北陸新幹線で行く,はじめての金沢

お庭,お菓子,お魚,お酒が揃う城下町をまわるため,金沢出身・東京在住者が往復しながらヒントを書いていきます。

2020年に開館した金沢の国立工芸館:実は東京の主な大学など92校の学生・教職員は無料

金沢観光の魅力はアートと食。美術館では,日本最多の入館者・年間258万人(2018年度)を記録した21世紀美術館が目立つところ。江戸時代から残る庭園・兼六園や茶屋街の街並みも,また一つのアートです。

2020年開館した国立工芸館は東京からの移転

そして,工芸分野では日本で一つの国立工芸館が,2020年に金沢市に開館しています。場所は兼六園の隣接地で,21美からも,坂を登りますが徒歩7分です。

金沢に移転した国立工芸館は首都圏の多くの大学生が無料で入れる

国立工芸館は東京国立近代美術館の分館で,東京都から金沢市に移転したもの。紹介記事はすでに多くあるので,知られざる特典を書いてみます。

首都圏の多くの大学の学生と教職員は無料

実は,首都圏の多くの大学など92校の学生と教職員の方は,無料で入れます。
出典:国立美術館のキャンパスメンバーズ紹介ページ

金沢市の国立工芸館は首都圏の多くの大学生と教職員が無料で入れるキャンパスメンバーズ制度がある

東京(竹橋・上野・六本木)の美術館の間に,なぜか金沢の施設があるのです。

無料で入れる大学など(50音順)

学生と教職員が金沢の国立工芸館に無料で入れる大学などは,以下の通りです(2021年3月現在)。

首都圏

青山学院大学,跡見学園女子大学,上野学園大学,江戸川大学,大妻女子大学,お茶の水女子大学,学習院大学,学習院女子大学,鎌倉女子大学,関東学院大学(国際文化学部のみ),共立女子大学,桑沢デザイン研究所,慶應義塾大学,國學院大學,国際基督教大学,国際ファッション専門職大学,国際文化理容美容専門学校,埼玉大学,相模女子大学(学芸学部メディア情報学科のみ),実践女子大学,芝浦工業大学,渋谷ファッション&アート専門学校,城西国際大学(メディア学部のみ),上智大学,尚美学園大学,昭和音楽大学,昭和女子大学,女子美術大学,白百合女子大学,成城大学(文芸学部・大学院文学研究科のみ),清泉女子大学,創形美術学校,玉川大学,多摩美術大学,千葉大学(文学部・国際教養学部のみ),千葉商科大学,中央大学(文学部・大学院文学研究科のみ),中央学院大学,筑波大学,津田塾大学,帝京大学,デジタルハリウッド大学(デジタルコミュニケーション学部・大学院デジタルコンテンツ研究科のみ),東京大学,東京医科大学,東京医科歯科大学,東京外国語大学,東京海洋大学,東京学芸大学,東京家政大学,東京藝術大学,東京工科大学(デザイン学部・大学院デザイン研究科のみ),東京工業大学,東京工芸大学,東京国際大学,東京女子大学,東京造形大学,東京都立大学(人文社会学部,都市教養学部人文・社会系,大学院人文科学研究科のみ),東京理科大学,東洋英和女学院大学,東洋大学,東洋学園大学,東洋美術学校,獨協大学,二松学舎大学,日本大学(芸術学部・大学院芸術学研究科のみ),日本映画大学,日本女子大学,ハリウッド大学院大学,一橋大学,文化学園大学,文教大学,法政大学,放送大学,武蔵大学,武蔵野美術大学,明治大学,明治学院大学,明星大学,横浜国立大学,横浜美術大学,立教大学,早稲田大学,和洋女子大学

関西

京都工芸繊維大学,京都市立芸術大学(京都芸大),京都芸術大学(旧京都造形芸術大学),神戸芸術工科大学,宝塚大学,立命館大学

その他地域

金沢美術工芸大学,東北芸術工科大学

首都圏は主要大学を網羅,関西は立命館と芸術系

上のように,首都圏の多くの大学生は無料で入れます。関西は,芸術系のほか,大規模な総合大学は立命館大学だけ。他地域は,金沢美大を含めて2校のみ。こうなっている理由は最後に書きます。

前日までにネット予約:当日学生証提示で無料

現在は,新型ウイルス感染拡大防止のため,1時間ごとに定員が決まっていて,前日までにネットで予約する仕組み。

無料となる学生や教職員の方は,入館したい時間帯を指定した後,
観覧無料又は割引対象の方: ¥0
を選べばよいです。すると,支払いなしでQRコードが発行されます。

当日は,窓口でQRコード(スマホやタブレットでも可)とともに,学生証か教職員証を見せると入館できます。

学生証や教職員証を忘れると,ネット予約でQRコードが発行されていても,無料になりませんので,ご注意を。

観光客が減った現在は予約なしの当日入館もできる

前日までのネット予約制度があるものの,金沢全体に観光客が減っているため,現状では定員に余裕があります。2021年3月現在,予約なしでの当日入館もできています。観光客が戻るにつれ,この余裕はなくなるでしょう。

工芸とデザイン全般に独特の展示品

現在のところ常設展示はなく,企画展ごとに,自館所蔵作品と他館や篤志家から借り受けた作品が展示されています。

ありがたいことに,個人利用のための撮影は,ほとんどの作品で可能です。ブログということで,著作権保護期間が終了した作品を取り上げてみましょう。

Jutta Sika, "Tea and Coffee Set," 1901-1902, Porcelain, at National Crafts Museum, in Kanazawa, Japan.

