読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

北陸新幹線で行く,はじめての金沢

お庭,お菓子,お魚,お酒が揃う城下町をまわるため,金沢出身・東京在住者が往復しながらヒントを書いていきます。

フランス人が楽しそうな茶屋街の夜:外国人宿泊客の約1/3は欧米からで,この割合は全国3位

観光スポット

このブログでも,金沢での外国人観光客増加に関する検索が続きます。開業2年目で,日本人観光客は若干の反動減のところ,外国人は増加基調のまま。

日本全体では,外国人観光客の多くがアジア系ですが,金沢で兼六園,ひがし茶屋街,長町武家屋敷,忍者寺に行けば,欧米からのお客さんも相当いるのが特徴。そのことがわかる統計と動画をとりあげてみます。

「県別にどの国から」という分析は多いが

何度か記事にした観光庁の宿泊旅行統計調査では,都道府県別に宿泊客の国籍を調べています。そのため,「どの国から,どの県へ」という2次元の集計ができます。

よくある分析は,都道府県ごとに,どの国からの宿泊客が多いのかを調べるもの。すると,日本のどこでも,アジア系が最多となり,地域により,中国,台湾,香港,韓国の割合が変わるという結論になりがちです。

「国籍別にどの県へ」を調べると別の様相に

一方,この統計では,各国籍の日本旅行者が,日本のどの県を選んでいるかと集計することも可能です。つまり,旅行者の嗜好の視点での分析です。すると,アジア系に限らない,全く別の実態が現れて,驚きます。

イタリア人の宿泊地で石川は全国5位

訪問客の国籍別に,日本のどこに泊まっているか,上位から見たのが下の表です。なお,データは,国籍がわかるもので直近の2016年8月分で,冬はこれより弱い傾向なのが留意点です。

各国籍の宿泊客ののべ宿泊者数
順位 フランス イタリア スペイン 中国
1 東京 京都 東京 東京
2 京都 東京 京都 大阪
3 大阪 大阪 大阪 千葉
4 広島 広島 岐阜 北海道
5 沖縄 石川 広島 京都
6 岐阜 岐阜 神奈川 静岡
7 石川 沖縄 石川 愛知
8 兵庫 神奈川 沖縄 沖縄
9 神奈川 千葉
和歌山
栃木
長野
山梨
10 千葉 神奈川
  石川:26位
観光庁,「宿泊旅行統計調査」,2016年8月*1

石川県は,イタリア人には5位,フランス人とスペイン人には7位の宿泊地で,規模の割に上位です。それも,フランス・イタリアからは,横浜と箱根を擁する神奈川や,浦安・幕張・成田に巨大ホテル群のある千葉を上回ります。

欧米からの観光では,より特徴的なのが広島。世界遺産の宮島・厳島神社と平和祈念公園・原爆ドームが主な目的地で,東京・京都・大阪の次に選ばれています。岐阜は,世界遺産の合掌造り集落・白川郷と,江戸時代の天領由来の街並みが残る高山市が,外国人に好まれる目的地です。

一方,中国からは,北海道と静岡が上位に入るところが特徴的で,広島は上位に入りません。富士山や北海道・沖縄といった自然の景観が求められているようです。

欧米系の割合が高いのは広島・京都・石川

次に,外国人客のうち地域ごとの構成割合を,都道府県別に並べてみます。

具体的には,この統計で分類のある欧州主要国(ロシアを除く)と,それにアメリカ・カナダを加えたもの,さらに中国が占める比率をつくります。それを,上位の都道府県から挙げると,意外なランキングに。

外国人宿泊者のうち各地域からの比率(%)が高い都道府県
順位 欧州主要国*2 欧米主要国*3 中国
都道府県 比率 都道府県 比率 都道府県 比率
1 広島 34.8 広島 47.1 静岡 76.5
2 石川 27.6 京都 36.7 茨城 63.3
3 京都 25.9 石川 34.5 奈良 62.2
4 岐阜 25.2 栃木 29.8 山梨 61.8
5 東京 12.3 岐阜 28.3 三重 54.7
全国平均 8.5   15.1   31.7
観光庁,「宿泊旅行統計調査」,2016年8月

外国人宿泊客のうち欧米からの比率が高くなるのは,まず広島,次に京都か石川です。京都は予想される結果で,むしろ広島の突出が目立ちます。石川も欧州で2位,欧米で3位で,京都と同程度の比率です。

石川へは3人に1人が欧米系で,全国平均の倍

石川県では外国人宿泊客の3人に1人は欧米系,4人に1人が欧州系で,この比率は全国平均の倍以上。どおりで,兼六園や茶屋街では,欧米系の観光客をよく見かけるわけです。

自然志向か文化志向か

表は略しますが,この統計を細かく見ると,欧米の中でも嗜好の差は大きいことがわかります。たとえば,アメリカ・イギリス・ドイツからは,石川よりも北海道が上位。一方,フランス・イタリア・スペインからは,北海道よりも石川が上位です。

日本を旅行する目的には,自然の景観か,建築や庭園も含めた文化か,そこに2つの方向性がありそう。たとえば,フランス・イタリア・スペインは,歴史的な建築など史跡が集積し,観光も街中が多い国。一方で,アメリカなどは,自然の景観が魅力の観光地が多い国です。住む土地の風景は,旅行を考えるときの参照基準となりますから,日本旅行でも行先の選択に反映されていそうです。

結局,金沢の観光地は,文化志向のフランス・イタリア・スペインなどからの旅行客に受けているところ。一方で,アジア系など自然志向の旅行客には,富士山や北海道・沖縄などの景観が好まれていて,近くでは五箇山・白川郷や立山黒部アルペンルートなどの方が受けそうです。

古い街並みにあわせる付加価値は

文化志向の外国人旅行客が石川を訪れる理由として考えられるのは,太平洋戦争の空襲にあっていない都市で,金沢が京都に次ぐ規模であること。それで,茶屋街などに江戸時代後期からの建築が残り,兼六園も大名庭園として一定の規模を保ちます。

とはいえ,日本庭園も寺社も京都・奈良の集積が圧倒的。フランス・イタリア・スペインからのお客さんには,京都が東京の次か,それを凌ぐトップの位置で受けていることも,納得できます。

