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北陸新幹線で行く,はじめての金沢

お庭,お菓子,お魚,お酒が揃う城下町をまわるため,金沢出身・東京在住者が往復しながらヒントを書いていきます。

金沢の宿泊,空いているのは冬と7月前半,10月:宿泊客数で見る混雑日・閑散日ランキング

混雑対策 ホテル 食事・カフェ

金沢ではホテル建設のニュースが続いていて,現在のホテル不足も,供給の増加で解消されそうです。建設されるのは,標準34m2と広い外資系ブランドから,シングル主体の宿泊特化型までで,クオリティも価格も,今より厚みが増します*1

それまでの間,いつが空いていて安く泊まれるのか。宿泊客数のデータも,新幹線開業後一年以上蓄積されていて,整理してみます。結論を先に。

まとめ

  1. 年末年始と連休を除く12月,1月が底
  2. 10月は気候がよいのに,街中の紅葉とかに漁解禁待ちで,穴場
  3. 学生が動きにくい時期(7月前半と1月冬休み明け)が狙い目
  4. 3連休の数日前か後の火水木は,注目されず空いている
  5. 夏休み,クリスマスなど,大きな計画を考える直前は空いている

1日単位の宿泊客数がわかる観光予報プラットフォーム

2015年12月から,市区町村ごとの宿泊客のデータを1日単位でとれるサイト・観光予報プラットフォームを,経済産業省が公開しています*2。それで,年間で客が多い日と,少ない日を調べてみました。日付ごとのデータは,細かいので最後に。

月単位では12月,1月が底(年末年始と連休を除く)

はじめに,傾向がわかる月次集計から。

金沢市の月別宿泊客数のグラフ

開業1年目は,(開業日が途中にあった3月を除き)1か月平均約86000人,1日平均2700人ほどの客数増でした。開業2年目も,開業前との比較では毎月平均で約62000人,1日平均2000人の伸び。反動減も開業後の伸びに比べれば小さく,開業前の宿泊客数を下回ったのは,2016年10月のみでした。これなら,200室前後のホテルが6つほど増えるのも,納得できます。

年末年始は特別な宿泊客が

月次の変動をみると,12月から1月に底があって,開業前と同傾向。ただし,後の日次データでわかるように,正月は温泉やホテルで,という需要は以前から旺盛で,12月30日や1月1日は年間でも混雑日の上位です。また,連休もそこだけ客が増えます。年末年始の金沢旅行の注意点は後にまとめます。

新幹線開業後の変化は,2月の回復が大きくなったこと。航空機や在来線よりも,風雪による運休が格段に少ないことが,効いていそうです。実際,開業からもう少しで2年ですが,運休が半日まで続いたことはなく,悪天候でも何本か後で回復する程度。羽田・小松便では,終日全便欠航があるのに比べれば,かなりの改善です。

意外な穴場10月は,紅葉と,かに漁待ちか

冬以外の穴場は,意外にも10月。新幹線開業後の反動減も,大きく出た月です。ただし,10月下旬の日曜(2017年は10月29日)にある金沢マラソン前日の土曜は満室傾向。また,秋の学会シーズンで,大規模学会などがあれば,金・土曜が混みます。

10月が落ち込む理由として考えられるのは,秋とはいえ,兼六園など街中の紅葉と県内のかに漁が11月からなこと。たとえば,下の写真は,兼六園に隣接する奥方御殿で重要文化財の成巽閣せいそんかく

金沢市にある加賀藩主・前田家の奥方御殿・成巽閣の紅葉

撮影は11月26日でした。江戸時代からの建物と庭に落ち葉が散る頃で,紅葉も終盤。こんな感じで,金沢の街中の紅葉は,兼六園も含めて11月の後半です。

10月の紅葉は,北陸だと標高の高い山や渓谷が見頃。近隣でスケールが大きいのは,富山県の立山黒部アルペンルート黒部峡谷宇奈月温泉です。石川県の最高峰は白山ですが,世界遺産の合掌造り集落・白川郷から白山市へ抜けられる白山白川郷ホワイトロードは,立山のような公共交通機関がなく,車やツアーバスだのみ*3

金沢周辺で他の紅葉の名所は,山中温泉鶴仙渓かくせんけいや,加賀温泉を循環するキャンバスでも行ける粟津温泉近くの那谷寺なたでらなど。いずれも標高が低く,見頃は11月の中旬です。

10月が手控えられるもう一つの理由は,後で書くように,石川県のかに漁が11月初旬に解禁で,あと少し待てば地物のかに,ということもありそうです。

7月前半も意外な狙い目

おもしろい発見は,7月が6月よりも落ち込む点。ただし,後の日次データでわかりますが,7月前半までです。理由の一つは,学生の多くが,期末試験やその準備などで動けないからでしょう。

同じ理由で,学生が旅行しにくい期間は,冬休み明けから1月末あたり。1月の宿泊客が年間で最少となることに影響しています。試験や課題が終わった学生から動き出せるため,春休みを待たず,2月はじめから宿泊客は増え出します。

閑散の冬も,食では,かに,ぶりが揃う時期

冬が閑散な要因で大きいのは,やはり天候です。しかし,海鮮の種類や質では冬がベスト。とくに,次の3つの日付は決め手です。

  1. 魚種の増える底曳き網漁が9月から翌年6月まで(7,8月は禁漁)
  2. ずわいがに漁が11月上旬から翌年3月20日ごろまで
  3. そのうち,雌の香箱がには12月末まで

そこで,11月上旬のかに漁解禁日から12月末が,魚の量も質も豊富。新年1月からは,雌の香箱がにがなくなりますが,雄のかには3月のどこかまで漁が続き,ぶりや白子のおいしいたらも3月まではおいしい期間。閑散期である12月,1月の旅行は,食では満足できる時期です。正確な漁期は,シーズンになると石川県漁協のページで確認できます。

ずわいがにでも,地物の強みは,ボイルしたものではなく,生のまま仕入れられること。それで,かにの刺身や焼きがにができるところも多く,かにみそも甲羅で合わせるなど,うまく使われます。たとえば,ホテル日航金沢の弁慶で。

石川県水揚げのずわいがにの会席料理の一品・焼きがに(ホテル日航金沢・弁慶)

このときは,能登の蛸島港水揚げのもの。周辺では,金沢港や橋立港などの水揚げも多く,港の近さが鮮度を支えます。

庭には織部灯籠に雪吊りを施した木々。雪が積もる前ですが,冬の食を引き立てます。このホテルは,金沢駅から地下道経由で濡れずに着ける場所で,新幹線開業で2月の旅行が増えたのも納得できます。なお,奥の灯りは鮨カウンターで,たとえ大雪で外を歩きたくなくても,仕事をされた鮨が食べられます。そちらは過去記事を。

各月ごとにどの魚があるかは,魚の写真をクリックすると,月別の漁獲量のグラフが出てくる,以下のページを。人気ののどぐろは,正式名あかむつで載っています。

魚種ごとの月別水揚げ量|石川県水産総合センター

今何が獲れているか,昨年どれほど獲れていたかは,こちらで1日単位でわかります*4

JF石川かなざわ総合市場|石川県漁業協同組合

春はほたるいか,夏は岩がきが特徴的で,あわびと鮎も

冬以外の時期も,魚はあります。春はほたるいかや,さより。夏はあわびや鮎,そして,天然の能登の岩がきが特徴的。

たとえば,細かな仕事の鮎の姿鮨に,松茸の天ぷらを添えた一品を,つば甚で。

鮎の姿寿司(金沢市の料亭・つば甚)

