北陸新幹線で行く,はじめての金沢

お庭,お菓子,お魚,お酒が揃う城下町をまわるため,金沢出身・東京在住者が往復しながらヒントを書いていきます。

金沢市営の観光施設3館でGoogleインドアビューを公開:安江金箔工芸館はひがし茶屋街からすぐ

Googleストリートビューで,建物の中を見られるインドアビュー。そこに,金沢市営の観光施設が3つ,新しく公開されました。検索のために,3館ごとに別記事に。

周遊バスの通る大通り沿いの安江金箔工芸館は,ダーク調に金の縦ストライプの直線的なつくり。

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ひがし茶屋街中心部から徒歩3分

こちらは,ひがし茶屋街中心から徒歩3分ほどの大通り沿いで,アクセスはひがし茶屋街の各種案内と同じく,橋場町バス停下車徒歩2~5分です。ただし,周遊バス左回りなら,隣のバス停・東山三丁目下車の方がやや近く,徒歩2分です。ひがし茶屋街との位置関係はこちらの記事を。

この場所には2010年に移転新築したもので,金箔職人・安江孝明氏の寄贈による収蔵品をもとにしています。ひがし茶屋街には,金箔メーカーの出店が,オセロゲームと言われるほどに集中していて,それとあわせて散策できる場所への移転でした。

ひがし茶屋街は,新幹線開業後に人通りが急増。それにあわせて,カフェや料理店,工芸系のショップなど多様な出店がつづきました。一方,この館内にはカフェや工芸品の物販はなく,以前の静けさのまま。無料部分にも少し椅子があって,休憩ができます。

金箔の製造工程の紹介

展示の一つは,金塊(インゴット)から金箔をつくるまでの説明。

右上の金塊(インゴット)を,右下にある炉茶碗に入れ,約1300℃まで加熱して融かして成形。そこからは常温で,段階的に圧力をかけて伸ばします。

ここではものの展示だけですが,1g約4500円と高価なものが,どろっといく様子というのは一度見てみたいものです。一回の作業で融かす金塊は,1kgのインゴットで,時価450万円台。450万円を融かすのは,びびりますが,それだけカタルシスがあるのではと。

その後,その原料を厚さ約1/10000mmまで伸ばすことで,1辺10.9cmの金箔が約2万枚できるそうです*1。すると,原材料の原価としては,225円/枚(=450万円/2万枚)程度。手作業の工程が多いために割高となる人件費を加えても,十分に実用的な装飾材料になります。

なお,付属する研究所の動画では,融かす金のインゴットが見えるのですが,刻印が三菱マテリアルや田中貴金属などではなく,クレディスイスなのはびっくりしました。

金箔が重要な役割の工芸品も展示

もう一つのメインは,金箔を使った工芸品の展示。他の公立美術館のように,収蔵品すべてを展示するスペースはなく,展示品は時期により変わるようです。

ストリートビュー撮影時は,人間国宝・吉田美統みのり氏の九谷焼で,釉裏金彩大山蓮華文皿ゆうりきんさいおおやまれんげもんざらです。

厚みの違う金箔を貼り付けてから焼き上げる釉裏金彩の技法で,人間国宝の認定。広い面積で微妙に違う輝きを作り出せるところに,金箔の特性が活かされています。その代表的な作品はこちら。

購入は,金沢市内なら,歴史ある鏑木商舗野村右園堂諸江屋(あいうえお順)などで。これらお店は,金沢駅ビルの金沢百番街「あんと」にも出店があって,そのインドアビューに写り込んでいます。

ガラスケースの上段左で,存在感のある光彩です。そして,この一角が金沢百番街で最も高額の商品。ガラスケースの上段あたりが,お二方の人間国宝をはじめとする作家の品で,円で6桁から7桁です。

なお,金箔を利用した作品も含め,高い水準の工芸品が多く所蔵される施設に,石川県立伝統産業工芸館石川県立美術館があります。2館とも,兼六園に隣接です。

金箔需要を支えた金沢独特の仏壇

金箔工芸館のインドアビューに戻ると,金沢周辺ならではのものが目に付きます。旧家には今でもあるもので,一番驚かれるのはこちら。

典型的な金沢仏壇で,寄贈者の安江孝明氏ご自身が金箔の製作にあたられたものです。日本の住宅用の仏壇では,木の素材そのままか,素朴な漆塗り基調のものが標準的。一方,金沢では,すべて黒の漆塗りに金箔を多用したこうした装飾が見られます。

手の込んだ装飾で,お寺さん用かと思われますが,寺院向けにはもっとずっと幅広のものが別に作られています。こちらは扉を閉じると,幅が半間(畳の短辺の長さ)となる,戸建住宅用。この地域に独特の伝統工芸ですが,この装飾が往時の金箔の需要を支えたことは確かです。

以上の館内は撮影禁止で,これまでは内容の説明が難しかったところ。インドアビューの公開で,内部をぐりぐりと探索できるのは便利なことです。

入館料は300円,1日乗車券などで50円割引

入館料は大人300円,65歳以上は200円。50円割引となる対象として,北陸鉄道バスの1日乗車券(500円),いしかわ観光旅ぱすぽーとのほか,JAF会員クラブオフ福利厚生倶楽部ベネフィットワンなどがあります。

また,高校生以下は無料なので,修学旅行などで,レポートをまとめる一素材としても。

16館回れるパスポートは1日510円

このほか,21世紀美術館を除く市営の文化施設16館をすべて回れるパスポートもあって,1日券510円,3日券820円,年間2050円です。1日券では,21美以外の市営有料施設を2館回ると,もう得になります。

展示品の好みは各館それぞれで,いくつか回って波長のあう展示に出会うのがおすすめ。幸い,パスポートで入れるところは,周辺に集まっています。安江金箔工芸館から徒歩5分で,泉鏡花記念館,徳田秋聲記念館,金沢文芸館,徒歩6分で金沢蓄音機館,徒歩7分で寺島蔵人邸です。

クレジットとSuicaなどが利用可

すでに,金沢市営の主な観光施設では,入館料の支払いはクレジットやSuicaなどが利用できます。1日券からの共通パスポートの購入でも使えます。詳細は過去記事を。

注意:安江さんの寄贈で,安江町ではありません

なお,名称に安江を冠しているのは,安江さんの寄贈という意味で,地名の安江町や横安江町の商店街とは無関係です。また,2010年に移転する前の住所・北安江でもありません。安江の金箔工芸館というと,北安江時代の場所や,安江町にあるのかなと誤解されることがありますので,尋ねる際には住所(金沢市東山1丁目3-10)の確認を。

*1:金箔メーカー・箔座による,1分でわかる金箔,Vol.6の計算をもとにしています。