コロナ対応:JR東日本車両のWi-Fiで,dマガジンなどが読めるnoriconサービスですが,2021年3月30日で、いったん休止となりました。Wi-Fi接続自体は,引き続き,ほぼ全線で使えます。
北陸新幹線では,2019年10月までに,全編成に無料Wi-Fiが装備されました。プレスリリースのように,車内でメールアドレスを登録すれば,誰でも使えます。
このWi-Fiは,車外の携帯の回線を車内でWi-Fiルーターに接続したもので,使えるのは携帯がつながる区間と同じです。その区間は,2020年3月31日に東京-金沢の全線をカバーしました。これ以降,Wi-Fiも全線で利用可能です。
ただし,客席の電源が瞬断する場所では,Wi-Fiも切断され再起動待ちとなる場合があります。
Wi-Fiの表示:車内ドア左横にステッカー
1編成目の登場は2018年7月8日で,全編成の装備は2019年10月に完了しています*1。Wi-Fiが使える目印として,車内からデッキに出るドアの左横に,写真のステッカーがあります。
北陸新幹線には,JR東日本の車両とJR西日本の車両があって,Wi-Fiは別の設定です。
JR東日本E7系 | JR西日本W7系 |
接続はブラウザで,駅と同じ画面から
このWi-Fiサービスでは,指定のSSID(JR-EAST_FREE_Wi-FiかJR-WEST_FREE_Wi-Fi)に接続してブラウザを開くと,利用登録の画面に移ります。登録を済ませると,ネット接続ができます。
下は,JR東日本車両の例で,JR西日本車両には別の接続画面があります。
この仕組みは,JR東日本の主要駅(東京・新宿など)の無料Wi-Fiと同じ。JR西日本の車両では,JR西日本の主要駅(大阪・金沢など)と同じです。
つながるのは車両の所属会社で,境界を超えても使える
つながるのは車両の所属会社(JR東日本か西日本)で,場所ではありません。たとえば,JR東日本の車両E7系では,金沢などJR西日本区間でも,JR-EAST_FREE_Wi-Fiに接続します。
乗車後に接続して初回登録をすれば,(3時間以内なら)降りる駅まで操作は不要。2週間以内なら,前のアドレスの登録が残っていて,入力なく接続できます。
ただし,客席の電源が瞬断する地点では,ルーターの電源も落ちて,Wi-Fiの電波も止まり,再起動待ちとなる場合があります。
アプリJapan Connected-free Wi-Fiからも
スマホでは,全国の交通機関や公共施設などの無料Wi-Fi接続をまとめたアプリ,Japan Connected-free Wi-Fiがあります。そこからの接続も可能で,どの接続先にも使えて便利です。
このアプリでは,金沢駅のバス乗り場や21世紀美術館,ひがし・にし茶屋街,長町武家屋敷周辺で使えるKanazawa_Free_Wi-Fi(運営:金沢市)にも接続できます。
JR東日本車両ではdマガジンなどが読める
北陸新幹線のうちJR東日本の車両では,コンテンツサービスnoriconが用意されています。dマガジン,めちゃコミック,まんが王国,FODなどの多くが無料で楽しめます。
以下の画面が出なかったら再接続を
JR東日本の車両では,ブラウザでWi-Fiに接続後,下の左のようなnoriconの画面に移ります。他の接続方法で,下の画面が出なかった場合,Wi-Fiをいったん切断して,ブラウザでの接続からやり直すと,そこに来ます。
車内から接続されるこのURLは,現在のところ下記のようです。
http://www.wifi-cloud.jp/redirect/jr-east_noricon2/ja/welcome.html
dマガジンはアプリのダウンロードを
dマガジンを読むには,スマホに専用のアプリ(Android,iPhone)が必要です。乗車前にダウンロードしておくと,時間の節約になるでしょう。すると,JR東日本車両のWi-Fiに接続している間だけ,無料で読めます。
ここには,メジャーな週刊誌やビジネス・ファッション・スポーツなどの専門誌が一通りあるので,トンネルが続く区間も飽きません。
dマガジンには金沢のガイドブックもある
dマガジンは,旅先のガイドも揃えています。定番の「ことりっぷ金沢 能登」や,金沢の観光スポットや名店もよく掲載される「婦人画報」の記事などです。