骨を別仕立てとした,遊び心のある盛り付けが,犀川を見下ろす松尾芭蕉ゆかりの小春庵に映えます。

もう一つ,能登の夏に意外な魚介類,かき。「牡蠣は"r"のつく月に」ということわざのように,旬はふつう冬。しかし,能登の岩がきは夏が旬。写真は,金沢市街を見通せる眺めの卯辰かなざわで。

能登の岩牡蠣(金沢市の会席料理店・卯辰かなざわ)

レモンと比べると,大きさがふつうのかき(真牡蠣)の3倍ほどあることがわかります。夏の岩がきは,金沢の居酒屋には広く出ていて,近江町市場でもその場で食べられる店があります。なお,生がき全般に,消化に個人差があるので,食べ慣れている方向けです。

甘えび,のどぐろは,ほぼ通年で安心を

このほか,金沢のお造りや鮨で定番といえる地物の甘えびは,漁法を使い分けて,ほぼ通年。白身なのに繊細な脂身がおいしい,のどぐろも,冬の方が脂がのっておいしいですが,水揚げのピークは9,10月で,ものはほぼ通年。かにについては,ずわいがにの禁漁期間でも,小ぶりな毛がにと紅ずわいがにが,長い期間あります。

宿泊客が多い日トップ20

それでは,2016年の混雑日上位20日分です。

金沢市の宿泊客数多い日ランキング
順位日付曜日宿泊客数備考
1 2月11日 木・祝 17,559  
2 4月30日 16,914 3連休土曜
3 5月3日 火・祝 16,739 3連休初日
4 4月2日 16,065  
5 4月29日 金・祝 15,908 3連休初日
6 5月1日 15,306 3連休末日
7 2月12日 15,114 祝日の翌日
8 6月25日 15,000 学会など
9 8月11日 木・祝 14,964  
10 3月27日 14,900  
11 12月30日 14,895 年末年始
12 6月18日 14,860  
13 1月1日 金・祝 14,852 年末年始
14 7月17日 14,826 3連休中日
15 3月28日 14,731  
16 9月22日 木・祝 14,424  
17 9月3日 14,417 学会など
18 5月2日 14,387 3連休中日
19 1月10日 14,338 3連休中日
20 7月16日 14,290 3連休初日

上位は3連休が並びます。ゴールデンウィークは,ほとんどの日が上位。曜日の並びがよいところは,1日14000人超の宿泊で,偶然のキャンセル以外,ほとんど満室の状況でしょう。なお,このデータ,各種予約チャネルなどのビッグデータからの推定とされていて,実数とは一致しません。

意外と混雑した2月の飛び石連休と6月の週末

2016年の最混雑日は,意外にも,2月の飛び石連休といえる祝日でした。金曜日を休めば,木曜から日曜まで4日間旅行できる並び。試験などから解放された学生が多くなる時期でもあり,前後の連休からも離れていて,思わぬ混雑日となったようです。もっとも,2017年は2月11日(祝)が土曜で,休みが増えず,それほど混雑はしないでしょう。

一方,6月にも,連休でないのに混雑する週末がありました。散発的に各種イベントや学会が入ったためでしょうか。なお,6月1週目の週末にある百万石祭りは,例年特別に混雑しますが,団体予約が多いのか,このデータでは20位までに入りませんでした。2月,6月とも,何もない平日なら,他の月よりは空いています。

年末年始は観光施設,近江町市場,飲食店の休みに注意

年末年始も,12月30日と1月1日は年間で上位の混雑日。旅館やホテルに泊まって,正月料理を考える人も多いようです。

その際,公営の観光施設では,個別の休館に注意。たとえば,21世紀美術館は,年末早めに休館し,2017年は1月2日から開館でした。例外的に,兼六園・金沢城公園は年末年始休みなく開園で,兼六園は特別に無料開園期間です。

また,魚の卸売市場も,年末年始は休場。連動して,小売の近江町市場も,年越しの買い出しで年間で最混雑となる12月31日まで営業するかわり,年始は長めに休業が大勢です*5。そこで,魚介の仕入れが重要な日本料理店や鮨店は,旅館営業のある店などを除き,大晦日前後から年始まで長く休むのがふつうです。

その時期に食事をしたいなら,無休のホテルのレストランや鮨店。または,駅ビル金沢百番街と駅前金沢フォーラスのレストランフロアが,初売り1月1日から営業。正月休みに鮨などを食べるなら,その選択肢に絞られます。とくに,鮨は仕入れができないまま,何日か営業で,熟成や昆布締め,づけなどの仕事の差が出る期間です。

正月休みを料理重視の旅館でくつろぐなら,近くで水揚げされたかにを食べるのが,北陸ならではの楽しみ。ただし,地物のずわいがには,漁が止まる一方で,需要があるため,年末年始はやや割高な時期です。旅館では別注料理の扱いも多く,内容は予約時に確認を。到着後の注文では,無理な場合も多いです。

宿泊客が少ない日ボトム20

今度は,2016年でもっとも閑散だった日から20日分です。

金沢市の宿泊客数少ない日ランキング
順位日付曜日宿泊客数備考
1 1月7日 4,032 3連休前
2 12月20日 4,204 3連休前
3 12月21日 4,503 3連休前
4 1月20日 4,516  
5 1月21日 4,661  
6 1月13日 4,758 3連休後
7 12月8日 4,792  
8 1月14日 4,847 3連休後
9 1月6日 4,868  
10 1月8日 5,021 3連休前
11 12月14日 5,049  
12 12月15日 5,116  
13 1月26日 5,313  
14 12月16日 5,461  
15 1月15日 5,536  
16 1月27日 5,641  
17 7月20日 5,666 3連休後
18 7月13日 5,672 3連休前
19 1月12日 5,685 3連休後
20 1月19日 5,811  

旅行を考えにくい日が並びます。とくに,1月7日は,学校も冬休みが終わるところで,家族旅行もなくなる日。年間で一番空いている日は,そこでした。

閑散20日のうち18日は12月と1月,2日は7月

結局,閑散日20日のうち18日は12月と1月で,冬に集中します。ただし,年末年始と連休を除きます。狙うなら,皆がクリスマスや年末年始を考えている時期に,旅行を完結させること。また,冬休みが終わる頃の旅行を企画することです。

3連休から数日空けた前後の火水木が穴場

全体としての特徴は,3連休など客の集まる期間から,数日空けた前後の火水木が,盲点の日となること。同様に,クリスマス前,年末年始の休み前,夏休み前も,関心がそれだけに向いて,盲点となる平日があります。

連休後の火曜日は21世紀美術館の休館に注意

空いている日を狙う際の注意点は,21世紀美術館が原則月曜休館であること。ただし,月曜が祝日のときは,休館は翌日の火曜日に振り替えです。連休明けを狙うときは,休館のチェックを。なお,兼六園と金沢城は,(お茶席や城の一部など追加料金の部分を除き)年中無休です。

以上,1日の宿泊客は最多17559人から最少4032人まで,4倍超の幅。ということは,上の閑散日の稼働率は,20%台になっています。そんな日のネット予約などでは,宿泊料金の大幅割引が期待できます。

例年のイベント:6月第1土曜と10月最終日曜

最後に,例年1万人超を集客するイベントで,市内に交通規制もある日が次の2つ。

今年,2017年のカレンダーでは,宿泊が増えるのが,2017年6月2・3日(金・土)と10月28・29日(土・日)になります。なお,上の混雑日ランキングに,両方とも現れなかったのは,別ルートでの予約や,近隣県からの日帰りが多いからでしょうか。

