北陸新幹線で行く,はじめての金沢

お庭,お菓子,お魚,お酒が揃う城下町をまわるため,金沢出身・東京在住者が往復しながらヒントを書いていきます。

仙台→金沢など,東京以外のJR東日本の駅からも,前日18時まで購入できるツアーの発売開始

JR東日本のびゅうツアーには,旅行会社にはない便利さがあります。

  • 前日18時まで,えきねっとで購入
  • 乗車前にJR東日本の駅の指定席券売機で受取り

このツアーのうち,発駅と宿泊先を自分で選べるダイナミック・レールパックで,JR東日本の主要駅→金沢方面分の発売が2018年1月25日から開始されました。旅行や出張で使えるルートが,一挙に拡大しました。

ただし,予約と購入ができるのは,毎日5:30~23:40です。残念ながら,逆方向(金沢→JR東日本の主要駅)には対応していません。

発駅が,JR東日本の主な駅(乗継1回まで)に拡大

ダイナミックパックで,金沢など北陸へ行く場合の特長です:

  • 発駅が,北陸へ乗継ぎ1回までで行ける主な駅に拡大
    関東・信越・東北のほぼ全域からの旅行や出張に対応
  • 北陸エリア内なら,ホテル・旅館を1泊ずつ別にできる
  • 最低1泊だけツアーで買えば,それ以外の宿泊は自由

仙台→金沢も前日18時までこのツアーで買える

このツアーで,新たに作れるようになったルートの例です:

  • 横浜・千葉など→東京→北陸新幹線→金沢
    (乗車券が通しとなり,東京発を使うより割安
  • 高崎・軽井沢・長野など北陸新幹線→金沢
  • 仙台・福島・宇都宮など東北新幹線→大宮→金沢
  • いわき・水戸など常磐線→上野→金沢
  • 越後湯沢など上越新幹線→高崎→金沢

横浜発なども通しで買え,東京発プラス200円

ふつうのパックツアーでは,発駅の設定は東京や大宮などの新幹線乗車駅だけ。一方,このダイナミックパックでは,横浜・大船・千葉・立川発なども組めます。

すると,乗車券が通し計算となり,Suicaなどで別に精算するよりも割安。たとえば,東京発に比べて,横浜発は往復でプラス200円,千葉発は往復でプラス800円で済みます*1

ツアーが組める細かな条件は,JR東日本の利用ガイドへ。需要がありそうなのに組めないルートは,後で詳しく書きます。

仙台→金沢1泊2日,どの程度安いのか

新たに組めるようになった発駅で,もっとも利用されるのは,仙台発でしょう。仙台→金沢の宿泊付ツアーで,前日18時まで買えるものは,これだけです。

一例として,特急料金が通常期で計算される2月23日(金)から1泊2日で,試してみます。ホテルの選択は,わかりやすい条件として,金沢で部屋数最大の駅近ビジネスホテル・マンテンホテルのツイン朝食付。結果は,2人合計で83000円です。

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結局,ツイン1泊朝食付で,1人41500円。これがどの程度安いのか,通常の運賃やネットの割引きっぷと比較してみます。

仙台―金沢往復の運賃と割引きっぷ
(仙台―大宮はやまびこ,通常期:円)
きっぷの種類 区間 合計 特急券 乗車券
通常の運賃・料金
乗車券は往復割引
仙台―金沢     10480
仙台―大宮   4740  
大宮―金沢   6570  
往復 41480 22620 18860*2
えきねっとトクだ値
お先にトクだ値

両区間ともトクだ値では,
通常運賃よりも高くなります。
仙台―大宮
お先にトクだ値30
7240 購入は13日前午前1時40分,
メンテ時は14日前23時40分まで
大宮―金沢
トクだ値*3
12220 購入は当日午前1時40分,
メンテ時は前日23時40分まで
往復 38920
スーパー・モバイル
Suica特急券
*4
仙台―大宮 8600 購入は前日23時40分まで
1席ごとに1端末が必要
大宮―金沢 11660
往復 40520
ダイナミック・レールパックの一例 ツイン1泊
朝食付
41500 購入は前日18時まで
冬の平日発の例

仙台→金沢なら通常運賃でツイン1泊朝食付に

窓口や券売機でいつでも買える往復運賃は,41480円です。対して,このダイナミックパックでは,ほぼ同額の41500円で,ツイン1泊朝食付がセットされます。

東北・北陸新幹線の乗り継ぎでは,もともと乗り継ぎ割引がありません。他の割引きっぷとも下で比較しますが,こうした区間では,ダイナミックパックがかなりお得です。

運賃部分は,宿泊を別にとる場合の約2割引

ちなみに,同じツアーで,(往復の新幹線なしで)このホテルだけを予約すると,この日のツインで2人16200円。すると,1人往復の交通費分は,(83000-16200)/2=33400円と計算でき,通常運賃から19.5%引に相当します。つまり,ホテル代を除いた計算では,約2割引の設定といえます。