ではなぜ金沢なのか,それを端的に表す動画を2つ。

金沢で外国人が楽しそうな動画

ヨーロッパからの金沢観光を素材とした動画では,次のものが金沢の特徴をとらえています。

こちらは,季節ごとに週3日のペースで行われている,ひがし茶屋街・懐華楼の外国人向けのイベント。2階のお座敷に,予約の外国人客を招き,芸妓さんが登場するものです。

伝統的なお座敷にはある料理や酒をなくし,芸事の観賞に限定することで,リーズナブルな価格で提供されています。外国人向けには,特別な紹介がいらないシステムが必要で,それもネット予約などで実現。選ばれたお客さんは,芸妓さんとのお座敷遊びに参加できるように工夫されています。

2階のお座敷と女将さんの英語が活かされる

これには,金沢のお茶屋が,置屋の機能だけでなく,2階に座敷を持っていたことが効いています。置屋は,芸妓が所属する芸能プロダクションのようなもので,料亭や旅館の宴席に芸妓さんを派遣するのが本来の業務。それで,全国的には,最小限の広さしかないものが普通です。

金沢のお茶屋はそれに加え,2階に座敷があって,自店で宴席ができました。人材派遣と飲食の座敷の提供を両方営む組織形態は,とくに金沢で発達したようです。それが今日まで維持されたことで,動画のような外国人向けのイベントもこなせています。

また,重要なのは,女将さん自身が英語で説明していること。別の案内役ではないことで,宴席の臨場感を自然な形で伝えています。それには,留学経験などが活かされています。さらに,踊りだけでなく,芸妓さんとの写真撮影が可能なのも,本来の宴席とは違う扱いで,ほかにない記念として喜ばれているようです。

茶屋建築に現代の日本酒バー

もう一つは,そちらから徒歩5分ほどの主計町かずえまち茶屋街にあるSAKE BAR KAZOE(數)で嗜む日本酒。

主計町は,ここに屋敷があった加賀藩士・富田主計とだかずえに由来する町名。かぞえまちと発音されることも多く,それとかけた「数」を旧字体にした店名です。茶屋建築を,カウンターとテーブルでの日本酒主体の店へ改装されています。

その浅野川を見渡せる町家建築の2階で,利き酒師でもある女性店主から,日本酒とあてをすすめられています。川面に明かりがゆれる風景に,日本酒がはまります。

動画を見ると,淡麗な吟醸酒では,のどごし爽やかで,すぐ満足げな笑顔。一方で,濁り酒には甘味が感じ取れる表情や,別の吟醸酒では少し渋い顔となるなど,飲み口にあった自然な反応です。

日本酒の味と香りは千差万別で,飲み比べの楽しさが伝わります。甘い・辛いというよりは,旨味と酸味そして香りのバランスで,好みも様々。酒好きには,好みに合う酒を探すプロセスに,幸せがあります。

代謝酵素が揃う欧米人こそ,度数の高い日本酒の奨めがいが

ところで,酒好きからすると,欧米からの旅行客はすすめがいのある存在。われわれ日本人と違って,アルコール代謝酵素が,ほぼ全員にあるからです。彼らはほとんど,日本で酒がかなり強い人と同じスピードで,すいすい飲めています。

日本酒は,ワインよりもアルコール度数がやや高く,日本人なら,好きでも1人2合ほどで終わる場合が多いもの。ほとんどが酒に強い欧米人にこそ,ワインよりも度数の高い日本酒の方が,向いているとも思えます。

彼らも,日本酒を飲み進めれば,ワインにはない方向性に気づくでしょう。穀物由来の甘味と旨味,それでいてリンゴやバナナ,ライチにも似た香りと酔い心地です。欧米では,穀物の酒というと,ビールのような苦味と酸味を効かせるもの以外は,蒸留酒がほとんど。蒸留していない米の酒で,ほのかな甘味や果物の香りがするのは,意外な発見のようです。

*1:第2次速報値で,遡及改定される場合があります。以下も同じ。

*2:イギリス,ドイツ,フランス,イタリア,スペインののべ宿泊者数/外国人ののべ宿泊者数。分子には,ロシアと,欧州でもその他の分類になる国は含みません。

*3:欧州主要国に,アメリカとカナダを加えたものの比率。

ジャパンディスプレイ白山工場が12月稼働:iPhone向け液晶パネル月700万台分の生産能力

金沢駅から車で30分にスマホの液晶パネル工場

金沢駅から車で30分ほどのところに,1700億円をかけて建設された,ジャパンディスプレイの白山工場。資金の大半を前払いしたアップルが,iPhone 7に使う液晶パネルの納入用に作らせた工場の一つです。

2016年10月に完成していながら,需給を見極めるために本格稼働は先送りしていたもの。その稼働が,日刊工業新聞で12月中と報道されました。ただし,企業サイトのニュースリリースには発表がなく,日経も現時点でとくに報道がありません。

ジャパンディスプレイは,スマートフォン用の液晶パネルの生産で,韓国のLGに次ぐ世界第2位。後で書く日経によれば,この白山工場は,スマホ換算で月産約700万台分(1.5m×1.85mで25000シート)の生産能力をもちます。ジャパンディスプレイの基幹工場の1つで,石川県で3工場目です。

ただし,12月にどの程度稼働させるのかは,明らかになっていません。

フル稼働ならiPhoneの数台に1台の液晶は白山工場製に

iPhoneの販売台数は,2016年の7~9月期で4551万台*1。また,iPhone 7は,9月の発売から年末までに約7000万台の販売ペースなどと各所で予測されています。

すると,フル稼働で月にスマホ700万台分生産された液晶がアップルに納入できれば,世界で販売されるiPhoneの数台に1台ほどの液晶は,この工場製のものになります。それほどに大きな投資で,成功すればジャパンディスプレイだけでなく,地域にも相当の波及効果をもたらします。

手元にあるので説明しやすい産業の一つ

これまでは,「金沢って何あるの」と聞かれたとき,観光以外では簡単な説明ができにくかったもの。これで,「iPhoneの液晶パネルの工場が,金沢駅から車で30分のところ」と説明できるようになりました。愛知の自動車関連,富山の医薬品やアルミ建材のように,石川で液晶パネルというわかりやすい製品ができたのはよいことです。

工場は,北陸自動車道のすぐ北側で,白山インターの少し美川より。小松空港から金沢駅へのリムジンバスの左側車窓に大きく見えます。キリンビール北陸工場の跡地で,昔ビール,今液晶パネルです。とはいえ,半導体工場は機密と防塵が絶対で,見学コースなどはまったくありません。