2017年限りの混雑日:5月27日・28日

今年は,たまたま同日開催のイベントがあり,特別な混雑日が生まれます。

合計3公演,のべ1万人超とJ2の試合がその土日に集中。4か月以上先ですが,ほぼ満室のホテルが多いです。

もっとも,コンサートの方は申込み時にホテルも予約するのがふつうで,当落判明後にキャンセルが大量発生します。この日,宿泊を検討の方は,空室と価格のチェックを繰り返すと,状況が改善しているかもしれません。

*1:計画が公表されたブランドとしては,ハイアットセントリック,三井ガーデンホテルズの三井不動産,チサンインなどをもつソラーレホテルズ,ユニゾイン,ホテルビスタなどと,金沢都ホテルの建て替えです。

*2:各種予約チャネルのビッグデータ(日本の宿泊全体の約6%)からの推定とされていますが,そのデータソースは公開されていません。宿泊客の統計では歴史の長い,観光庁の宿泊旅行統計調査では,抽出された宿泊施設からネットと郵送で調査票に回答を受ける方式。経産省のデータと観光庁のデータは,調査方法がまったく違うため,それぞれの長所が使い分けられていくでしょう。

*3:金沢駅は,白川郷まで高速バスで75~85分(1日片道10本)と,最短時間で着く新幹線駅です。しかし,この高速バスは,ホワイトロードではなく,高速道路経由で,白山を越える山道の紅葉は見られません。

*4:たまにある白紙の日は,悪天候で出漁できず水揚げゼロということです。とはいえ,お造りや鮨ネタも当日限りではなく,数日の熟成でうまみが増すものもあって,悪天候が続かなければ大丈夫です。

*5:各所でよく質問がありますが,近江町市場は商店街のようなもので,全体としての定休日はなく,営業日や時間は各店ごとの判断です。定休日で多いのは,中央卸売市場の休場に連動する水曜。一部には,向かいのデパート・めいてつエムザに合わせた火曜定休や,昔は多かった日曜定休を続ける店もあります。1日の営業時間は,卸売市場や飲食店の仕入れに合わせて,食品スーパーより早く,午前9時開店,午後5時ごろ閉店の店が多いことにご注意を。

蟹の名は。 男子加能がに,女子香箱がに:女子香箱がに東京へ編

食事・カフェ

雪吊りを眺めての香箱がに

冬の金沢と言えば,ずわいがに,窓の外には雪吊り。とくに,雌の香箱がには,日本海側ならではの水揚げです。料理店ではジュレがけに,あしらいなど,おしゃれな一品に仕立てられます。

東京での雪吊りと蟹料理(ANAインターコンチネンタルホテル東京・雲海)

ですが,この写真をじっくり見て,何か気づいた方は,北陸の方か造園関係者でしょう。

実は東京・港区で,各種撮影に使えそう

その通りで,こちらは東京・港区の溜池交差点近くにあるANAインターコンチネンタルホテル東京の雲海です。ホテル3階の日本料理店ですが,池に鯉の泳ぐ日本庭園に雪吊りを配し,それを背景に,端正な蟹料理が構図に入れられます。向こう側に写る,貸し切れる個室もあるため,雪吊りと蟹を含めた日本料理を前に展開する会話など,冬の金沢・北陸の設定の絵を撮りたい映像関係の方には,受けそうです。

こちらは場所柄,出張での来日と思われるスーツの外国人と日本人のグループ客もいらっしゃいましたが,満足そうです。海外で鮨店をはじめ日本料理店の人気が高まっているとはいえ,そこに出される魚介類のほとんどは,まぐろやかつおなど遠洋の冷凍もの。

本来,日本の食の強みは,沿岸漁業のおかげで冷凍でない魚介が食べられること。冷凍の有無でおいしさが大きく違うものの一つは,かに。海外から日本を訪れるなら,日本でしか食べられないものを,日本にしかない景観で食べたくなるものでしょう。

雌には外子・内子があり,独特のおいしさ

日本海側で獲るかにの特徴は,ずわいがにの雌も食べること。雌は雄より小型で安いのですが,味では雌だけにある外子と内子が独特です。外子はとびこを赤茶色にしたような粒状で,ぷちぷちした食感。内子はオレンジ色で,ほろほろした食感におだやかな甘味と旨味があります。

料理屋さんでは,その食感と味覚を引き立たせるように,甲羅に脚の身のほかに,内子・外子も合わせられ,あしらいやつまなどを工夫されます。

蟹の名は,地域と雄・雌ごとに

雌も食べるとなると,名前も分かれます。蟹の名は,男子か女子かと,地域ブランドで決まり,表のようです。

蟹の名は。:ずわいがにの名称
水揚港
石川県 加能がに 香箱がに
福井県 越前がに せいこがに
せこがに
おやがに
山陰地方
京都府・兵庫県を含むことも
松葉がに

なお,似た食材である,たらばがには,ずわいがにのような(はさみを入れて)足10本のカニ下目ではなく,足8本のヤドカリ下目です。たらばがには,山陰・北近畿・北陸の日本海側では獲れず,国内の漁場は北海道です。

松葉がには地域呼称,越前がには地域団体商標登録済

かにの名前では,松葉がにが,もっとも知名度があるようですが,それはずわいがにで山陰地方水揚げのものの呼称。この範囲に,京都・兵庫の日本海側を含めるかどうかも,公的な基準がありません。同じものが,福井県で水揚げされると越前がに,石川県では加能がにになります。なお,加能がには石川県の旧国名,加賀・能登からの命名。

地域名称のうち,越前がには福井県漁連の地域団体商標として登録されていて,他では使えません。より細かい地域団体商標として,舞鶴かにと間人たいざガニが京都府漁協によって登録されています。松葉がには,関係地域が広く,水揚げ港の範囲に考え方の違いもあり,地域団体商標としては登録されていません。

香箱がには昭和2年の泉鏡花作品で確認できる古い名称

雌のずわいがには,もともと日本海側で広く獲られていて,せいこがに,せこがになどと呼ばれる地域が多いものです。しかしなぜか,石川県ではかなり早くから,香箱がにと呼ばれています。その由来に諸説あるのはそのうち記事にします。

確認できる出版物への初出は,金沢の近江町市場を訪れた主人公たちの描写がある,泉鏡花,「卵塔場の天女」で,雑誌「改造」1927年(昭和2年)4月特別号への掲載。遅くとも昭和2年には,金沢で香箱がにの名称が一般に使われていたことになります。現在では,下のお店のメニューでも,香箱がにの名前が使われていて,近隣府県のものを含めて,広く通じるようになりました。

石川の漁期は11月から雄は3月,雌は12月まで

注意点は漁期で,石川県の場合,11月から雄は翌3月までと長い一方で,雌は12月までと短いもの。年により多少の違いがあって,正確な期間の確認は,石川県漁業協同組合の情報で。

漁期は日本海側の府県ごとに違いもあり,北の方が長め。端境期では近隣の府県のかにも流通しています。また,ずわいがにの漁期以外,たとえば夏でも,地物の毛がには水揚げがあり,それはまた別のおいしさです。

女子香箱がにも東京で食べられるように

冷凍では内子・外子がもたない香箱がには,輸送に時間のかかる東京には,あまり出回らなかったものです。食品スーパーはもちろん,デパ地下の魚店でも扱わないのが普通。しかし現在では,冷蔵輸送の進歩で,日本料理店や鮨店ならば,出しているお店がそこそこあります。

この冬は昨年の11月以降,金沢へ帰ってかにを食べる機会があまりなく,東京で香箱がにを食べていたところ。それで撮りためた写真を載せてみます。ただし,石川県産の香箱がにについては,漁期が12月までで,この冬の提供がすでに終わった店もあるでしょう。