えきねっとの割引きっぷ・トクだ値は…

えきねっとで,宿泊なしでよく使われる割引きっぷが,乗車券と特急券セットのトクだ値です。購入がネットで完結し,指定席券売機で受け取れるため,出張でも人気です。

トクだ値と比べると,このダイナミックパックの割引は,どの程度でしょうか。トクだ値には,(メンテ時を除き)当日午前1時40分までの購入で約1割引のもののほか,13日前午前1時40分までの購入で約3割引になる,お先にトクだ値30などがあります。

仙台→金沢では実質前日まで買えるトクだ値は,かえって高い

今回発売が開始された仙台→金沢のダイナミックパックは,前日午後6時まで購入可能です。比較するなら,前日でも買える利便性で同等の,トクだ値(約1割引)としたいところです。

ところが,トクだ値は新幹線乗車区間ごとの割引きっぷです。一方,通常の乗車券は,仙台から金沢の通しが買えます。当然,通しの方が距離の長い乗車券になり,運賃計算にある遠距離逓減制度(長距離ほど距離当たりの運賃が安くなる制度)のメリットを受けられます。逆に言えば,大宮できっぷが分割されるトクだ値は,通しの乗車券に比べて,計算の基準となる運賃の距離単価が高いのです。

さらに,仙台→金沢は,通しの乗車券なら,往復割引(1割引)が適用できる距離(600km超)です。しかし,大宮で分割されたトクだ値には,往復割引の適用がありません

以上2つの理由で,仙台→金沢を前日まで買えるトクだ値で買うと,実は窓口や券売機で買う通常の運賃より高くなります。

このように,新幹線を乗り継いで,距離が長くなるルートでは,列車ごとにきっぷが分かれるトクだ値の方が,通常のきっぷよりもかえって高くなる場合があります。その条件は,距離とトクだ値の割引率次第で,個別に計算が必要です。

早期購入割引・お先にトクだ値の約14%割引

そこで,より割引率が高い,13日前の午前1時40分まで購入可能の,お先にトクだ値30と比較したのが,上の表です。さらに細かい話ですが,大宮→金沢は乗車率が好調で,お先にトクだ値30は発売されていません。JR東日本が設定する紙の割引きっぷは,実質前日まで買えるトクだ値(約1割引)だけです。

以上,えきねっとで買える割引きっぷの組み合わせで,最安値は1人往復38920円。ダイナミックパックでは,この金額プラス2580円でツイン1室朝食込みが付いてきます。先ほどのホテル代を引いた比較では,14.2%引と,やはりかなりお得です。

スーパーモバトクからでも約18%割引

他によく使われるモバイルSiuca特急券も,特急券と乗車券が一体です。上述のトクだ値と同じ理由で,当日も買えるものでは,通常のきっぷより高くなります。

そのため,前日23時40分まで購入できるスーパーモバトクと比較すると,上の料金です。仙台→金沢のような新幹線乗り継ぎ区間では,通常の運賃よりもわずかに安いだけ。JR東日本の新幹線では,スーパーモバトクが最強と言われますが,それは新幹線1区間の乗車で,往復割引が適用されない距離の場合だけです。

そうではない仙台・金沢往復のような場合では,スーパーモバトクの割引は大きくなく,運賃が通し計算されるダイナミックパックの方が安上がり。先ほどのホテル代を引いた比較では,17.6%引です。

モバイルSuica特急券は1席にスマホなど1台が必要

なお,モバイルSuica特急券の注意点は,1席に1台のモバイルSuicaが必要なことです。グループでの利用は全員が個別にアプリを操作する面倒があり,きっぷを先に渡す使い方ができません*5

結論:乗継ぎのある長い区間ほど有利

結局,お先にトクだ値もスーパーモバトクも,割引が大きいのは,新幹線の乗車が1区間の場合だけ。しかし,仙台→金沢などのルートは,大宮で新幹線を乗り継ぐため,それら割引きっぷを2枚別に買うと,乗車券分が分割されるデメリットで,割引の効果は小さくなります。

こうした乗り継ぎルートでも,ダイナミックパックでは,別の割引基準であるために,1割から2割相当の割引を確保。この区間でJR東日本が設定する割引では,(シニア会員専用の割引を除き)最安の料金設定です*6。それが乗車前日の18時まで買えるのは,急な旅行や出張ともに利用価値があるでしょう。