日経は厳しい事業環境を伝えるも,稼働の続報なし

完成披露式典は,10月18日に開かれていたところ。

それを報じた日経では,iPhone 6sの売れ行きが下方修正されたことで,稼働時期未定とされていました。現在も続報がありません。

その段階での市場環境と財務内容の厳しさは,8月の日経ビジネスで指摘されています。

過剰生産のリスクと機会損失のリスク

アップルが工場を持たないファブレスなのは,需要変動のリスクを負わないため。技術進歩が急速な製品では,わずかな過剰生産でも,価値が急速に毀損する在庫の山になります。

そのリスクをサプライヤーに負わせれば,自社は得意分野である開発力に特化して,収益を安定化できる。アップルの強さの源泉の一つが,そのリスクの分担にあることは,言い古されました。

ただしその強みは,需要に応じた生産がなされてこそ。需要があるのに生産ができなければ,今度は機会損失が深刻です。開発力で勝負するファブレス・メーカーと,生産設備で勝負するサプライヤーとの交渉力は,需給動向でめまぐるしく変化します。

8月の日経の記事では,iPhoneの販売は6sの売れ行きなどから予測して,弱気の見通し。それがわずか数ヶ月で増産要請に変わった理由は,サムソン製スマホの発火事故によるiPhoneへの需要シフトと言われています。アップルにとっては敵失ですが,少しのショックで需要が大きく振れるこの市場,一寸先は闇です。

液晶パネル工場でシャープ以外の集積

ジャパンディスプレイは,日立・東芝・ソニーの液晶パネル製造会社が,政府系の産業革新機構の出資で統合したもの。後で,パナソニックの千葉・茂原の工場も合流しています。そこで,シャープ以外の日本の液晶陣営が集まった格好。

その工場は以前から周辺に2つあって,今回が川北町の石川工場,能美市の能美工場に続いて3つ目。これらは車で15分ほどの間隔に点在し,中小型液晶パネルの生産拠点が集積します。

昔と違う北陸の製造業

石川の液晶パネルがアップルへの納入で伸びてくれば,北陸のものづくりの様相も変わりそうです。地域ごとに製品の生産額・出荷額を調べている経産省の「工業統計調査」から,工業出荷額を。

北陸新幹線関連4県の工業出荷額(億円:2014年)

  1位 2位 3位
新潟 米菓 有機化学工業製品 塗工印刷用紙
1918 1089 X
富山 医薬品製剤 住宅用アルミサッシ アルミ押出品
2991 1120 871
石川 建設機械・鉱山機械の
部分品など
ショベル系掘削機 他に分類されない
電子部品・デバイスなど
1630 X 1079
福井 駆動・伝導・
操縦装置部品
固定コンデンサ アルミ圧延製品
1158 992 918

出典:経済産業省,「工業統計調査」,品目編,第4表,平成26年調査分
注意:χは,該当する事業所が2以下の場合に,出荷額や在庫などの秘密が漏れないように数値を秘匿しているもの*2

新潟は上越新幹線では,と思われるでしょうが,2位の製品の有力メーカーである信越化学とデンカは,北陸新幹線の上越妙高駅と糸魚川駅の最寄りに工場があり,本社はいずれも東京。両駅のビジネス客は,この2社関連が鍵です。

上位はすでに繊維ではなく各県の特徴が

沿線の製造業では,金額で最高額となる富山の医薬品とアルミ関連が特徴的。医薬品は高齢化で国内需要が増えていく数少ない産業。さらに,厳しい規制により,輸入品との競合がほとんどなく,国内生産の持続が見込めます。富山の強みはそこです。

石川はブルドーザーやパワーショベルなどの建機と電子部品が強いところ。新潟は米菓が日本で突出して1位ですが,他に化学が有力。福井は,すでに自動車部品と電子部品が上位です。

なお,製品よりも企業名を挙げた方がわかりやすく,それは脚注に*3

液晶パネルが石川の上位に出現か

石川の3位には,現在も他に分類されない電子部品が挙がっていますが,工業統計調査では液晶パネルという製品項目が別にあります。そこで,ジャパンディスプレイの白山工場が伸びてくると,それが上位に浮上します。たとえば,シャープの亀山がある三重県は,こんな具合。

工業出荷額(億円:2014年)

  1位 2位 3位
三重 液晶パネル モス型集積回路
(記憶素子)
軽・小型自動車
8256 X X

亀山工場は規模が大きく,大型のパネルも手がけるとはいえ,液晶パネルがいかに高額の出荷額になるかがわかります。2位は東芝の四日市で,わかりやすい製品がSDカード。3位の自動車は,本田技研の鈴鹿とトヨタ車体のいなべです。それら金額は,政府統計としては律儀にXです。

調達が域外からでも,給与所得は地域の消費に

日経などの報道によれば,白山工場の当初の雇用は約250人。典型的な装置産業で,出荷額に比べれば,雇用は少ないのですが,その分労働生産性は高く,平均給与は726万円*4。従業員に発生する新たな給与所得は,単純な積なら18億円台。もちろん,職種により給与は異なるため,これは一つの目安です。また,約2倍までの拡張の用地が確保されていて,需要次第で従業員数もこの倍程度まで膨らむ可能性があります。

半導体工場の設備や原材料の調達は域外からが多く,そこでの地域への波及効果は限定的。それよりも,従業員への給与所得が地域の消費を拡大する効果の方が大です。

北陸の交通事情では,幸いなことに大都市圏への流出はわずかで,その消費の大部分がこの地域にとどまります。車で1時間の範囲では,最大の都市が金沢だからです。金沢が同じ人口規模の地方都市に比べても,商圏人口が大きく,小売店や飲食店が維持される理由はそこです。

税収増が見込める白山市

地域にとってもう一つの期待は,白山市の税収です。実際,シャープの亀山工場が高稼働で,業績が好調だった平成17年度から22年度までの亀山市は,地方交付税の不交付団体になっています。それほどに,液晶パネルは高付加価値で,高稼働率を保てれば,収益に大きな貢献をする製品です。

ただし,亀山はその後の生産調整があって,立地の補助金の取り扱いなどをめぐり,困難な交渉がありました。稼働してこそ雇用と税収が伸びる工場で,稼働状況に応じた行政の対応については,亀山の事例の研究が望まれます。