ANAインターコンチネンタルホテル東京・雲海

先ほどの日本庭園をもつ日本料理店で,香箱がには,シーズン中の会席料理の先付のほか,一品料理でも提供されています。

東京で味わえる,ずわいがにの雌・香箱がに(ANAインターコンチネンタルホテル東京・雲海)

写真は,一品料理として注文できる,越前香箱がにの浜茹で。甲羅に,内子・外子と脚の身,あしらいに黄色の食用菊を盛り合わせ,甘酢のジュレがけ。その上に,木の芽と松葉のあしらいです。最後に,お皿に広く散らしているのは,林檎のみじん切りと,手の込んだ一品。

とくに,林檎を散らすのは,しっとり柔らかいかに身とは食感が好対照で,なるほどと思わせる組合わせでした。海鮮に果物の付け合わせは,味と食感の変化が楽しめて,意外といけそうです。

別日の夜に食べたときは,庭が要所でライトアップされていました。

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奥に見通せる雪吊りに,かにが浮かび上がります。あしらいに,銀杏の葉。雪吊りと蟹の構図としてよく整えられていて,そこに雪が少し積もると,情緒が高まりそうです。知らない人が見ると,北陸の温泉旅館かと思うでしょう。

もっとも,この眺めと蟹料理を,東京の都心でやられると,北陸の観光地の売りが一つ減るわけで,コスパなら冬の北陸と付け加えたいところです。金沢では以前の記事に。

こちらには,香箱がにの茶碗蒸しもあって,あたためるとまた別のおいしさに。

香箱がにの茶碗蒸し(内子を中に,外子は銀餡層に上のせ)

脚の身と内子と味噌を少しずつ,卵液とともに中に入れて,緩めの蒸し上がり。内子は,卵の卵黄のような成分で,なるほど茶碗蒸しとは調和します。

一方で,外子は上層の銀餡部分に散らして,彩りを鮮やかにしています。まったりした食感に,外子のしゃりしゃり感が上のせされて,その使い分けが活きています。

外子を炊き込みご飯にするのもよく見ますが,その場合も色合いがポイントです。

久兵衛

次は鮨店で,名店ながら席数もあることで,現在も独立する若手を多く輩出している久兵衛さん。需要に対して鮨店の名店が希少な東京の都心部では,名の知れた鮨店は,かなり先まで予約で一杯。こちらは,席数があるため,予約の準備なく,突然お鮨が食べたくなったときにも頼れる,貴重なお店です。

本店は銀座ですが,ほかホテルなどに数店があります。フリーでの入店可能性という点では,本館と新館に2店舗あって,あわせれば席数のあるホテルニューオータニのお店がおすすめ。こちらは本館側です。

ありましたよ,こちらにも香箱がにの一品が。正直びっくりしました。

東京の鮨店での香箱がに(雌のずわいがに)久兵衛ホテルニューオータニ東京店

東京の鮨店ですから,かには期待せず訪れたもので,隣のお客さんが食べていて,久兵衛でも食べられるのかという驚きのままに注文したもの。仕入れが少ないのか,おまかせでも一部か,リクエストしなければ出ないものでした。あたたかい状態で出てくるのも,鮨店の一品としては特徴的。小皿の蟹の絵付けも,何げに気が利いています。

こちらのお酒は少数に固定されていて,山田錦の源流にあたる雄町の酒を多く手がける,伏見の玉乃光を。伏見の酒蔵では,全国で流通している最大手の2つ松竹梅や月桂冠の次に,東京に出ているものです。

香箱がに(雌のずわいがに)に日本酒をあわせる(久兵衛ホテルニューオータニ東京店)

香箱がにを出されるようになった時期をうかがってみると,現在は築地に入っているのだが,入るようになったのは最近ではないというお返事。どれくらい前から店で出しているかは,すでにわからないとのことでした。断層撮影はこちら。

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縦に並べられた脚の身の下では,かに味噌と内子とを合わせて盛り込んでいます。外子を上に集めているのも,よく見る盛り方です。鮨店らしく,付け合わせやあしらいよりも,内容重視の一皿といえます。

なお,お鮨の方はすでに膨大な言及がある通り,砂糖を使わず,赤酢主体で甘くない,やや固めのしゃり。わかりやすい特徴というと,穴子がよくある煮穴子ではなく,一貫ずつ焼いて,外側がかりっとして香ばしいもの。それを,甘だれだけでなく,塩に柚子を散らしたものと,比べて食べさせます。

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写真を撮ったのは,盃に金箔が使われているからでも。金箔の生産はほとんど金沢で,それを使われた器を東京で見ると,こうして応援したくなります。金箔を控えめに使われたグラスは,酒や料理を引き立てて,きれいです。

ネタに戻ると,柚子などは,焼き物や他のネタ,いかや貝類などでも,要所で散らして使われます。卵も,すり身の入ったカステラタイプで,注文後に,個別に焼いた温かいものが出されてほっこり。食べたくなったときに予約なしでも入れる可能性のある鮨店では,もっとも安心感のある一店です。

ここも場所柄,かなりの確率で外国人客がいて,握りの写真に,英語が入ったメニューが大活躍です。これは,注文も増えて間違いも防げるので,外国人客の増えた鮨店にはおすすめです。

銀座や東京駅などに複数店舗の居酒屋・方舟

よりカジュアルな店では,北陸の魚介と日本酒を多く扱う居酒屋・方舟はこぶね

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こちらは,東京駅ナカにあるお店で,場所は駅改札外の北側,丸の内・八重洲口を結ぶ自由通路に接した黒塀横丁地下1階です。駅ナカなので,居酒屋には珍しく,11時から23時(22時ラストオーダー)の通し営業。中途半端な時間からでも飲んでいけます。

銀座など首都圏に,海鮮と日本酒主体の11店舗と鮨1店舗をもつ会社で,本部は東京ですが,北陸支社を金沢市香林坊に構えます。石川県内でも能登のシーサイドヴィラ渤海など特徴ある施設を運営。ただし,金沢にまだ飲食店はなく,東京設立で北陸も開拓する沿革です。

特徴は,北陸の魚介類と日本酒を独自のルートで仕入れることで,輪島港のせりに直接参加できる買参権も保有。それで,おもに新潟・富山・石川・福井から直送の魚介が並びます。

こちらの香箱がには,1日10食限定扱いで,このときは新潟・佐渡水揚げのもの。

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脚の身と内子を甲羅に盛り付けるのは,各所で見る標準形。一方で,外子は,腹側の甲羅で前掛けと呼ばれる部分に,薄く伸ばして別盛りにしてあります。酒を飲みすすめるには都合のよい分け方で,居酒屋の流儀。限定10食とはいえ,これが東京駅ナカで昼から食べられる現代です。

赤坂浅田

こちらは,東京・赤坂の料亭浅田。金沢の近江町市場近くにある老舗料亭旅館・浅田屋から分かれて独立の店で,他に東京では青山と,名古屋に店があります。金沢の浅田屋は,多様な店舗まで展開していて,日本料理では石亭,よりカジュアルで海鮮に振った松魚亭や,別ジャンルでステーキ専門店である六角堂でも,知名度があります。

東京では,赤坂と青山のどちらも,季節により香箱がにを含んだ会席があるほか,一品料理としても,別に注文できます。

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料亭なので個室主体ですが,一部にカウンターもあるのが,個人客にもありがたいところ。そのカウンターなら,予約がなくても入れる場合があります。

料亭だけあって,器にも力を入れていて,現代の大樋焼や九谷焼が揃えられています。この器は,江戸時代に,京都の茶道・裏千家とともに金沢に招聘された大樋焼の窯元によるもので,十一代大樋長左エ門の作品。十代は文化勲章受章作家で,その作品は国立近代美術館工芸館に収蔵されています。その大樋焼独特の,飴釉の深みのある艶が,かに料理を彩ります。