こちらは,Jutta Sika(1877-1964)のティー・コーヒー・セット 。1901-1902年の作で,約120年の経過を感じさせないフレッシュなデザインです。

続いては,人間国宝・富本憲吉(1886-1963)の色絵風花雪月角皿で,1951年の作品。日本を代表する陶芸家の逸品ですが,造形や色彩はもちろん,柔らかな草書の魅力を感じさせます。

富本憲吉、色絵風花雪月角皿、1951年、国立工芸館

現在の企画展では,東洋を意識した海外の作品も揃えられていて,その例がChristopher Dresser(1834-1904)による水差し"ラクダの背",うに型容器,紅地線文アカンサス型手付き壺。

Christopher Dresser, Jug, "Camel back", Vessel in shape of sea-urchin, and Jar with acanthine handles, at National Crafts Museum, in Kanazawa, Japan.

いずれも1880年代の作品で,それぞれに異境への想いが伝わる独創的なフォルムです。

展示される工芸品は,器にとどまりません。こちらは,フランスの著名な建築家,Pierre Chareau(1883-1950)による書架机とフロアー・スタンド "修道女"。この順に,1930年と1923年の作品で,金沢に所蔵されていることに驚きます。

Pierre Chareau, Desk with a Bookshelf and Floor Stand, "Nun," at National Crafts Museum, in Kanazawa, Japan.

プロダクトデザイナーによる量産品も

工芸の美術館ということで,量産された食器など,プロダクトデザイナーの作品も展示されています。たとえば,森正洋の平型めしわん,栄木正敏のハンドルの器シリーズなどです。

著作権保護期間が満了している,1967年以前に逝去された作家の作品としては,杉浦非水(1876-1965)による「東洋唯一の地下鐵道 上野淺草間開通」を表したポスターがあります。こちらは,オフセット・リトグラフによるもの。

杉浦非水、東洋唯一の地下鉄道 上野浅草間開通、1927年

経済史や鉄道史の書物でもよく紹介されるポスターの実物の1枚と,ここで出会えるとは思いませんでした。

日本最初の地下鉄は東洋初でもあって,東京地下鐵道が1927年に開業した上野ー浅草間。現在の東京メトロ銀座線で,最初に開業した区間です。

隣の県立美術館に国宝とカフェの名店が

国立工芸館は一緒に回れる施設も複数あって,その一つが,お隣の石川県立美術館です。

県立美術館は,国宝である野々村仁清の色絵雉香炉の常設展示のほか,加賀藩前田家が収集した古美術(現在は前田育徳会所蔵)の企画展が一つの柱。

色絵雉香炉は,京都の御室・仁和寺前の窯による17世紀の作とされています。

野々村仁清、色絵雉香炉、国宝、石川県立美術館所蔵

雄は前田家に伝わったもので国宝指定。のちに収められた雌と併せ,雌雄揃っているのが,この展示の希少価値です。

県立美術館では,この部分が撮影可能なのも,ありがたいところ。ただし,県立美術館は有料です。

東京の名店のカフェで金沢で食べログトップに

県立美術館には,別の目的でも観光客が訪れます。

館内のカフェ・ル ミュゼ ドゥ アッシュは,東京・自由が丘の名店モンサンクレールのオーナーパティシエ辻口博啓氏が,出身の能登・七尾と近隣の金沢で開く店の一つ。早い時間ならペストリーもあって,軽食もとれます。

国立工芸館の隣,石川県立美術館にあるカフェ・ル ミュゼ ドゥ アッシュ

そういうわけで,食べログでは金沢のカフェのトップ。日中ずっと,地元客と観光客で待ち行列ができています。といっても,名前を書いて,館内に多くある椅子で待っていればよいので,密にはなりません。

写真のように,こちらの窓際席は,右奥に国立工芸館が見える距離です。無料の対象となりそうな学生風の方も多くいて,学生証があればお隣は無料かもと,教えてあげたいところです。

アクセス:路線バス出羽町か周遊バス広坂下車

国立工芸館の場所は,県立美術館県立歴史博物館の3館が隣り合う金沢市出羽町・本多の森です。兼六園の山側の隣接地でもあり,その小立野口か随身坂口から徒歩2分です。その間には,加賀藩前田家の奥方御殿が残る重要文化財成巽閣があります。