この点で安心できるのは,白山市には,人口10万人台とは思えないほど,高収益の工場や上場企業の本社が複数存在すること。同じ電子部品・製品では金沢村田製作所やEIZOの本社・工場,他に上場企業で,工作機械の高松機械,石川県の上場企業で時価総額トップであるクスリのアオキ本社。さらに,他にないビジネスモデルでTOKYO PRO Market上場を果たした歯愛メディカルの本社があります。異なる分野の企業が業績をあげていることは,今後とも,市の財政のリスク分散に寄与しそうです。

ただし,自治体合併はますます困難に

一方で,企業立地とその税収では,白山市がますます伸びる構図。白山市は,通勤・通学・買物で普段に行き来する,金沢市までほぼ一体の都市圏で,自身が合併による発足ですが,多様な組みあわせの合併案がくすぶっては消えた地域です。最近でも,中枢都市を金沢市として,白山市,野々市市,内灘町,津幡町,かほく市を加えた,人口723,223人の石川中央都市圏連携協約が,2016年3月28日に締結されています。これは商圏の実態と合っています。

これらは金沢駅から車で約30分の範囲で,そこに6つの自治体が併存します。県庁所在都市ではもうあまりない,細切れの構成。経済的には一体なのに,これら自治体が大合併できない要因の一つは,周辺自治体の方に有力な事業所とくに工場が多く,その財政が比較的堅調だからでしょう。

石川県では顕著な例が,回りを囲まれても,人口6千人台で町を維持する川北町。同じくジャパンディスプレイの石川工場が,東芝時代からあるためです。人口に比べて,付加価値が高く税収に貢献する大工場があると,財政は潤沢で,合併しない道が選ばれます。

今回のジャパンディスプレイ白山工場の本格稼働で,白山市の税収は大きく伸びる可能性が高まり,金沢市などと合併する誘因はさらに減少しました。新潟市や富山市の人口が大きく伸びた「平成の大合併」でも,金沢市はどことも合併せず,昭和37年の森本町の編入が最後。白山市の大型工場の稼働の影で,金沢の合併がますます遠のくことにもなりそうです。

*1:日本経済新聞,「アップル決算,日本株への影響は」,10月26日

*2:2事業所でも数字を伏せる理由は,自社と地域全体の情報がわかることで,引き算で競合他社の状況がわかってしまうからです。ただし,3事業所でも,うち2つが同じ企業グループの場合などは,わかってしまうのですけどね‥

*3:新潟は,米菓が亀田製菓,岩塚製菓,越後製菓などと日本で突出した集積。有機化学は信越化学,デンカ,クラレなど。紙は北越紀州製紙。そのほか,製菓関連でブルボン,二輪車の計器で世界首位の日本精機が特筆もの。
 富山は,製薬会社が多数で,ジェネリックでトップの日医工,アステラスの生産子会社アステラスファーマテック,原料や製造受託でダイト,一般向けならムヒの池田模範堂などと書き切れません。アルミ製品はYKK AP,三協立山。このほか,製品が複数に分類されるため統計では上位に現れませんが,ロボット関連の不二越の規模は有数です。
 石川は,建機のコマツ発祥の地でその基幹工場が粟津,金沢港にも新工場。電子部品では金沢村田製作所,PFUなど。関連してハイエンドのモニタでEIZO,周辺機器でファブレスですが,アイ・オー・データ機器。ほかに,間仕切りで,小松ウオールとコマニーが国内シェアを二分。特筆できるものに,ボトリングシステムでトップの澁谷工業,炭素繊維で東レ系の小松精練,機雷の石川製作所があります。
 福井は,トルクコンバータのアイシンAW工業,コンデンサは福井村田製作所,アルミはUACJ(旧古河スカイ)です。ほかに,多角化のため品目で上位に上がらないのが,セメントの三谷セキサンとそのグループ。自動車のシート素材に展開したセーレンなども特徴的です。

*4:有価証券報告書,平成28年3月期

金沢のお店でGoogleインドアビューが増加中:料亭,茶屋街,河畔のジャズバーなど

食事・カフェ

金沢のお店でも,Googleインドアビューが増えています。このブログも,店のしつらえを調べる検索があるので,印象的なところを並べてみます。

ミシュラン2つ星の料亭

金沢の老舗料亭・銭屋のインドアビュー。

現在インドアビューが見られるお店では,金沢でもっとも高質で,ミシュラン2つ星。入口よりにカウンター席もあるので,少人数でも可がありがたいところ。

ひがし茶屋街の出店といえる十月亭じゅうがつやにも,カウンターがあって,昼はお弁当からあります。また,こちら出身で十月亭を経て独立された小松さんも,2つ星です。

老舗の居酒屋

居酒屋から一軒なら,歴史の古いあまつぼさん。

地場のデパート・大和本店が入る香林坊アトリオが,市街地再開発で建設されるとき,なくなった路地に,すでに店がありました。その路地は,現在のグッチ金沢店のあたりから赤煉瓦の四高記念文化交流館へ抜けるもの。大和の定休日でも,昼間は公道のように通り抜けできるのは,昔の路地の名残りです。

あまつぼはそこの地権者だったはずで,完成した香林坊大和のレストランフロアを経て,結局この地に移転。80年代に繁華街が再開発される前からすでに店があって,今も続いていることは,信用商売としては安心できます。新幹線開業後には,増えた観光客向けに近江町市場のエムザぐち近くに近江町店を開店していて,そちらもインドアビューが見られます。

この柿木畠店は,すぐ近くにある観光客にも知名度の高い居酒屋割烹とも競合しますが,こちらの方が地元客の割合が高い印象。ランチを和食に限らない定食スタイルで提供しているのも,地元客向けに長続きできる売り方です。

お茶屋がカウンターを設けると

にし茶屋街で,内装をリノベートした飲食店として営業されるもので,光駒さんです。

座敷を掘りごたつ式のカウンターにして,対面を芸妓さんが踊ることのできる,小舞台にしたもの。向う側が,割烹や鮨店のような付け場でないのが面白いところで,こういう造りは繁華街・片町の路地にある貴久美さんなどでも。

さらに,奥に坪庭,そこに灯籠を配しています。インドアビューを進めると,奥の蔵が個室として利用されていることもわかります。

茶屋建築を現代の飲食店に改めた造りは,お茶屋に置屋とお座敷の2つの機能のあった金沢ならではの進化。全国的には,置屋の業務は芸妓さんの「人材派遣」だけで,そこに飲食をともなうお座敷の機能がなかったのが普通です*1。お座敷という物件があったのが,ここまで茶屋街が維持された経営上の要因*2

