北陸新幹線で行く,はじめての金沢

お庭,お菓子,お魚,お酒が揃う城下町をまわるため,金沢出身・東京在住者が往復しながらヒントを書いていきます。

変わりゆくひがし茶屋街の新しいお店,金澤しつらえ

ひがし茶屋街は,花街から食と伝統工芸の街へ

ひがし茶屋街は,古いお茶屋さん,つまり芸妓さんのお座敷があるお店が残るところです。よく誤解されるのですが,お茶屋さんは,街道や門前町で旅人にお茶やお菓子を提供した茶店(ちゃみせ,さてん,今のカフェ)ではなく,夜の仕出しの食事やお酒とともにお座敷で芸妓さんの芸が披露されたお店です。それがどういうものなのかは,これまた金沢市制作の動画でわかります。

ひがし茶屋街芸妓「さわぎ」 - YouTube

ただし,お座敷は不特定多数のお客さんに開かれたスタイルではないため,旧来のお茶屋さんは,すぐ前を大勢の観光客が歩いていても,日中明かりが付いていることも少なく,戸も閉められたままです。

それでは,現にこの街を訪れる多くの観光客に応えられないので,街並みを観にきた多くの旅行者に,本当にお茶や料理を出すお店(カフェやレストラン)が進出してきたというのが,現代の経緯です。

今や,金沢の他のどの観光スポットよりも混雑しているため,お茶とお菓子という伝統的な和カフェだけでなく,コーヒー・紅茶,各種デザート,パンケーキ,和食,お鮨鉄板焼きフレンチなど,多様なジャンルのお店が,この街に進出してきています。

また,買って帰る品として,お菓子だけでなく,金箔工芸をはじめ,焼き物などのお店も増えつつありますね。

最近の開店例では,工芸品とお抹茶・上生菓子でもてなす,金澤しつらえ

変わりゆくひがし茶屋街でもっとも新しいお店の例が,金澤しつらえ。これまで,会席料理の螢屋として,老舗料亭旅館の浅田屋が経営されていたものが,2014年12月から金箔の箔一のお店になったもの。ひがし茶屋街の入口にあたる広見の角地です。写真では冬枯れしていますが,風情ある柳の木が目印。

ひがし茶屋街の広見角地ににある金澤しつらえ

弁柄格子に,茶屋街で統一された行灯と暖簾が印象的。木虫籠(きむすこ)という台形状の格子が,ブラインドの役割を果たしています。金澤しつらえの店構え

こちらは輪島塗などの漆器を展示した各部屋の入口。この時期,内庭には雪吊りがあり,手前には大樋焼の大作。

金澤しつらえの内庭

リノベートで設けられた,2階をつなぐ金箔の吊り橋。ガラスの床材に金箔を敷き詰めたもので,サイドもガラス。左手に元の土蔵が透けて見えます。

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内容が金箔とともに,輪島塗や大樋焼などの工芸品の展示で,ここから先は無粋なのでぜひ実物を。

カフェ・やなぎ庵

リノベートされた内部の見学に加え,2階にカフェ・やなぎ庵があります。以前は,お抹茶と上生菓子が入館料とセットでしたが,現在はメニューが増えたので,入館料とは別立てです。入館料のほか,コーヒーだけでも構いません。

テーブル席でふるまわれるので,堅苦しさはありません。席数は,ひがし茶屋街の他のお店と比べても多い方で,ピーク時でなければゆとりがありそうです。

金澤しつらえのテーブル席

こちらも内装は現代風にリノベートされていますが,朱塗りの内壁などは金沢らしい様式を踏襲。

金澤しつらえでのお抹茶ととお菓子

抹茶碗は,茶道で高く評価される楽焼・大樋焼で,先ほどの器と同じ大樋年雄先生の作品。手びねりがもたらす自然な起伏によって,つややかな飴色がきらめきます。

よく考えてみれば,大樋焼の窯元と美術館は,ここから歩いて10分ちょっとのはずで,金沢の街中で育まれた焼き物なら大樋焼といえます。ただし,手びねりなどの手法に手間と希少性があって,買い求めるのはなかなか大変です。

大樋年雄作の抹茶椀(ひがし茶屋街の金澤しつらえ)

上生菓子は,森八の練り切りで,菓銘が結び柳。

森八の練り切り・結び柳

おだやかな餡が,お抹茶にとけゆきます。

こちらは,再訪時に追加されていたメニューの,やなぎ庵パフェ。

自家製寒天に栗と餡も添えた,和風の抹茶パフェ

抹茶パフェですが,自家製寒天と栗,餡などで和風の味わいです。格子の向こうは,ひがし茶屋街でもっとも人通りの多い広見。戸が開けられているときは,通りの喧噪を達観できます。