購入は,えきねっと>JR+宿泊ボタンから

ネットでの購入は,
えきねっとJR東日本国内ツアーJR+宿泊を組みあわせて探す
と進めばよいです。また,各所にある「ダイナミック・レールパック」というボタンからも行けます。

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そして,宿泊のホテルを決めた後,往復の新幹線の乗り継ぎパターンを,以下のように選べます。

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列車ごとプラス3900円でグリーン車に(通常期)

選択ボタンのように,列車ごとにグリーン車も選べます。この範囲では,一列車につきプラス3900円でグリーン席となるので,疲れやすいところで選ぶとよいでしょう。この金額は通常期のもので,シーズンと曜日により上下します*7

大宮など乗継ぎ駅で改札外へは出られない

このルートでは,東北新幹線から北陸新幹線へ大宮で乗り継ぐ列車で,適当な時間の組みあわせを選ぶことになります。乗り継ぎ列車はセットされていて,後の列車だけ遅らせることができません。

そのため,大宮で買物や人と会うといった用事で,降りて時間をとることができません。もともと,このツアーでは途中下車の制限があり,改札外へは出られません。かりに時間があく乗り継ぎでも,買物や人と会うのは,改札内になりますが。

大宮で途中下車や東京まで寄り道なら他の割引きっぷ

一方,仙台→金沢の通常のきっぷ(通しの乗車券)では,大宮で途中下車できるルールで,駅の外に出られます。その乗車券を大宮途中下車の状態としたまま,ついでに東京周辺まで,別のSuicaで乗ることも可能です。

トクだ値やモバトクも,仙台→大宮のきっぷと大宮→金沢のきっぷは別もので,大宮駅の外に出られます。そこから東京周辺まで,別のSuicaなどで,寄り道もできます。

なお,モバトクは,新幹線を乗り継ぐ大宮で,いったん新幹線改札を出て,新幹線改札外で次に乗るモバトクについて受取り操作をしないと,先に進めない仕様です。 

組めない例外:甲府・松本→金沢

以上のように,このツアーは,金沢まで乗り換え1回で済む駅から組めるのですが,現在のシステム上,組めない例外もあります。

需要があるところを実験してみると,以下のコースは無理でした。

  • 松本→しなの→長野→新幹線→金沢
  • 甲府→新宿→東京か大宮→新幹線→金沢
  • 甲府→松本→長野→金沢(乗り換え2回でルール上不可)

これら地域は,北陸まで近くて,手頃な料金で済むので,旅行の候補地になる範囲です。また,支店などの営業エリアが中部地方でくくられる企業もあるので,出張も想定できるのですが…

ただし,長野や松本,上諏訪,上越妙高などから金沢日帰りであれば、「えきねっと>パッケージツアーから探す」の方で,日帰りのシンプル金沢が1人分から発売されています。

そして,重箱の隅をつつく話ですが,JR東日本の新幹線駅である,上越妙高発も組めません。JR西日本との境界駅でもあり,上越妙高→金沢のツアーでは,JR東日本区間をまったく含まない割引となるからです。

新潟→金沢は高崎乗り換えになる仕様

もう一つの難点は,新潟・長岡→金沢のルートです。新潟発の金沢ツアーも,このダイナミックパックで買えます。しかし,かなり迂回して新幹線に乗り続ける
新潟→とき→高崎→はくたか→金沢
だけが選べます。通常のきっぷなら,割高なルートです。

距離や運賃では,日本海沿いを進む
新潟→しらゆき→上越妙高→はくたか→金沢
の方が有利で,北陸新幹線の金沢開業以前は,直通列車もありました。在来線部分が遅くても,距離が圧倒的に短いため,しらゆき(1日4往復)のある時間帯では,現在もこのルートが早く着きます。

しかし,距離が短くて安い上越妙高乗り換えは,ダイナミックパックでは買えません。

東武日光・鬼怒川温泉→金沢も買える

こういう自由に組めるツアーがあると,趣味的には,レアものを考えたくなるところ。試した中で,趣味人に受けそうなルートは,

でした。つまり,東武からJRへ乗り入れる特急で,大宮乗換の北陸新幹線沿線までが出せます。より需要が多そうな軽井沢・長野行も可能。もちろん,宇都宮→大宮→金沢も買えます。

ただし,難点があって,このツアーを発券できる指定席券売機は,JR東日本の駅だけ。東武日光などの東武の駅にはありません。

それで,日光や鬼怒川温泉周辺から出発する場合には,東武ではなく,乗らないJRの日光駅に事前に行くか,きっぷを宅配で受け取ることになります*8。とはいえ,日光や鬼怒川温泉発だけでなく,栃木県からの北陸ツアーは旅行会社にはなく,一定の利用価値はありそうです。