もっとも,旧来の茶屋で出される料理は,料亭などからの仕出しで,茶屋は料亭と共存共栄でした。宴席が減少した現代では,お店自体がカフェやレストラン,バーに転換で飲食業を自前でこなすようになり,「人材派遣」の部分は外注と,興味深い変遷です。

なお,お座敷で太鼓を2つ使うのも金沢独特。使い方は,別の茶屋街・主計町(かずえまち)で撮影された動画でわかります。

上の動画は主計町茶屋街の芸妓さんで,その並び,浅野川沿いの料亭みふくで撮影されています。

犀川沿いのダイニングバー

こちらは繁華街から離れた犀川沿いにあるダイニングバー・玉響(たまゆら)。

近くの坂の上の方から,川岸へ移転してきたもので,道を挟むものの,カウンター越しのガードレールの向こうが犀川。料亭・金茶寮と結婚式場・辻家庭園のすぐ下に当たる閑静な住宅街です。

金沢駅や繁華街の香林坊・片町からは,夜はバスが少なく,タクシーが現実的な場所。それでも,移転前の店で,口コミサイトの評価が集まる前から,全国を食べ歩くさとなお氏のサイトで紹介されたため,大都市からの来訪者も増加。移転後も,内装と料理ともに,こういう凝ったスタイルです。

繁華街・片町で犀川河畔のジャズバー

同じ犀川河畔ですが,こちらは繁華街・片町。香林坊あたりのホテルからも歩ける場所にあるジャズバー・リバーサイド

どういう立地かと思いますが,ふつうに飲食店が入るビルの7階。犀川河畔に建っているため,店の奥のドアを開けた外のバルコニーにある席が,この風景です。もちろん席数は室内の方が多数。室内のカウンターからも,ボトルなどが並ぶものの,窓越しがこの方向になります。

インドアビュー正面が南西で,日没すぐと思われる,遠い水平線の上がわずかに紫に霞みます。「暮れなずむ」とはこういう色と思われ,お店のインドアビューでは,金沢でもっとも印象的なものの一つです。

もちろん,景色だけでなく,金沢でジャズの生演奏のある数少ない店のため,店内全般に賑わっている人気店。なお,外の席は,季節と天候により状況が変わることにご注意を。

川沿いに飲食店街ができるのは,古い街の共通点かな

ところで,最後のジャズバーは,最初の料亭と同じ一方通行路で,徒歩3分の距離でした。ということで,料理を楽しんだ後のお酒も,古い繁華街・片町では徒歩圏で完結します。それも,犀川の片側にできた町なので,片町という名前です。また,ひがし茶屋街や主計町茶屋街は,浅野川近くです。

それで,大きな駅の回りに飲食店が集まる前からあった繁華街は,だいたいが川の近くではと思い直しているところ。金沢より規模はずっと大きいですが,京都の鴨川・高瀬川,大阪の堂島川・道頓堀川,福岡の那珂川・博多川,いずれもお酒を飲んだ後の川の風景が記憶に残ります。

川が人を隔て,川岸にとどまった人が食と酒を求めて店が集まる構図は,日本の古い街に同様かもしれません。

*1:現在の法律では,芸妓さんは派遣労働者ではなく,個人事業主で,茶屋は労働者派遣業者ではありません。タレントとプロダクションやプロスポーツ選手とチームの関係と同じです。

*2:物理的な要因として,太平洋戦争の空襲を受けていないことがあります。

金沢駅兼六園口の金沢都ホテルが建て替えへ:対面は本州の日本海側で地価最高地点

駅ナカ・駅近 ホテル

ブログやSNSなどでいったん閉店の予兆が伝えられてきた,金沢駅前の金沢都ホテルの動きが,本日の日経でようやく報道されました。結論は,ホテルとオフィスの複合ビルの建設で,都ホテル・ブランドの継続が軸とのことです。

公式発表としては,11月4日に,2017年3月末で一時閉店のお知らせが示された段階。

金沢都ホテル営業終了のお知らせ | 金沢都ホテル

しかしまだ,建設されるホテルを含むビルの発表が,グループ持株会社である近鉄グループホールディングスのニュースリリースなどにありません。よくある,日経には話して,反応を見るという状態でしょうか。他紙が追従するのは確実で,近日中にある第2四半期の決算発表と説明会などで,質問に対応できる準備が整ったと見ます。

場所は撮影スポットの鼓門を抜けた角

場所の説明は,一枚のGoogleストリートビューで済みます。

金沢で最も多くの観光客が写真を撮る鼓門。その奥に見える角地のホテルです。鼓門の写真にはよく写り込みますから,建て替え後は当然として,取り壊しや建設の工事中も,景観に配慮が求められるところです。

金沢のシティホテルでは最古参

金沢都ホテルは1963年の開業で,金沢ではじめてのシティホテル*1。何度かの改装を経ているものの,当時の設計のため,シングル12m2などの狭小感が否めなくなってきたのは事実です。建設時の2室を,1室に改装した部屋が一部にあって,駅近ではお得な料金設定でしたが,改装とコスパのアピールで凌ぐには限界がありました。さらに,せっかく地下通路で金沢駅と直結しているのに,その地下1,2階から1階のフロア構成やテナントには,開業時の時代感が残されていました。

金沢都ホテルの俯瞰(ANAクラウンプラザホテル金沢からの撮影)

金沢駅前ですが,築50年超で,写真のように8階(一部7階)建と比較的低いまま。しかし,建設当時は金沢駅前で唯一の高層ビルでした。駅近最高層は,今や,ホテル日航金沢の特例による30階建。

都ホテルの場所は60m高度地区で,特段の変更や許可がなくても,15階はゆとりをもって建てられるはずです。実際,対面のホテル金沢は2008年開業で16階建。上の写真は,斜めに見下ろせるANAクラウンプラザホテル金沢から撮っています。

現在は2棟のビルで,建て替えで効率化

よく見ると,手前の道路面と,奥に向かう道路面の角で,ビルが斜めに切れています。両サイドで,窓も造りが違い,しかもフロアがずれています。これは,奥に向かう道路に面した当初の本館に,後で手前の道路面に新館を増築して,つないだ結果。本来は一体で建てられるビルが,2つの棟の構造で非効率となっている面もあり,すべて取り壊しての建て替えです。

近鉄の非鉄道部門は,これまで,あべのハルカスとサミット対応を含む伊勢志摩関連が最重要案件。とくに自社の路線と相乗効果のないこの地の意思決定は,長らく先送りされてきたと見ます。それが,北陸新幹線の京都・大阪までの建設計画で,年内にもルートの方向性が示されることと,以下の競合プロジェクトの進展という環境の変化で,ここでの意思決定と公表と思われます。