こちらでは,大きめの香箱がにの甲羅に,脚の身をきれいに縦に揃えて並べる盛り付け。上に出ているところに,外子を埋め込んであります。左下の付け合わせは,しゃきしゃきした加賀野菜の金時草きんじそうと,こちらも金沢の地物を合わせます。

揃えられた蟹身を食べていき,断層撮影すると,このような盛り付けです。

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敷き詰められた脚の身の下は,甲羅の身のほか,手前に内子,上部に外子です。お椀状の甲羅を安定させるために,中空の大根の飾り切りを台としてあります。これらもまた,海鮮そのままではない,料理店に行く楽しみです。

フランス人が楽しそうな茶屋街の夜:外国人宿泊客の約1/3は欧米からで,この割合は全国3位

観光スポット 動画(PV)の紹介

このブログでも,金沢での外国人観光客増加に関する検索が続きます。開業2年目で,日本人観光客は若干の反動減のところ,外国人は増加基調のまま。

日本全体では,外国人観光客の多くがアジア系ですが,金沢で兼六園,ひがし茶屋街,長町武家屋敷,忍者寺に行けば,欧米からのお客さんも相当いるのが特徴。そのことがわかる統計と動画をとりあげてみます。

「県別にどの国から」という分析は多いが

何度か記事にした観光庁の宿泊旅行統計調査では,都道府県別に宿泊客の国籍を調べています。そのため,「どの国から,どの県へ」という2次元の集計ができます。

よくある分析は,都道府県ごとに,どの国からの宿泊客が多いのかを調べるもの。すると,日本のどこでも,アジア系が最多となり,地域により,中国,台湾,香港,韓国の割合が変わるという結論になりがちです。

「国籍別にどの県へ」を調べると別の様相に

一方,この統計では,各国籍の日本旅行者が,日本のどの県を選んでいるかと集計することも可能です。つまり,旅行者の嗜好の視点での分析です。すると,アジア系に限らない,全く別の実態が現れて,驚きます。

イタリア人の宿泊地で石川は全国5位

訪問客の国籍別に,日本のどこに泊まっているか,上位から見たのが下の表です。特徴をとらえるため,旅行者の国籍のうち石川が強い国と,比較のため,日本全体では最多の中国とを抜粋。なお,データは,国籍がわかるもので直近の2016年8月分で,冬はこれより弱い傾向なのが留意点です。

各国籍の宿泊客ののべ宿泊者数
順位 フランス イタリア スペイン 中国
1 東京 京都 東京 東京
2 京都 東京 京都 大阪
3 大阪 大阪 大阪 千葉
4 広島 広島 岐阜 北海道
5 沖縄 石川 広島 京都
6 岐阜 岐阜 神奈川 静岡
7 石川 沖縄 石川 愛知
8 兵庫 神奈川 沖縄 沖縄
9 神奈川 千葉
和歌山
栃木
長野
山梨
10 千葉 神奈川
  石川:26位
観光庁,「宿泊旅行統計調査」,2016年8月*1

石川県は,イタリア人には5位,フランス人とスペイン人には7位の宿泊地で,規模の割に上位です。それも,フランス・イタリアからは,横浜と箱根を擁する神奈川や,浦安・幕張・成田に巨大ホテル群のある千葉を上回ります。

欧米からの観光では,より特徴的なのが広島。世界遺産の宮島・厳島神社と平和祈念公園・原爆ドームが主な目的地で,東京・京都・大阪の次に選ばれています。岐阜は,世界遺産の合掌造り集落・白川郷と,江戸時代の天領由来の街並みが残る高山市が,外国人に好まれる目的地です。

一方,中国からは,北海道と静岡が上位に入るところが特徴的で,広島は上位に入りません。富士山や北海道・沖縄といった自然の景観が求められているようです。

欧米系の割合が高いのは広島・京都・石川

次に,外国人客のうち地域ごとの構成割合を,都道府県別に並べてみます。

具体的には,この統計で分類のある欧州主要国(ロシアを除く)と,それにアメリカ・カナダを加えたもの,さらに中国が占める比率をつくります。それを,上位の都道府県から挙げると,意外なランキングに。

外国人宿泊者のうち各地域からの比率が高い都道府県
順位 欧州主要国*2 欧米主要国*3 中国
都道
府県
比率
(%)
都道
府県
比率
(%)
都道
府県
比率
(%)
1 広島 34.8 広島 47.1 静岡 76.5
2 石川 27.6 京都 36.7 茨城 63.3
3 京都 25.9 石川 34.5 奈良 62.2
4 岐阜 25.2 栃木 29.8 山梨 61.8
5 東京 12.3 岐阜 28.3 三重 54.7
全国平均 8.5   15.1   31.7
観光庁,「宿泊旅行統計調査」,2016年8月

外国人宿泊客のうち欧米からの比率が高くなるのは,まず広島,次に京都か石川です。京都は予想される結果で,むしろ広島の突出が目立ちます。石川も欧州で2位,欧米で3位で,京都と同程度の比率です。

石川へは3人に1人が欧米系で,全国平均の倍

石川県では外国人宿泊客の3人に1人は欧米系,4人に1人が欧州系で,この比率は全国平均の倍以上。どおりで,兼六園や茶屋街では,欧米系の観光客をよく見かけるわけです。

自然志向か文化志向か

表は略しますが,この統計を細かく見ると,欧米の中でも嗜好の差は大きいことがわかります。たとえば,アメリカ・イギリス・ドイツからは,石川よりも北海道が上位。一方,フランス・イタリア・スペインからは,北海道よりも石川が上位です。

日本を旅行する目的には,自然の景観か,建築や庭園も含めた文化か,そこに2つの方向性がありそう。たとえば,フランス・イタリア・スペインは,歴史的な建築など史跡が集積し,観光も街中が多い国。一方で,アメリカなどは,自然の景観が魅力の観光地が多い国です。住む土地の風景は,旅行を考えるときの参照基準となりますから,日本旅行でも行先の選択に反映されていそうです。

結局,金沢の観光地は,文化志向のフランス・イタリア・スペインなどからの旅行客に受けているところ。一方で,アジア系など自然志向の旅行客には,富士山や北海道・沖縄などの景観が好まれていて,近くでは五箇山・白川郷や立山黒部アルペンルートなどの方が受けそうです。

古い街並みにあわせる付加価値は

文化志向の外国人旅行客が石川を訪れる理由として考えられるのは,太平洋戦争の空襲にあっていない都市で,金沢が京都に次ぐ規模であること。それで,茶屋街などに江戸時代後期からの建築が残り,兼六園も大名庭園として一定の規模を保ちます。

とはいえ,日本庭園も寺社も京都・奈良の集積が圧倒的。フランス・イタリア・スペインからのお客さんには,京都が東京の次か,それを凌ぐトップの位置で受けていることも,納得できます。

ではなぜ金沢なのか,それを端的に表す動画を2つ。

金沢で外国人が楽しそうな動画

ヨーロッパからの金沢観光を素材とした動画では,次のものが金沢の特徴をとらえています。

こちらは,季節ごとに週3日のペースで行われている,ひがし茶屋街・懐華楼の外国人向けのイベント。2階のお座敷に,予約の外国人客を招き,芸妓さんが登場するものです。

伝統的なお座敷にはある特別な料理や酒をなくし,芸事の観賞に限定することで,リーズナブルな価格で提供されています。外国人向けには,縁故による紹介がいらないシステムが必要で,それもネット予約などで実現。選ばれたお客さんは,芸妓さんとのお座敷遊びに参加できるように工夫されています。