金沢→東武日光・鬼怒川温泉は買えない

むしろ,この逆ルート,北陸から日光・鬼怒川温泉への方が,発地の人口対着地の観光資源の関係が良好で,ツアーの需要は多いでしょう。

北陸新幹線や上越新幹線から日光・鬼怒川温泉へは,上野→銀座線→浅草乗り換えか,→日比谷線→北千住乗り換えが本数が多く,案内されやすいところ。この方面の東武特急は春日部も停まるので,大宮から春日部へ東武野田線でショートカットもできますが,有効かはダイヤ次第です。

それに対し,この大宮乗り換えの東武乗り入れ特急を使うと,乗り換えも1回だけ。約1時間早く着け,費用も節約できます*9

しかし,このツアーはJR東日本のもので,JR西日本側からの往復は設定されていません。

買える長野→東武日光・鬼怒川温泉に潜在需要?!

この点で,大宮乗り換えで東武日光・鬼怒川温泉へのツアーは,通して片道3時間ほどになる,長野など信越エリア発に,潜在需要がありそうです。

さいわい,ダイナミックパックでは,JR東日本の駅からなら,このルートの設定があります。たとえば,長野→大宮→東武日光・鬼怒川温泉は購入可能です。

こうしてみると,ダイナミックパックは,JR東日本エリア発で,メジャーでないルートでの利用に妙味がありそうです。

*1:よくあるツアーのように,このツアーで東京発を買うと,乗車券が有効なのは東京都区内から。横浜からSuicaで乗車して,東京駅の新幹線乗り換え改札でそのツアーのきっぷを投入すると,精算されるのは,横浜―蒲田(東京都区内にある横浜からの最寄駅)間の運賃で,それはSuicaで216円,往復432円です。
 あらかじめ横浜発を買っておけば,東京発の料金プラス往復200円で,横浜から乗れるので,232円お得。東京都区内まで,より長い距離の,大船,千葉,立川,八王子などからだと,さらにお得です。

*2:往復割引適用で1割引,10円未満の端数切り捨てとなります。

*3:大宮―金沢間は,お先にトクだ値の発売がなく,JR東日本のきっぷでは,トクだ値の12220円(通常期)が最安です。
 ただし,JR西日本のJ-WESTカード会員ならば,e早特1が最安で11660円(通常期)。前日23時30分まで購入でき,大宮駅の新幹線乗り換え改札の券売機で受け取れます。
 このカードのベーシックタイプは,利用があれば年会費無料。東海道・山陽新幹線も乗るなら,エクスプレス予約もできるタイプにすると,年会費はJR東海発行のものと同額です。

*4:モバイルSuica特急券は,1つの端末に,1枚の特急券の受取しかできません。その特急券を,新幹線改札の入場から出場までで使用する仕組みです。
 そのため,新幹線を大宮で乗り換える場合,次に乗る新幹線の特急券を端末に受け取るには,そこまで乗った特急券を使い終えるために,大宮駅の新幹線乗り換え改札を一度出場する必要があります。
 それから,スマホで次に乗る特急券を受取る操作をした後,同じ改札をもう一度入場することになります。

*5:モバイルSuica特急券をグループで利用するなら,席の分だけ各自がスマホなどを用意して,各アプリで出てくる座席表から,隣り合う席を選ぶ面倒があります。その間に希望の席が埋まれば,やり直しで,混雑時は大変です。
 また,変更や払戻し操作も,個別に行うことになります。とくに減員で,席の真ん中の人がキャンセルする場合,その席に他の客が入らないように,詰めて席を取り直すには,やりとりが面倒です。

*6:JR東日本には,50歳から年会費を払って加入できる大人の休日倶楽部があって,年齢と条件によって5%,20%,30%割引になります。
 ただし,割引適用はJR東日本区間のみで,このルートでは,仙台―上越妙高で切られます。そこから先のJR西日本区間・上越妙高―金沢には,おとなびという,同様の割引制度があります。
 しかし,大人の休日倶楽部・おとなびとも,自社駅のみでの販売です。そこで,両社の割引を同時に適用したきっぷは買えません。

*7:グリーン車の指定席料金は通年同一料金ですが,基準となる普通車指定席の料金が,通常期・閑散期・繁忙期に応じて上下するためです。

*8:宅配の場合,購入期限が前日18時よりも前倒しされ,5日前の23時40分となります。

*9:浅草―東武日光は最速1時間48分,大宮―東武日光はこの乗り入れ特急で1時間26分。大宮から上野は新幹線でも20分かかるので,大宮から東武へ直通する特急を利用すれば,ほぼこの往復分と地下鉄の乗り換え時間をカットできます。