好みに応じて,以上を組み合わせた回遊ができるでしょう。

バスで坂を登る出羽町下車か、バスを降りて歩いて登る広坂下車か

国立工芸館と県立美術館に,金沢駅からバスで行く方法は,2通り。

最も近くまで行くのは,金沢駅兼六園口(東口)から,小立野・金沢大学病院方面の路線バスで,出羽町バス停下車徒歩5分。こちらは,バスで坂を登ってしまうので,歩きが楽。バスは毎時3本ほどですが,ダイヤは不規則で,事前に時刻の検索がよいでしょう。

他の観光スポットも回るなら,周遊バス広坂・21世紀美術館下車,徒歩7分。こちらは左回り・右回りとも15分ごとで,時刻表付きマップ1枚で回れます。ただし,バスを降りた後の歩きは登り坂です。

以上のバス停,出羽町・広坂とも1日乗車券で乗れる範囲で,それがあれば追加の出費はありません。

なお,古い案内では,兼六園シャトルで県立美術館・成巽閣下車という説明が残っています。残念ながら,この兼六園シャトルは,新型ウイルスの感染拡大で2020年4月から運休し,廃止となっています。

広坂からのアクセス:兼六園沿いの坂道のほか,急な石段でも

広坂バス停から国立工芸館までは,広坂交差点から兼六園沿いの坂を登る道。登り終わって,右手に県立美術館が現れてきたら,その奥が国立工芸館です。

別のルートとしては,周遊バスの通りを金沢歌劇座方向へ進み,歌劇座前の交差点を中村記念美術館方向へ左折,旧中村邸前から美術の小径という石段を登ることもできます。この石段はかなり急で,健脚の方向け。

街歩きが好きな方は,周遊バス広坂バス停↔21美↔(県立美術館・国立工芸館・歴史博物館・成巽閣)↔美術の小径↔中村邸・中村記念美術館↔鈴木大拙館↔周遊バス本多町バス停といった,大きく回遊するルートもとれます。

金沢の街なかでは珍しく,駐車場も無料

金沢の街なか観光では無料の駐車場は少なく,周遊バスがすすめられます。ですが,国立工芸館と県立美術館には,珍しく無料の駐車場があります。

駐車場は,隣接する美術館など(国立工芸館・県立美術館・県立歴史博物館ほか)の利用者に共同で管理されている3か所で,空きに応じて案内されます。

そのどこかに入場して,係員の指示する場所に止めた後,入館時に手続きが必要です。

国立工芸館が第一目標なら,最も近く,台数に余裕のある歴史博物館の駐車場がおすすめ。県立美術館前の駐車場も近いのですが,カフェも含めた利用客が多く,満車になりがちです。

なお,21美も以上3館から徒歩7分ほどですが,駐車場の運営は別で,基本的に有料です。

学生無料の理由:サイトライセンスのような契約

最後に,首都圏の大学生の多くが,金沢の国立工芸館へ無料で入れる事情です。

無料で入れるのは,大学などと国立美術館との間に有償の契約があるからです。これは,ソフトウェアのサイトライセンスのようなもので,各校は学生数に応じた対価を,一括で払っています。

契約は1館ごとか関東・関西の地区単位

契約は,美術館1館ごとか地区単位で結べます。たとえば,学生数1万人以上の大学では,(金沢の工芸館を含む)関東地区の美術館利用の契約で,年間926,000円。

高額のようですが,学生1人当たりでは数十円で,授業料に比べればごくわずかの費用負担です。契約している大学の学生が,金沢旅行で国立工芸館に入館すると,それを上回るリターンが期待できます。

ここは,金沢にある東京の美術館

そして,この国立工芸館は,金沢に移転した現在も,東京国立近代美術館の分館の位置づけ。

それで,ここに無料で入れるのは,東京国立近代美術館に有効な契約をしている学校になります。首都圏の主要大学が網羅されているのは,国立工芸館が「金沢にある東京の美術館」だからです。

関西の大学は関西地区だけと契約が多い

一方,関西の大学は,京都国立近代美術館など,関西地区の施設だけ適用になる契約をしているものが多いのです。

関西の大学で,国立工芸館に入れるのは,全国の国立美術館すべてに有効な契約をしている芸術系の大学のほか,総合大学では立命館大学だけです。

大学の案内では金沢に工芸館があるとは…

上に挙げた大学では,東京国立近代美術館に割引があることを,学生に案内しているのですが,それが国立工芸館にも有効で無料になり,実は金沢にあることが知られていません。

たとえば,学生向けの案内の多くがネットで読める放送大学ではこんな感じで,他大学も同様でしょう。あいにく,金沢にも対象施設があることは,読み取れません。

東京からの旅行や帰省の機会に

金沢は東京から新幹線で約2時間30分。価格もツアーや割引きっぷなら手頃な範囲で,首都圏からは学生の旅行も増えています。

そのインスタでは,着物で兼六園や茶屋街,武家屋敷にたたずむショットや,鮨,海鮮丼,スイーツが流れています。

県立美術館のカフェを考えている学生が,上のリストにあてはまるなら,お隣で工芸品を観賞する機会も,試せるところ。首都圏から帰省中の学生も,駐車場が無料なので,時間のあるときに訪問できるでしょう。ただし,学生証はお忘れなく。