こうしたコンテンツは,dマガジンで,以下のように進むと見られます。ただし,新幹線を降りて,このWi-Fiから外れると読めなくなるのにご注意を。
ムック増刊>旅行ガイド | 記事から選ぶ>お出かけ・旅行 |
コンテンツサービスは東日本のE7系だけ
以上のサービスはJR東日本のE7系だけで,JR西日本のW7系にはありません。
北陸新幹線は,E7系14編成とW7系9編成で運行されています(2020年8月現在)。
どちらの車両かは,車内ドア左横のステッカーや,Wi-Fi接続時のSSIDでわかります。
E7系かW7系かは,JR東日本アプリでもわかる
このほか,JR東日本アプリ(Android,iPhone)でも確認できます。
アプリを開いて,列車走行位置をタップ,北陸新幹線を選ぶと,東京-金沢の全列車の位置と遅れがわかります。
さらに,各列車の詳細ボタンをタップすると,下のような編成の内容と,この先の到着駅の定刻と到着予定時刻(遅れ考慮)が現れます。
E7系 | W7系 | 表示なし: E7系新潟所属車両 |
この編成図の右上にE7系,W7系の表示があります。表示がないのは,新潟新幹線車両センターから一時的に貸し出されている車両で,E7系です*2。新潟所属車両でも,noricon(dマガジンなど)が利用できます。
E7とW7の割当は運用変更がない限り毎日同じ
なお,E7系はJR東日本の長野か新潟所属,W7系はJR西日本の白山(金沢近郊)所属で,数日かけて複数の営業列車と回送列車をこなし,所属に戻る運用です*3
それで,ある列車がE7系かW7系かは,(臨時列車の設定や異常時などの運用変更がない限り)いつも同じです。
乗る列車がE7かW7かは,その前日までの走行時間帯に,その編成をJR東日本アプリでチェックすれば,(その後で運用変更がない限り)それと同じ方(E7系かW7系)と判定できます。
Wi-Fiがつながる区間:携帯電話と同じく全線へ
北陸新幹線の無料Wi-Fiは,車外の通信に携帯電話の電波を利用しています。トンネル内での携帯の基地局工事は,2020年3月末に全区間で完了しました。この経過は,総務省北陸総合通信局が,下図にまとめています。
北陸新幹線は携帯がつながらないと言われたのも,もう昔話。今後は,どこでも安心して携帯がつながります。
携帯はつながるが,Wi-Fiは切れる場所も
ただし,携帯は連続して通信できるのに,このWi-Fiでは接続が切れる場面もあります。Wi-Fiだけ切れてしまう場所は,各席1個付いている電源が,瞬間的に落ちるところと同じです。
それは,客席に1個ずつある電源が瞬断するところ
それは,車両への送電系統が切替わる区間があるところ(変電所や
車内に設置されたWi-Fiルーターも,これと同じ電源のために,いったん停止し,再起動に時間がかかります。
音感のいい方では,東海道も含め全国の新幹線に乗ると,エアコンの送風の音が,一旦弱まったのに,うなり音とともに,すぐ回復する地点に気付くでしょう。それは,送電系統が変わるところで,エアコンが一瞬切れているのです。
ただし,車内の照明等は,バッテリーを介して,消えない対策がされています。
このWi-Fiは,切れてもよい使い方が安全
変電所や饋電区分所を事前に察知するのは無理ですから,このWi-Fiは,ルーターが落ちて,再起動しても構わない使い方が安全です。
たとえば,通信の途絶が損失に直結する業務,回復が不可能なファイル操作などは,切断のリスクが低い携帯の回線を直接使うことをおすすめします。
株式や為替など金融商品の取引や,オンラインゲームなどもその例でしょう。
パケット代節約やテザリングの課金回避なら
このWi-Fiは,そういう切断と再起動待ちがあるのですが,切断のリスクを許容できる調べ物や読み物なら,パケット代節約というメリットは活かせます。まとめてダウンロードできる動画や音楽もそうでしょう。
また,ふだんはWi-Fi接続で使っているPCやタブレットで,携帯のテザリングが有料の場合には,移動中の通信だけのために,テザリング・オプションに課金したくないこともあるでしょう。そんな場合にも,この無料Wi-Fiが役立ちます。
4Gより遅いWi-Fi:車外の4Gを車内で分け合う
では,速さはどうでしょうか。建物にあるWi-Fiなら,4G回線より速いことが期待されます。今どき,上流は光回線だからです。
しかし,このWi-Fiの上流の回線は,まさに携帯の4Gです。その回線を車内の乗客で分け合うので,通信速度は当然遅くなります。
