このブログを続けて気付いたのは,21世紀美術館とカフェを組み合わせた検索が多いこと。旅先で甘いものが食べたくなる気持ちは同じで,よく知られている店でも,1ページずつ作っておこうと思います。このお店を含むリストはこちら。
料亭の葛きりが定番の和カフェ・つぼみ
こちらは21世紀美術館・市役所口から徒歩2分ほどの和カフェ・つぼみ。
市役所の裏手へ回り,用水の流れに沿って柿木畠の小路に入って右手1軒目です。犀川沿いにある料亭・杉の井が営む店としても知られています。
この小路周辺は,昔から深夜まで営業する飲食店が集まっているところ。飲食店の新店は金沢駅周辺の方が増えている中で,いたる,あまつぼなど,地元客・旅行客ともに長く繁盛していて,おすすめできる居酒屋がある通りです。両店とも,ここから徒歩1分くらい。
店の中は,両脇に少人数用のテーブル席,真ん中に一枚板の大机に向かい合わせの席という配置です。
定番は,こちらを営む料亭の会席料理に合わせられていた葛きり。しかし現在では,広く受けそうな抹茶パフェなどの方が出ているしょうか。
あんみつなどでは,つぶあんとこしあんを選べるのがよいです。和菓子好きに応える心遣い。
季節物として,夏はかき氷,冬はぜんざい系があるほか,葛きりとぜんざいとを組みあわせたセットなども用意されています。
店の奥に見える石垣は,金沢城の外郭に防衛のため二重に作られた堀・惣構(そうがまえ)の外側のもので,外惣構(そとそうがまえ)と呼ばれるものです。後で散歩することになる上流から,当時と同じ天然の水源の用水が流れています。
外惣構という堀の石垣を背景に,甘味が揃う
さて,抹茶パフェはこのような具合。
抹茶アイスと白玉の下に,寒天とつぶあんをいい具合に合わせた層があり,よくある抹茶アイスだけのものよりも和の味覚。葛きりが定番の店だけあって,寒天の扱いがうまくはまっています。上の蕎麦ぼうろも,素朴な香ばしさを添えるアクセントです。
初夏の別日は,かき氷を。
ふんだんに盛られたかき氷も,甘味をいくつか厳選してあって,こちらはいちじく。ほかに,苺のあまおうなどもあります。ほどよく果肉が残り,おだやかな酸味が広がります。
最後に,こちらのスペシャリテの1つ,葛きり。本店というか,料亭の杉の井で食べたときの写真でどうぞ。
派手さとは方向性を異にした,甘味の原点です。よく,日本料理は引き算だと言われますが,これは甘味の引き算の体現でしょう。
外惣構の下流は鞍月用水として東急ホテル西側へ
お店の奥に流れる外惣構を,21世紀美術館側から見ると,写真のように飲食店などの裏を抜けて街中を抜けています。
写真左手の1軒目がつぼみ,右手が金沢市役所という位置です。この堀は,この先は鞍月用水として,繁華街・香林坊の香林坊東急スクエアの南側から金沢東急ホテル西側へ回り,長町武家屋敷の入口にあたるせせらぎ通りの脇を流れます。下流方向へ長町武家屋敷まで,15分ほどの散歩でたどり着けます。
石垣は江戸時代初めの完成
この石垣は,江戸時代のはじめ1610年の完成で,400年超の歴史です。実は,眺めている外怱構より先に完成した内惣構を作ったのは,意外にも日本史の教科書に現れるキリシタン大名の高山右近で,この石垣の設計もその影響を受けています。
高山右近は大阪生まれ。高槻城主である一方で教会を設立して布教活動をしていたのですが,36歳のとき,豊臣秀長から畿内追放,親しかった加賀藩前田家預かりとなって金沢へ。与えられた最初の屋敷が,現在の21世紀美術館の敷地というのは歴史の奇遇ですが,金沢城・兼六園に隣接した場所に屋敷を与えたのは,歓待の現れ。複雑な事情はあれ,よく大阪からいらっしゃいました,ということでしょう。