近鉄にとっては気になるJR西日本が,北陸新幹線の増収・増益効果で増配まで実現したことも,刺激の一つになったでしょう。

2020年,西口にオリックス,東口に近鉄がシティホテルを開業

見出しだけだと「どこやそれ」という話ですが,金沢駅でした。

2020年は東京オリンピックの開催年で,外国人観光客が急増します。さらに金沢では,東京からのアクセスが新幹線の開業で飛躍的に改善したことから,外国人宿泊客が2015年の開業後の平均で約6割増,2年目でもさらに約3割増ペースを続けています。それは前記事に。

その対応を念頭に,駅金沢港口(西口)に,外資系ホテルの誘致が進んでいます。

そちらは,オリックスが事業主体。そこで,2020年には,近鉄とオリックスが金沢駅の東と西で別のシティホテルを開業することになりました。金沢都ホテルは,開業が1963年と古く,敷地もほとんどを所有。オリックスも金沢市の市有地を取得します。

オリックスの本社機能は,すでに大阪から東京にシフトしていますが,設立母体が旧三和銀行と旧ニチメンという大阪の企業のため,発祥は大阪。くしくも,金沢駅近の新しいシティホテル2棟は,大阪発祥の2企業で進められることになります。もっとも,これは自然なことで,駅も新幹線もショッピングモールの金沢百番街も,JR西日本。当然ではあるのですが,東京方面からは,着いてはじめてわかる場合も多いようです。

対峙する金沢駅徒歩圏のシティホテルでは,筆頭といえるホテル日航金沢が,所有ではなく運営委託のみの関与。その対面のANAクラウンプラザホテル金沢は,2015年に星野リゾート・リート投資法人によって買収されています。買収時の報道では,当面はANAクラウンプラザ・ブランドのままですが,将来の改装に含みを持たせています。

駅徒歩圏でシティホテルが2棟も新築と建て替えとなると,広い部屋が増えるのは確実で,それを受けた動向が気になります。

対面の地価は金沢の最高地点で‥

この場所は,観光客が鼓門の写真を撮る場所だけでなく,ビジネスを考えるにも特異なポイントです。それは,金沢の公示地価最高地点の対面であることで,2016年7月1日現在で82万円/m2。その調査地点は,地場資本のままに営業を続けるビジネスホテル・ガーデンホテル金沢です。

上のストリートビューでは,左がガーデンホテル金沢,正面が金沢駅兼六園口(東口)の鼓門,右が建て替えられる金沢都ホテルという位置関係です。

2012年から上昇を続け,2013年に新潟を抜く

この地点の地価の推移は,北陸新幹線の効果を端的に表すもので,以下の通り。

金沢市と新潟市の公示地価の推移が示す北陸新幹線の効果

2013年4月からの異次元の金融緩和で,都市部の地価は全般に回復傾向のため,新幹線の影響を取り出すには,比較対象が必要。気候を含めた地理的条件が類似で,地価の水準が同様な都市を比較しています。

金沢駅兼六園口(東口)正面角地で調査されている地価は,2013年の1月に新潟市の新潟駅万代口を抜いて,本州の日本海側で最高地点となりました。上昇は2012年7月調査から続いていて,新幹線の開業後も反動減なく順調に伸びています。

建て替えの判断は,この地価の上昇基調と整合的です。地価は,その土地からの将来にわたる期待収益を現在価値に割り引いた値が妥当で,その土地の生産性の先行指標です。そこで,不整合な期待や予期せぬショックがない限り,それを反映した設備投資が引き出されます。逆に,値下がり基調で,新たな設備投資を引き出すのは,困難です。

アクセス難の解消で都市本来の価値を探しに

この指標で,どちらの物件に投資したいかと問われれば,答えは明らかでしょう。最近よく見る金沢と新潟の比較ですが,信頼できる経済指標で,年単位の先行性があるのは地価。

この傾向の差には,第一に大都市圏からの新幹線アクセスの条件が,ようやくほぼ対等になったことが寄与。金沢は,これまでのアクセス難の制約が外れ,都市本来の価値を探りにいくところ。初物需要が一巡した開業一年後もなお,地価が上昇を続けるのは,ファンダメンタル・バリューがより上であることを期待させます。

第二に,このプロジェクトでもわかるように,金沢の位置は,関西から観光客だけでなく,投資を呼び込めることが効いています。そして,この第二の要因は,新幹線の今後の関西への延伸で,さらに拡大します。

近鉄のコミットメントは大きい

これまでは不透明感もあった,金沢都ホテルの将来について,この時期に近鉄のコミットメントが得られたことは大きな展開です。物件の取得は1960年代で,簿価は時価に比べて著しく低く,売却ならかなりの益出しができたもの。投資としては売却でも大成功で,そういう出口戦略もありえたのでしょうが,さらなる設備投資の方が選ばれました。

設計の古さは,反面で,再開発による価値向上の余地が大きいということ。現在の建築や都市計画上の規制でも,約2倍規模のビルに建て替えられるので,この近鉄の決断により滞在者と通行量の大幅な増加が確実になりました。

さらに,1階の路面部分と金沢駅と地下通路で直結する地下1,2階は,類似規模の都市の駅前と比べて十分に活用されておらず,テナントの大幅な拡充も見込めます。

鼓門側の外周部はカフェやレストランに適した眺め

金沢都ホテルの角地だけの価値は,鼓門側の低層階から,観光客がずっと写真を撮っている鼓門が,窓越しの対面に眺められること。道路の状況から,その眺望は,他の駅近ホテルでは実現できない独占的なもので,カフェやレストランに最適です*2。今その場所に店舗がないのは,鼓門が存在しない時点で金沢都ホテルが設計されているからで,せっかくの価値を活かせていません。

実際,金沢駅の新幹線改札や兼六園口からほぼ同距離にある,スターバックスの金沢フォーラス1階の店は,前面がバス乗り場だけなのに,日中ほぼフル稼働。同じ歩行距離で,さらに鼓門の景観を活かせる店が都ホテル外周部にできれば,それを凌ぐ稼働は確実です。それが整うまでは,金沢駅近の地価の上昇基調が続くのでしょう。