たとえば,見通しのよい平野を高速走行中,スマホのRBB SPEED TESTで通信速度を測定すると,以下の通りです。左がWi-Fi,右がLTE(4G)です。
高速走行中は基地局との位置関係がめまぐるしく変わるため,通信速度も大きく変動を続けます。上の結果は,比較的条件のよい区間の一例に過ぎませんが,全区間でも,このWi-FiがLTEの4Gよりも,かなり遅くなる傾向があります。
なお,車内のスマホよりも有利な車外に,4G回線をとらえるアンテナがあれば,それを分けたとしても,Wi-Fiの通信速度は向上しそうです。しかし,このWi-Fiは,後で搭載されたものであり,編成の車外に特別なアンテナは見当たりません。
Wi-Fiは,速度や信頼性よりローコストを求める方に
したがって,通信の速度面でも,このWi-Fiよりも,スマホなどで4G回線をそのまま受けるのが得策。SIMのないPCやタブレットでも,複数端末を同時接続しないなら,スマホのテザリングの方が速いといえます。
それなら,何のためのWi-Fiかというところですが,冒頭のプレスリリースにあるように,もともとのターゲットは,日本の携帯を持たない外国人観光客なのでした。
日本からの海外旅行でも困るように,携帯の契約国外でのローミング利用は著しく高額で,Wi-Fi接続でないと安心して使えないからです。
結局,このWi-Fiのメリットは,パケット代が気になる場合と,一部車両での無料コンテンツ利用と割り切った方が,ストレスのない使い方ができるでしょう。
*1:北陸新幹線には,ほぼ同じ仕様のJR東日本とJR西日本の車両があって,Wi-Fi対応工事は両社で進められました。JR東日本の車両E7系には2019年5月に完備,JR西日本の車両W7系には2019年9月に完備の計画でした。
*2:北陸新幹線では,2019年10月12日夜から13日にかけての台風19号による大雨で,長野新幹線車両センターが浸水。そこに留置されていた10編成は,すべて廃車となりました。
被害のなかった白山総合車両所(金沢市近郊・石川県白山市)と東京新幹線車両センター(北区田端)に留置されていた編成だけでは不足するため,現在は,上越新幹線の車両基地である新潟新幹線車両センター所属の車両が貸し出されています。これは,一時的な運用なので,アプリにE7系の表示が入りません。
*3:運用の一部では,JR東日本区間で完結するあさま(東京-長野)にもJR西日本編成が充当され,JR西日本区間で完結するつるぎ(金沢-富山)にもJR東日本編成が充当されます。
たとえば,東京から金沢まで運行した編成を,東京に折り返すまで,時間を空けた方がよい場合があります。理由は,すぐ折り返せる時間帯が,行きと同じ需要とは限らないからです。具体的には,東京8~9時台発の金沢行は,平日でも毎時2本の需要があります。それらをすぐ折り返すと,金沢11~12時台発になり,平日なら毎時1本で十分です。需要に合わせて折り返しの時間を長くとるなら,金沢駅で止めておくよりは,金沢から富山までの短区間を往復させた後で,東京に返した方が効率が上がります。同じことは,東京の折り返しでも起こります。
そういう運用があると,一社で完結する区間でも,他社の車両が充当されることになります。それが,もともと需要の少ない金沢-富山区間運行のつるぎでも,短い編成とせず,共通の編成を用いる理由でもあります。需要ごとに編成を複数用意すると,運用の自由度がかえって落ちるからです。
*4:電車への送電系統の切り替えで,原始的な方法は,切替わる区間に,架線に送電のない「デッドセクション」を挟むことでした。日本の鉄道に存在するデッドセクションをまとめたサイト「日本のデッドセクション」によれば,新幹線では,送電のない区間を挟む古い方法ではなく,車両の通過時に,地上の設備の側で,きわめて短い時間で別系統の送電に切替えていく方法がとられています。
北陸新幹線(東京-金沢)では,電力会社の管轄と,送電される交流の周波数や位相の違いに応じて,こうした切替セクションが20か所存在します(東京-高崎の他新幹線と重複区間を含む)。たとえば,50Hzの東京電力から60Hzの中部電力へは,軽井沢-佐久平間にある新軽井沢饋電区分所で切り替わり,そこで客席の電源も一瞬落ちて,Wi-Fiは再起動待ちとなります。