2階のお座敷と女将さんの英語が活かされる

これには,金沢のお茶屋が,置屋の機能だけでなく,2階に座敷を持っていたことが効いています。置屋は,芸妓が所属する芸能プロダクションのようなもので,料亭や旅館の宴席に芸妓さんを派遣するのが本来の業務。それで,全国的には,最小限の広さしかないものが普通です。

金沢のお茶屋はそれに加え,2階に座敷があって,自店で宴席ができました。人材派遣と飲食の座敷の提供を両方営む組織形態は,とくに金沢で発達したようです。それが今日まで維持されたことで,動画のような外国人向けのイベントもこなせています。

また,重要なのは,女将さん自身が英語で説明していること。別の案内役ではないことで,宴席の臨場感を自然な形で伝えています。それには,留学経験などが活かされています。さらに,踊りだけでなく,芸妓さんとの写真撮影が可能なのも,本来の宴席とは違う扱いで,ほかにない記念として喜ばれているようです。

茶屋建築に現代の日本酒バー

もう一つは,そちらから徒歩5分ほどの主計町かずえまち茶屋街にあるSAKE BAR KAZOE(數)で嗜む日本酒。

主計町は,ここに屋敷があった加賀藩士・富田主計とだかずえに由来する町名。かぞえまちと発音されることも多く,それとかけた「数」を旧字体にした店名です。茶屋建築を,カウンターとテーブルでの日本酒主体の店へ改装されています。

その店の浅野川を見渡せる2階で,利き酒師でもある女性店主から,日本酒とあてをすすめられています。川面に明かりがゆれる風景に,日本酒がはまります。

動画を見ると,淡麗な吟醸酒では,のどごし爽やかで,すぐ満足げな笑顔。一方で,濁り酒には甘味が感じ取れる表情や,別の吟醸酒ではいったん渋い顔で,すぐ解き放たれた表情となるなど,飲み口にあった自然な反応です。

日本酒の味と香りは千差万別で,飲み比べの楽しさが伝わります。甘い・辛いというよりは,旨味と酸味そして香りのバランスで,好みも様々。酒好きには,好みに合う酒を探すプロセスに,幸せがあります。

代謝酵素が揃う欧米人こそ,度数の高い日本酒の奨めがいが

ところで,酒好きからすると,欧米からの旅行客はすすめがいのある存在。われわれ日本人と違って,アルコール代謝酵素が,ほぼ全員にあるからです。彼らはほとんど,日本で酒がかなり強い人と同じスピードで,すいすい飲めています。

日本酒は,ワインよりもアルコール度数がやや高く,日本人なら,好きでも1人2合ほどで終わる場合が多いもの。ほとんどが酒に強い欧米人にこそ,ワインよりも度数の高い日本酒の方が,向いているとも思えます。

彼らも,日本酒を飲み進めれば,ワインにはない方向性に気づくでしょう。穀物由来の甘味と旨味,それでいてリンゴやバナナ,ライチにも似た香りと酔い心地です。欧米では,穀物の酒というと,ビールのような苦味と酸味を効かせるもの以外は,蒸留酒がほとんど。蒸留していない米の酒で,ほのかな甘味や果物の香りがするのは,意外な発見のようです。

*1:第2次速報値で,遡及改定される場合があります。以下も同じ。

*2:欧州で国別の集計のある,イギリス・ドイツ・フランス・イタリア・スペインののべ宿泊者数/外国人ののべ宿泊者数。分子には,ロシアと,欧州でもその他の分類に合算されている国は含みません。

*3:欧州主要国に,アメリカとカナダを加えたものの比率。

ジャパンディスプレイ白山工場が12月稼働:iPhone向け液晶パネル月700万台分の生産能力

金沢駅から車で30分にスマホの液晶パネル工場

金沢駅から車で30分ほどのところに,1700億円をかけて建設された,ジャパンディスプレイの白山工場。資金の大半を前払いしたアップルが,iPhone 7に使う液晶パネルの納入用に作らせた工場の一つです。

2016年10月に完成していながら,需給を見極めるために本格稼働は先送りしていたもの。その稼働が,日刊工業新聞で12月中と報道されました。ただし,企業サイトのニュースリリースには発表がありません。

ジャパンディスプレイは,スマートフォン用の液晶パネルの生産で,韓国のLGに次ぐ世界第2位。後で書く日経によれば,この白山工場は,スマホ換算で月産約700万台分(1.5m×1.85mで25000シート)の生産能力をもちます。ジャパンディスプレイの基幹工場の1つで,石川県で3工場目です。

12月8日に日経が続報したので,この部分を追記。

追加的な情報としては,2016年12月中に,3から4割程度の稼働率で稼働を開始,年明け以降に受注動向によって生産量を増やすとのことです。

日経の続報で明らかになったポイントは,iPhone 7向けパネルを,アップルが設備投資資金を前払いした,生産性の高い白山工場で生産し,空いた千葉・茂原の工場で主に中国メーカーのスマホ向けパネルを作るというシフト。今後のiPhone向けは,白山工場に集中させる方針,と読んでいいのでしょう。

フル稼働ならiPhoneの数台に1台の液晶は白山工場製に

iPhoneの販売台数は,2016年の7~9月期で4551万台*1。また,iPhone 7は,9月の発売から年末までに約7000万台の販売ペースなどと各所で予測されています。

すると,フル稼働で月にスマホ700万台分生産された液晶がアップルに納入できれば,世界で販売されるiPhoneの数台に1台ほどの液晶は,この工場製のものになります。それほどに大きな投資で,成功すればジャパンディスプレイだけでなく,地域にも相当の波及効果をもたらします。

手元にあるので説明しやすい産業の一つ

これまでは,「金沢って何あるの」と聞かれたとき,観光以外では簡単な説明ができにくかったもの。これで,「iPhoneの液晶パネルの工場が,金沢駅から車で30分のところ」と説明できるようになりました。愛知の自動車関連,富山の医薬品やアルミ建材のように,石川で液晶パネルというわかりやすい製品ができたのはよいことです。

工場は,北陸自動車道のすぐ北側で,白山インターの少し美川より。小松空港から金沢駅へのリムジンバスの左側車窓に大きく見えます。キリンビール北陸工場の跡地で,昔ビール,今液晶パネルです。とはいえ,半導体工場は機密と防塵が絶対で,見学コースなどはまったくありません。

日経は厳しい事業環境を伝えていたが,敵失で好転か

完成披露式典は,10月18日に開かれていたところ。

それを報じた日経では,iPhone 6sの売れ行きが下方修正されたことで,稼働時期未定とされていました。稼働の続報は,12月8日になってからでした。

その段階での市場環境と財務内容の厳しさは,8月の日経ビジネスで指摘されています。

過剰生産のリスクと機会損失のリスク

アップルが工場を持たないファブレスなのは,需要変動のリスクを負わないため。技術進歩が急速な製品では,わずかな過剰生産でも,価値が急速に毀損する在庫の山になります。

そのリスクをサプライヤーに負わせれば,自社は得意分野である開発力に特化して,収益を安定化できる。アップルの強さの源泉の一つが,そのリスクの分担にあることは,言い古されました。

ただしその強みは,需要に応じた生産がなされてこそ。需要があるのに生産ができなければ,今度は機会損失が深刻です。開発力で勝負するファブレス・メーカーと,生産設備で勝負するサプライヤーとの交渉力は,需給動向でめまぐるしく変化します。

8月の日経の記事では,iPhoneの販売は6sの売れ行きなどから予測して,弱気の見通し。それがわずか数ヶ月で増産要請に変わった理由は,サムスン製スマホの発火事故によるiPhoneへの需要シフトと言われています。アップルにとっては敵失ですが,少しのショックで需要が大きく振れるこの市場,一寸先は闇です。

