が揃っていて,左が重要文化財の色絵雌雉香炉,右が雄で国宝の色絵雉香炉と,ここにしかない並び。展示室は撮影不可のものがほとんどの中,この展示室は撮影可能なのも,ありがたいところです。

カフェと刀剣乱舞人気も

観光向けに特筆できるのは,カフェの集客力。隣が兼六園で,カフェだけの利用も,列ができるほどに見かけます。

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加えて,とくに若い女性に人気のオンラインゲーム「刀剣乱舞」ファンの来館も新しい現象。加賀藩主・前田家の所蔵品を継承する前田育徳会から寄託された品の展示室があり,刀剣や甲冑,茶道具などが,企画展で展示されるからです。

2015年は,天下五剣の1つ,大典太(国宝)と富田江(国宝)が展示されたことが寄与。2016年は,前田藤四郎の短刀(重要文化財)が5月19日から7月18日まで公開されるため,遠方からもファンの来訪が期待されます。

伸び率が高いのは,他にない施設

このほか入場者数の伸びで目立つのは,忍者寺78.7%増,野村家94.4%増,志摩86.3%増,成巽閣88.3%増,天徳院206.1%増です。思いつく共通点は,小さいながらも金沢独特の観光資源であること。他にないものほど,伸びしろがあったようです。

妙立寺みょうりゅうじ(忍者寺)

歴代の加賀藩主が参詣していた特別なお寺で,江戸時代の建築を残しています。他にない特徴は,隠し戸や隠し階段,落とし穴があること。藩主などの来訪時に外敵から防御しつつ,身を隠すためといわれます。忍者寺というのは,これら仕掛けをとらえた通称で,忍者がいたわけではありません。

電話予約制(ただし当日予約枠あり)で,内部が撮影禁止なのは,SNS時代には不利です。それで,写真が撮れるのはここまで。

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それでも観光客が急増しているのは,他の寺にはない仕掛けがある理由が,今一つ謎だからかも。謎解き的な関心が,かえって人を集めるお寺さんです。

藩主の参詣と防御の機能から,よく言われるのが出城説ですが,やや無理がある立地と構造とも思えます*2。栗本慎一郎氏が若い頃書いていた仮説のように,参詣を名目にした密会の場所説が自然と思われます*3

ただし相手は,栗本説のようなロマンスではなく,諜報活動での情報提供者などと考えると,しっくりきます。なぜ城内でなく寺が選ばれ,そこが狙われる危険があり,防御や逃亡の仕掛けが必要だったかです。証拠はなく個人的な解釈ですが,仕掛けの実物とともに,その推理を楽しむ場所です。

武家屋敷跡 野村家

長町の武家屋敷跡のうち,内部を観覧できるものです。当時の建築のままではなく,後で手が加えられたものですが,日本庭園を評価する米国の専門雑誌のShiosai Rankingで,2015年は18位,2016年は13位。それで外国人比率は高めです。このランキングは,日本建築と日本庭園の組み合わせを高く評価する傾向で,このような屋敷の鯉の泳ぐ庭に張り出した縁側が受けているようです。

その縁側は,Googleインドアビューで見られます。個人の撮影では難しい,お客さんが入らずに庭を見通せる風景です。

欧米の家と庭には,はっきりとした境があるのが当然。その感覚からすると,池を足下まで取り込んだ庭をつくれる日本建築と日本庭園の意匠は,珍しがられるのでしょう。

志摩(ひがし茶屋街)

芸妓さんのいたお茶屋を,当時の建物のまま残しているもので,重要文化財指定。

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艶を醸し出す朱色の内壁は,江戸時代から金沢のお茶屋さんに独特。さらに特別な群青色と並んで,料亭などにも受け継がれています。

重要文化財指定では保存が求められ,芸妓さんを置くお茶屋営業は難しいため,奥にお抹茶かお煎茶と和菓子の席をもうけたお店に改めています。

そのお茶席は,保存の制約のない続きの棟で,掘りごたつ形状のカウンター。

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当時の情緒を保ちつつ,昼にふらりと入れるお店に切り替えたのが奏功しています。また,内部が(交換レンズがないコンデジやスマホで動画以外なら)撮影可能なのも,お客さんがじわりと増えている理由でしょう。

成巽閣せいそんかく

兼六園に隣接して幕末に完成した,加賀藩主前田家の奥方御殿。つまり,当地のファーストレディの別邸で,正確には母親に対しての造成。この規模の現存例は全国でも他になく,それで重要文化財です。

加賀藩前田家の奥方御殿・成巽閣(Seisonkaku, the villa of the first lady)

金沢で,城の外に残る江戸時代のお屋敷の中でも,当然こちらが最大。長町の武家屋敷や大手町の寺島蔵人邸にある武家の質実な庭とはまた違う,女性好みの優美な庭が観賞できます。それでいて,万一に備える武者隠しがあるのが,要人の証し。

惜しいのは,建物内部や江戸時代に蓄えられた展示品が撮影禁止であること。庭は撮影できるために,写真はこのあたりが限界で,SNS的には不利です。それでも,末広がりに整えられた松、苔むした灯籠,つくばいの配置を,1枚にまとめたきれいな絵が撮れます。これも,てこの原理で支えられた,横に約20mも柱のないひさしのおかげです。

外国人向けにまだ伸びしろがあると思うのは,兼六園からも入口があって,門の前をとくに欧米系の外国人が大勢歩いているのに,中にはあまり入らないところ。長町武家屋敷跡の野村家では,Samurai houseという簡潔な説明で,欧米系の観光客が大勢訪れています。こちらの説明では,正確さのために固有名詞が多く,誰の屋敷で何があるのか伝わりにくいからかも。彼らの国で想像しやすいように,The villa of the first ladyと説明すれば,その価値に気付く人も増えそうです。

天徳院

加賀藩三代藩主前田利常の正室・珠姫の菩提寺です。

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珠姫は徳川家康の内孫で,徳川秀忠の次女,家光の姉にあたる方。正室に迎えられたのが3歳で,江戸から金沢へ。といっても徳川家からですから,不自由のないよう約300人のお供を連れてきて,現在の兼六園・桂坂口の茶店が続くあたりに,江戸町を作って住まわせたという規模です。

14歳で第1子を出産,以降三男五女をもうけましたが,23歳で病気のためお亡くなりになりました。この壮絶な生涯にこたえるため,菩提寺を建立し,丁重に弔ったのがこちらです。もともとこの婚姻は,徳川家康が仕組んだともいわれる「前田家の謀反の疑義」を晴らすための条件の一つ(慶長の危機)。この関係なくしては,加賀藩は潰されていたかも知れず,当時からのお庭に,さまざまな思いを抱く場所です。

このほかの施設などで気がついたことは,随時追記していきます。

*1:中学生以上の通行者の双方向の合計で,自転車も含む。よこい青果前は,2年ごとの大規模調査年だけ調査対象のため,2年前と比較。

*2:福井・米原へ続く北国街道沿いですが,出城ならば,犀川にかかる唯一の橋だった犀川大橋詰が理想的。現在地では,迂回してこの大橋まで回り込めそうです。また,境内はほぼ平地で,高い石垣や石段もなく,戦国時代の重要な寺が経験した焼き討ちには対応が困難です。

*3:栗本慎一郎,『都市は,発狂する。』,光文社,1983