なお,この種のプロジェクトで,「本州の」日本海側といつも書く必要があるのは,福岡市と北九州市も日本海に面した都市だからです。もちろん,福岡・北九州は,都市規模と産業の集積を反映して,地価の水準もかなり上。福岡や北九州を日本海側の都市と捉えているかは人によって分かれそうですが,いつもお約束の限定付きです。

*1:地場のデパート・大和の子会社である金沢ニューグランドホテルが最も古いと思われがちですが,そちらはやや遅れて1972年の開業です。宿泊では旅館の割合がまだ高かった時代に,大都市からのホテル進出への対抗勢力として,地場の資本でホテルを完成させたものです。

*2:対面で,公示地価では最高となるガーデンホテル金沢側は,惜しいことに,斜めに一方通行の路地が入っている敷地です。かりに設計をやり直しても,鼓門を眺める方向にカフェなどを配置するスペースには,限りがあります。

外国人観光客は開業2年目も増加,Googleトレンドでも金沢よりKanazawaの伸びが大

観光スポット

金沢で外国人観光客が増えています。東京を朝出発するかがやき号で金沢に向かうと,スーツケースを伴った欧米系の観光客をいつも見るようになりました。その外国人客も,開業からしばらくは,長野で降りる方が多かったものが,最近は金沢まで乗り通す方が多く感じます。

そして,欧米にないタイプの観光スポット,兼六園,ひがし茶屋街,忍者寺,野村家庭園では,平日でもそうした観光客が何組も訪れています。予約が必要な鮨店でも何回か目にしましたが,それには予習が必要。ツアー任せではなく,調べて訪れる外国人の増加は,新幹線開業前なら珍しかったことです。

そこで,統計から見た現状と,足下の動向の把握方法を。

外国人宿泊客は開業から概ね全国平均を上回る伸び

外国人の動向がわかる旅行関連の統計で速報性と信頼性が高いのは,観光庁の宿泊旅行統計調査です。チェックインや予約時に宿泊者が記した住所をもとに,宿泊施設が回答するため,宿泊者の国籍,日本の居住者ではその都道府県まで集計されています*1

その調査では,外国人宿泊者数ののべ数が月次で公表されていて,北陸新幹線沿線の主な都府県では以下の通り。

f:id:KQX:20161024141015p:plain

出典:観光庁,「宿泊旅行統計調査」,平成28年7月分別表2ー2

外国人観光客は,金融緩和による円安で全国的に増えているので,地域ごとの要因を切り出すには,全国平均などとの比較が必要。そこで,全国平均と東京都,さらに,外国人が最も好む観光地・京都府を比較対象にしています。

石川県の外国人宿泊客は,開業後の2015年7月から現在まで,全国平均や東京・京都の伸び率を上回って増加しています。新幹線以外に大きな動きのない北陸では,それ以外の増加要因は考えにくいところ。航空機の羽田・小松線は,新幹線開業で小型機化や減便をしていて,開業前も外国人をあまり見かけなかったものです*2

石川・長野は2年目も反動減なく増加

注目点は,反動減が懸念された開業2年目も,外国人については,石川・長野で前年比プラスを続けていること。観光向けの情報も英語がわずかな現状で,彼らが信頼するのは,トリップアドバイザーなどの英語での口コミでしょう。2年目も伸びている理由は,母国にない観光スポットに英語のレビューが蓄積されるのに,相当のタイムラグがあるからと推測されます。日本人は熱しやすく冷めやすいですが,外国人は伝わるのに時間がかかるのが特徴。後に書くデータでも,その傾向がわかります。

石川は2年目も20%台の増加

開業2年目も,石川県の伸びは,前年同月比20%超。全国平均や東京では,伸び率が数%台までスローダウンしているのに対してです。今どき,年率20%台で客数が増えるビジネスなどほとんどなく,動向の把握は大切です。

一方,富山は開業2年目で4,6,7月が反動減。もっとも,開業直後に90%台の急増を2か月分も経験していたので,数%の反動減でも,開業前に比べればまだ大きく増えた外国人客数の水準です。直近も増加している石川との乖離が続くなら,日本を訪れる外国人の嗜好の反映かもしれず,要注視でしょう。

ところで,この宿泊旅行統計調査では,7月分の外国人宿泊者数がわかるのが9月30日と,最大2か月のタイムラグがあります。さらに,集計は都道府県単位で,現場の経営判断にはあまり役立ちません。

Googleトレンドで旅行関連の検索動向がわかる

そこで,ネット検索動向を直近まで無料で分析できるGoogleトレンドです。検索ワードごとの検索回数を,相対的な指数にしたもの。設定期間中,比較対象で検索回数が最大の値を100とする指数のため,対象と期間を変えると数値も変わるのに注意が必要です*3

それではと,金沢のほか,新幹線がはるか前に通じていた都市を,Googleトレンドでグラフ化してみました。開業日2015年3月14日までの経緯が十分わかるように,2013年はじめから直近まで。カテゴリーは「旅行」に絞っています*4

グラフをマウスか指でなぞると,その時点の数値が現れ,週単位(スマホ版では月単位)の変動を予測する材料になります。また,Google Trendsのロゴをクリックすると,期間や比較対象の設定ができるページに飛べます。

注意点として,新潟と長野は,都市名と県名が同じで,都市ではなく県域全体を意図した検索も含まれること*5。都市名=県名の地域では,検索数のカウントに過大評価の懸念があります。とはいえ,「新潟」と「新潟市」の数値を比べると,旅行目的で「市」まで付けての検索は少ないために,市を付けない都市名で比較しています。

金沢は夏以外では長野を超え,新潟を追う

開業前の検索数は,仙台,新潟,そして大きなギャップがあって,長野,金沢の順でした。それが,2015年3月の開業前後から,金沢が伸び,開業前のほぼ2倍の検索量に達しています。夏のピークを除けば,長野を上回る情勢。新潟とは,時期によっては互角の水準です。

ただし,季節変動は各都市で微妙に違います。学校などの休みで旅行全般が増えるのに加え,夏のピークには高原などでの避暑や登山,冬のピークにはスキーや冬山があると想像されます。長野は,後で書く英語検索のスキー客とともに,日本語検索では夏の避暑のピークが大きい都市。一方で金沢は,季節変動の少ない街中観光に特徴があります。

外国人の動向はGoogleトレンドでKanazawaと入力

さて,このツールで外国人観光客の動向を知るには,英語でKanazawaと入力することです。ふだん漢字を使わない外国人は,日本旅行でも英語のページを読んでいて,かな漢字変換や原語の漢字のコピペまで考えず,Kanazawaで検索してきます。例外は,漢字が入力できる中国系の方。それでこの傾向は,漢字文化圏ではない外国人の動向を知るのに使えます。