液晶パネル工場でシャープ以外の集積

ジャパンディスプレイは,日立・東芝・ソニーの液晶パネル製造会社が,政府系の産業革新機構の出資で統合したもの。後で,パナソニックの千葉・茂原の工場も合流しています。そこで,シャープ以外の日本の液晶陣営が集まった格好。

その工場は以前から周辺に2つあって,今回が川北町の石川工場,能美市の能美工場に続いて3つ目。これらは車で15分ほどの間隔に点在し,中小型液晶パネルの生産拠点が集積します。

昔と違う北陸の製造業

石川の液晶パネルがアップルへの納入で伸びてくれば,北陸のものづくりの様相も変わりそうです。地域ごとに製品の生産額・出荷額を調べている経産省の「工業統計調査」から,工業出荷額を。

北陸新幹線関連4県の工業出荷額(億円:2014年)
  1位 2位 3位
新潟 米菓 有機化学工業製品 塗工印刷用紙
1918 1089 X
富山 医薬品製剤 住宅用アルミサッシ アルミ押出品
2991 1120 871
石川 建設機械・鉱山機械の
部分品など
ショベル系掘削機 他に分類されない
電子部品・デバイスなど
1630 X 1079
福井 駆動・伝導・
操縦装置部品
固定コンデンサ アルミ圧延製品
1158 992 918

出典:経済産業省,「工業統計調査」,品目編,第4表,平成26年調査分
注意:χは,該当する事業所が2以下の場合に,出荷額や在庫などの秘密が漏れないように数値を秘匿しているもの*2

新潟は上越新幹線では,と思われるでしょうが,2位の製品の有力メーカーである信越化学とデンカは,北陸新幹線の上越妙高駅と糸魚川駅の最寄りに工場があり,本社はいずれも東京。両駅のビジネス客は,この2社関連が鍵です。

上位はすでに繊維ではなく各県の特徴が

沿線の製造業では,金額で最高額となる富山の医薬品とアルミ関連が特徴的。医薬品は高齢化で国内需要が増えていく数少ない産業。さらに,厳しい規制により,輸入品との競合がほとんどなく,国内生産の持続が見込めます。富山の強みはそこです。

石川はブルドーザーやパワーショベルなどの建機と電子部品が強いところ。新潟は米菓が日本で突出して1位ですが,他に化学が有力。福井は,すでに自動車部品と電子部品が上位です。

なお,製品よりも企業名を挙げた方がわかりやすく,それは脚注に*3

液晶パネルが石川の上位に出現か

石川の3位には,現在も他に分類されない電子部品が挙がっていますが,工業統計調査では液晶パネルという製品項目が別にあります。そこで,ジャパンディスプレイの白山工場が伸びてくると,それが上位に浮上します。たとえば,シャープの亀山がある三重県は,こんな具合。

工業出荷額(億円:2014年)
  1位 2位 3位
三重 液晶パネル モス型集積回路
(記憶素子)
軽・小型自動車
8256 X X

亀山工場は規模が大きく,大型のパネルも手がけるとはいえ,液晶パネルがいかに高額の出荷額になるかがわかります。2位は東芝の四日市で,わかりやすい製品がSDカード。3位の自動車は,本田技研の鈴鹿とトヨタ車体のいなべです。それら金額は,政府統計としては律儀にXです。

調達が域外からでも,給与所得は地域の消費に

日経などの報道によれば,白山工場の当初の雇用は約250人。典型的な装置産業で,出荷額に比べれば,雇用は少ないのですが,その分労働生産性は高く,平均給与は726万円*4。従業員に発生する新たな給与所得は,単純な積なら18億円台。もちろん,職種により給与は異なるため,これは一つの目安です。また,約2倍までの拡張の用地が確保されていて,需要次第で従業員数もこの倍程度まで膨らむ可能性があります。

半導体工場の設備や原材料の調達は域外からが多く,そこでの地域への波及効果は限定的。それよりも,従業員への給与所得が地域の消費を拡大する効果の方が大です。

北陸の交通事情では,幸いなことに大都市圏への流出はわずかで,その消費の大部分がこの地域にとどまります。車で1時間の範囲では,最大の都市が金沢だからです。金沢が同じ人口規模の地方都市に比べても,商圏人口が大きく,小売店や飲食店が維持される理由はそこです。

税収増が見込める白山市

地域にとってもう一つの期待は,白山市の税収です。実際,シャープの亀山工場が高稼働で,業績が好調だった平成17年度から22年度までの亀山市は,地方交付税の不交付団体になっています。簡単には,国の支援がまったくなくても,市内の税源だけで維持できる自体体という意味。それほどに,液晶パネルは高付加価値で,高稼働率を保てれば,収益に大きな貢献をする製品です。

ただし,亀山はその後の生産調整があって,立地の補助金の取り扱いなどをめぐり,困難な交渉がありました。稼働してこそ雇用と税収が伸びる工場で,稼働状況に応じた行政の対応については,亀山の事例の研究が望まれます。

この点で安心できるのは,白山市には,人口11万人とは思えないほど,高収益の工場や上場企業の本社が複数存在すること。同じ電子部品・製品では金沢村田製作所やEIZOの本社・工場,他に上場企業で,工作機械の高松機械,石川県の上場企業で時価総額トップであるクスリのアオキ本社。さらに,歯科向けネット通販を成長させTOKYO PRO Market上場を果たした歯愛メディカルの本社があります。異なる分野の企業が業績をあげていることは,今後とも,市の財政のリスク分散に寄与しそうです。

ただし,自治体合併はますます困難に

一方で,企業立地とその税収では,白山市がますます伸びる構図。白山市は,通勤・通学・買物で普段に行き来する,金沢市までほぼ一体の都市圏で,自身が合併による発足ですが,多様な組みあわせの合併案がくすぶっては消えた地域です。最近でも,中枢都市を金沢市として,白山市,野々市市,内灘町,津幡町,かほく市を加えた,人口723,223人の石川中央都市圏連携協約が,2016年3月28日に締結されています。これは商圏の実態と合っています。

これらは金沢駅から車で約30分の範囲で,そこに6つの自治体が併存します。県庁所在都市ではもうあまりない,細切れの構成。経済的には一体なのに,これら自治体が大合併できない要因の一つは,周辺自治体の方に有力な事業所とくに工場が多く,その財政が比較的堅調だからでしょう。

石川県では顕著な例が,回りを囲まれても,人口6千人台で町を維持する川北町。同じくジャパンディスプレイの石川工場が,東芝時代からあるためです。人口に比べて,付加価値が高く税収に貢献する大工場があると,財政は潤沢で,合併しない道が選ばれます。

今回のジャパンディスプレイ白山工場の本格稼働で,白山市の税収は大きく伸びる可能性が高まり,金沢市などと合併する誘因はさらに減少しました。新潟市や富山市の人口が大きく伸びた「平成の大合併」でも,金沢市はどことも合併せず,昭和37年の森本町の編入が最後。白山市の大型工場の稼働の影で,金沢の合併がますます遠のくことにもなりそうです。

*1:日本経済新聞,「アップル決算,日本株への影響は」,10月26日

*2:2事業所でも数字を伏せる理由は,自社と地域全体の情報がわかることで,引き算で競合他社の状況がわかってしまうからです。ただし,3事業所でも,うち2つが同じ企業グループの場合などは,わかってしまうのですけどね‥