その後,26年あまり,金沢城の修繕と内惣構の造営,お隣の高岡城の築城などの業績を残しつつ,金沢・七尾・高岡などに住んでいました。しかし,63歳の時,徳川家康による禁教令で国外追放処分。金沢からまず京都に護送され,長崎を経てマニラに旅立ちます。それは,またの機会に。
上流の左側は21世紀美術館とその散策路
同じ地点の道路の反対側から上流の写真を撮ると,奥の森からのストレート。
左側一帯は21世紀美術館,ただしこの堀が掘られたころは高山右近の屋敷です。右側は,加賀藩筆頭家老の本多家の下屋敷一帯,のちに加賀藩家老横山家の子孫の邸宅・旧横山邸と現石川県知事公館。この部分にまっすぐ堀が引けた理由もわかります。金沢城を中心とした城下町が形成された江戸時代から現在まで,この周辺は金沢の要所です。
もともと左側に住んでいた高山右近の娘・小菊(洗礼名ルチア)が,その横山家に嫁いでいたりと,これも話が長くなるのでまたの機会に。
21世紀美術館の外惣構脇には茶室が
現在の21世紀美術館は,周囲も無料で通り抜けできる開放的な施設で,この堀の左側に写真のような散策路が続きます。
雪吊りの施された木は,21美敷地内にある金沢市営の茶室・松涛庵と山宇亭。
とくに手前の松涛庵は,前田家12代藩主・斉泰が幕末に建てた江戸・根岸の別邸を,いったん鎌倉を経て移築したものと,長い歴史の遺産です。
21美を訪れる旅行客には気付きにくいこの茶室,茶道などの用途に限り,有料で貸切利用できるものです。松涛庵だけは,その利用がない昼間だけ,一般の見学ができるようになっていて,撮影は自由。
茶室の松涛庵から21世紀美術館の丸いガラスの外観を望むと,こんな感じ。
こういう構図が21美の敷地内で撮れることは,あまり知られておらず,工夫のしがいもあります。
奥に見える21世紀美術館内のカフェレストラン・フュージョン21は,これもまた定番ですが,これも長くなるので別記事として,今回は堀の源流へ。
源流は旧中村邸の奥
この外惣構を,周遊バスのルートである大通りを渡って上流に進むと,地図では源流に。それは本多の森と言われています。ただし,公道からは流れをすべてはたどれません。
おそらく,この灯籠の下の用水が,支流かもしれませんが,外惣構の起点に近いところ。
灯籠で予想できるように,これまた金沢市営の茶室・旧中村邸で,中村記念美術館の一部です。
茶会等で貸切利用はできるものの,普段は非公開で,年数回ほどのイベント時にだけ公開されます。上の灯籠の庭も,そのときに撮った写真です。
美術の小径の滝を登ると
この用水には,後年に,崖の上からこの滝をつないでいます。
昔の記事に載せた写真でもありますが,その上流はこうなっていて‥
流れをさかのぼると,またスイーツ
その木橋を望むのが,以前紹介したこちら。
ということで,用水の源流には,本多の森の上に建つ石川県立美術館。水の流れは,21世紀美術館の西側を通り,つぼみまでつながっています。
やはりそこにもスイーツがあって,ここまでゆっくり歩き通しても,街なかを20分。消費したカロリーだけ食べられるスイーツ・オリエンテーリングにはよい街です。ようやく落ちにたどり着いたところで,まとめ。
せせらぎにスイーツあり
この外惣構を下流に進むと鞍月用水と書きましたが,それに沿って橋を掛けた飲食店が並ぶのが,せせらぎ通りです。金沢東急ホテルの西側の裏手。先ほどの水は,ここを流れています。
写真には,一部の品でカカオ豆の焙煎から手がけている,ショコラトリーのサンニコラ。こちらも地元のチョコレートでは定番ですが,長くなるのでまたの機会に。