英語の傾向は,日本語とまったく違うのが驚き。なお,ここでもカテゴリーを「旅行」に限定しています。

開業前から英語検索は長野,仙台・金沢,新潟の順

北陸新幹線開業前は,英語での検索がもっとも多いのは長野,続いて仙台と金沢が同程度,やや開いて新潟の順でした。

とくに長野は,英語の方が季節変動が大きく,巨大な盛り上がりが冬にあります。やはり,長野オリンピックのレガシーは偉大で,多くはスキー目的でしょう。たしかに,北陸新幹線でも,冬は長野で荷物の大きな外国人がかなり乗降しています。

一方で仙台は,日本語での検索はこれら四都市で頭一つ抜けて多いのに,英語での検索は,新幹線開業前でも金沢と同程度。日本人に比べ外国人の検索が少ない傾向は,先の観光庁の宿泊旅行統計調査とも符合します。

外国人宿泊者数(のべ数)は,新幹線開業前の2014年で宮城117,150人,石川348,290人。それが開業年の2015年で宮城190,610人,石川517,430人。開業前後とも,外国人の宿泊客は宮城より石川が多いという,意外な数字です。

なお,新潟の英語検索がさらに少ないのは,Niigataという英語圏にはない綴りで損をしている部分もありそうです*6

開業後は金沢が約3倍増で,冬以外は長野を超える

新幹線開業後,金沢の英語検索は急速に伸び,開業前の3倍程度へ成長。開業2年目も明確に増えています。

以前の英語検索は,通年で長野がトップ,仙台をはさんで金沢の順だったものが,開業後は,冬は長野,冬以外は金沢がもっとも検索されています。現在は,次に仙台,さらに離れて新潟の順。また,長野・仙台は検索が長く増加している一方,新潟は長期的に横ばいなのも特徴です。

京都との回遊性や世界遺産への最短アクセスも

開業後は,英語検索での長野・金沢と仙台・新潟の差が広がっています。考えられる差は,外国人を最も引きつける京都方面との回遊性。実際,東京・京都間のルートの片道で北陸観光という経路が広まっています。

この際,よく使われるのが,外国人の日本旅行者などに限定して,海外だけで発売されるJR全線ほぼ乗り放題のパス,Japan Rail Pass*7。7日間で普通車用29110円,グリーン車用38880円と,日本人からすると羨望の割引。これを購入する旅行者にとっては,各地の観光スポットを無駄なく長く回れるような,周回ルートを選ぶ誘因になっています。

さらに,金沢周辺で外国人比率がとりわけ高くなるのが,世界遺産の合掌造り集落,五箇山・白川郷へのアクセス。今や,金沢ー五箇山・白川郷間の高速バスは,外国人客が大勢。意外にも,金沢が時間的に最短の新幹線駅(五箇山まで60分,白川郷まで最速75分)になったからです。外国人の地方観光では,日本固有のもので,大都市周辺にはない観光資源が求められるようです。

直前までの検索がわかるのが売り

Googleトレンドの実用性は,直前までの検索動向が無料でわかること。たとえば,直前の週を1年前,2年前の対応週と比較すると,以下のような推移がわかります。需要予測の一材料として,出退店や価格設定の判断にも使えそうです。

旅行カテゴリーでのウェブ検索の
Googleトレンドによる推移*8

検索ワード 2014年
10/19~25
2015年
10/18~24
2016年
10/16~22
仙台 54 62 70
新潟 48 57 55
金沢 34 55 59
長野 39 44 43
最高値は2015年8/9~15の新潟で,それを100とした指数*9
Sendai 19 17 23
Niigata 10 11 10
Kanazawa 16 48 65
Nagano 44 46 51
最高値は2015年12/27~2016年1/2のNaganoで,それを100とした指数

なお,上の数値は週単位の詳細がわかるPC版をもとにしていて,スマホ表示では月単位に集計された少し違う値になっています。詳細を分析するなら,PCで改めて確認することをおすすめします。

*1:一方,観光地で行われるアンケートは,深く質問ができますが,調査日や場所が限定されるため,抽出率や回答率が低く,宿泊者ベースのデータよりも偏りや標本誤差が懸念されます。

*2:外国人旅行者の日本国内の移動に,航空機よりも新幹線が選ばれる理由の一つは,JR全線に通用するJapan Rail Passが,7日間29110円からという大幅な割引で売られているからで,後述します。

*3:比較対象や期間を変えると,(基準の100が設定される)最大値の期間とワードが変わります。それで,各検索ワードの指数の値も変わります。数値に意味があるのは,比較対象と期間を固定して,大小比較や時系列的な増減を把握するところまでです。

*4:カテゴリーを旅行に絞る理由は,そうしないと,地元の住所や企業名の検索,同一名称の人名の検索などが大量に含まれてしまうからです。

*5:たとえば,新潟の検索数には,新潟市を意図したもののほか,新潟県域の意味で「新潟,温泉」とか「新潟,スキー」という検索も含まれます。そこから新潟市ではなく湯沢町のスキー場のページに進んだ場合も含まれます。

*6:もっとも,NigataやNeegataなどと,発音につられたミスタイプを想定してトレンドを見ても,数は極端に少なく,綴りの難しさが主要因ではなさそうです。

*7:利用の条件は,外国籍で日本に短期滞在の資格で入国する者などと厳格で,リンク先の公式サイトに詳細があります。入国の資格が,留学や高度専門職などの仕事では,購入できません。購入は国外の旅行会社で済ませる必要があり,日本では引き換えのみです。また,東海道・山陽新幹線ののぞみなどには乗れませんが,北陸新幹線では全列車有効。さらに,金沢での知られざるメリットに,金沢駅-広坂(21美最寄り)-兼六園下-橋場町(ひがし茶屋街最寄り)を経由するJRバスにも,それだけで乗れることがあります。本数が少ないJRバスでよければ,追加料金なく市内観光ができます。

*8:記事中のグラフの数値によるもの。具体的には,2013年1月1日から2016年10月22日までの期間設定で,日本語と英語の別に4都市の比較を,2016年10月23日にPC版のグラフから読んでいます。期間と比較対象の設定次第で,値が変わることに注意。また,Google側で数値が遡及改定されることもあります。

*9:2015年8月21日に,NGT48の初イベントが新潟市で開催されています。