*3:新潟は,米菓が亀田製菓,岩塚製菓,越後製菓,サトウ食品などと日本で突出した集積。有機化学は信越化学,デンカ,クラレなど。紙は北越紀州製紙。そのほか,製菓関連でブルボン,二輪車の計器で世界首位の日本精機が特筆もの。
 富山は,製薬会社が多数で,ジェネリックでトップの日医工の本社,アステラスの生産子会社アステラスファーマテック,原料や製造受託でダイト,一般向けならムヒの池田模範堂などと書き切れません。アルミ製品はYKK AP,三協立山。このほか,製品が複数の品目に分類されるため,上位に現れませんが,ロボット関連の不二越の規模は有数です。
 石川は,建機のコマツ発祥の地でその基幹工場の1つが粟津,新工場が金沢港にも。電子部品では金沢村田製作所,PFUなど。関連してハイエンドのモニタでEIZO,周辺機器でファブレスですが,アイ・オー・データ。ほかに,間仕切りで,小松ウオールとコマニーが国内シェアを二分。特筆できるものに,ボトリングシステムでトップの澁谷工業,炭素繊維で東レ系の小松精練,機雷の石川製作所があります。
 福井は,トルクコンバータのアイシンAW工業,コンデンサは福井村田製作所,アルミはUACJ(旧古河スカイ)です。ほかに,多角化のため品目で上位なりませんが,セメント販売で国内首位の三谷商事から,コンクリート・パイル生産の三谷セキサンに展開したグループ。自動車のシート素材で有力なセーレンなども特徴的です。

*4:有価証券報告書,平成28年3月期

金沢のお店でGoogleインドアビューが増加中:料亭,茶屋街,河畔のジャズバーなど

食事・カフェ

金沢のお店でも,Googleインドアビューが増えています。このブログも,店のしつらえを調べる検索があるので,印象的なところを並べてみます。

ミシュラン2つ星の料亭

金沢の老舗料亭・銭屋のインドアビュー。

現在インドアビューが見られるお店では,金沢でもっとも高質で,ミシュラン2つ星。入口よりにカウンター席もあるので,少人数でも可がありがたいところ。

ひがし茶屋街の出店といえる十月亭じゅうがつやにも,カウンターがあって,昼はお弁当からあります。また,こちら出身で十月亭を経て独立された小松さんも,2つ星です。

老舗の居酒屋

居酒屋から一軒なら,歴史の古いあまつぼさん。

黒板に書かれたその日の一品料理に,かに面や鱈の白子の揚出し,鴨の治部煮などがあるのが,金沢の居酒屋です。かに面は,かにの甲羅にかにの身などを盛り込んだ,おでん種で,店により盛り付けが変わります。

この店の歴史は古く,地場のデパート・大和本店が入る香林坊アトリオが,1980年代に市街地再開発で建設されるとき,なくなった路地に存在していました。その路地は,現在のグッチ金沢店のあたりから赤煉瓦の四高記念文化交流館へ抜けるもの。大和の定休日でも,昼間は公道のように通り抜けできるのは,昔の路地の名残りです。

あまつぼはそこの地権者だったはずで,完成した香林坊大和のレストランフロアを経て,結局この地に移転。繁華街が再開発される前からすでに店があって,今も続いていることは,信用商売としては安心できます。新幹線開業後には,増えた観光客向けに近江町市場のエムザぐち近くに近江町店を開店していて,そちらもインドアビューが見られます。

この柿木畠店は,すぐ近くにある観光客にも知名度の高い居酒屋割烹とも競合しますが,こちらの方が地元客の割合が高い印象。ランチを和食に限らない定食スタイルで提供しているのも,地元客向けに長続きできる売り方です。

お茶屋がカウンターを設けると

にし茶屋街で,内装をリノベートした飲食店として営業されるもので,光駒さんです。

座敷を掘りごたつ式のカウンターにして,対面を芸妓さんが踊ることのできる,小舞台にしたもの。向う側が,割烹や鮨店のような付け場でないのが面白いところで,こういう造りは繁華街・片町の路地にある貴久美さんなどでも。

さらに,奥に坪庭,そこに灯籠を配しています。インドアビューを進めると,奥の蔵が個室として利用されていることもわかります。

茶屋建築を現代の飲食店に改めた造りは,お茶屋に置屋とお座敷の2つの機能のあった金沢ならではの進化。全国的には,置屋の業務は芸妓さんの「人材派遣」だけで,そこに飲食をともなうお座敷の機能がなかったのが普通です*1。お座敷という物件があったのが,茶屋街がここまで維持された経営上の要因*2

もっとも,旧来の茶屋で出される料理は,料亭などからの仕出しで,茶屋は料亭と共存共栄でした。宴席が減少した現代では,お店自体がカフェやレストラン,バーに転換で飲食業を自前でこなすようになり,「人材派遣」の部分は外注と,興味深い変遷です。

なお,お座敷で太鼓を2つ使うのも金沢独特。使い方は,別の茶屋街・主計町かずえまちで撮影された動画でわかります。

上の動画は主計町茶屋街の芸妓さんで,その並び,浅野川沿いの料亭みふくで撮影されています。

犀川沿いのダイニングバー

こちらは繁華街から離れた犀川沿いにあるダイニングバー・玉響たまゆら

近くの坂の上の方から,川岸へ移転してきたもので,道を挟むものの,カウンター越しのガードレールの向こうが犀川。料亭・金茶寮と結婚式場・辻家庭園のすぐ下に当たる閑静な住宅街です。

金沢駅や繁華街の香林坊・片町からは,夜はバスが少なく,タクシーが現実的な場所。それでも,移転前の店で,口コミサイトの評価が集まる前から,全国を食べ歩くさとなお氏のサイトで紹介されたため,大都市からの来訪者も増加。移転後も,内装と料理ともに,こういう凝ったスタイルです。

繁華街・片町で犀川河畔のジャズバー

同じ犀川河畔ですが,こちらは繁華街・片町。香林坊あたりのホテルからも歩ける場所にあるジャズバー・リバーサイド

どういう立地かと思いますが,ふつうに飲食店が入るビルの7階。犀川河畔に建っているため,店の奥のドアを開けた外のバルコニーにある席が,この風景です。もちろん席数は室内の方が多数。室内のカウンターからも,ボトルなどが並ぶものの,窓越しがこの方向になります。

インドアビュー正面が南西で,日没すぐと思われる遠い水平線の上が,わずかに紫に霞みます。「暮れなずむ」とはこういう色と思われ,お店のインドアビューでは,金沢でもっとも印象的なものの一つです。

もちろん,景色だけでなく,金沢でジャズの生演奏のある数少ない店のため,店内全般に賑わっている人気店。なお,外の席は,季節と天候により状況が変わることにご注意を。

川沿いに飲食店街ができるのは,古い街の共通点かな

ところで,最後のジャズバーは,最初の料亭と同じ一方通行路で,徒歩3分の距離でした。ということで,料理を楽しんだ後のお酒も,古い繁華街・片町では徒歩圏で完結します。それも,犀川の片側にできた町なので,片町という名前です。また,ひがし茶屋街や主計町茶屋街は,浅野川近くです。

それで,大きな駅の回りに飲食店が集まる前からあった繁華街は,だいたいが川の近くではと思い直しているところ。金沢より規模はずっと大きいですが,京都の鴨川・高瀬川,大阪の堂島川・道頓堀川,福岡の那珂川・博多川,いずれもお酒を飲んだ後の川の風景が記憶に残ります。

川が人を隔て,川岸にとどまった人が食と酒を求めて店が集まる構図は,日本の古い街に同様かもしれません。

*1:現在の法律では,芸妓さんは派遣労働者ではなく,個人事業主で,茶屋は労働者派遣業者ではありません。タレントとプロダクションやプロスポーツ選手とチームの関係と同じです。

*2:物理的な要因として,太平洋戦争の空襲を受けていないことがあります。