北陸新幹線で行く,はじめての金沢

お庭,お菓子,お魚,お酒が揃う城下町をまわるため,金沢出身・東京在住者が往復しながらヒントを書いていきます。

金沢駅から車なしで日本海を見たい:ホテル上階のレストランか,各駅21分の小舞子駅徒歩6分に海岸

はじめて日本海側へ行くので,日本海を見たいという声をたまに聞きます。残念ながら,金沢駅から周遊バスなどで回る街中では,海が見えません。車がないときに,日本海が見たかったらどうするか,簡単な順に。

ホテル日航金沢のラ・プラージュと桃李

一番スマートなのは,金沢駅兼六園口を出て正面右側の,このホテル。高さ制限が厳しくなる前に建てられたこのビルだけ,周辺よりも高く,高層階なら日本海まで見通せます。

宿泊しないなら,高層階海側のレストランが候補で,30階のラ・プラージュか,29階の桃李の一部です。両方とも,ランチかディナーかの選択で,基本はコース料理。ラ・プラージュの窓側のテーブルからは,こんな感じで日本海の海岸線を遠望できます。

ホテル日航金沢30階、ラ・プラージュからの日本海の眺め

この向きは西北西で,日本海に沈む夕陽が,夏のディナーでは期待できます。春・秋は早い時間だけ,冬場だと夜景です。

ホテル日航金沢30階ラ・プラージュのディナーからは日本海への日没が見える

ただし,北陸なので曇りや雨,雪も多く,夕陽が見えたまま沈むかは,天候次第。窓側でないテーブルもあるので,予約時にリクエストと確認を。

真正面の海岸線で,少しくぼんでいるのが金沢港。甘えびや冬にはずわいがに,香箱がになどが水揚げされます。ずわいがになら,金沢港の青タグが付くところ。見えている場所で揚がるなら,おいしいのは当然です。

宿泊の場合も,海側(金沢港側)をリクエストすれば,この向きの眺望です。街中の兼六園・金沢城側とは反対側で,希望の通りやすい側。もちろん,宿泊プランと混雑状況によります。

カフェ・ド・レヴェリー

金沢港は,古くからある天然の金石かないわ港と大野港を拡張する形で作られたもので,小型漁船は今でも,金石港にも出入りします。

この金石までは,近江町市場のある武蔵ヶ辻バス停や,金沢駅金沢港口徒歩6分ほどの中橋バス停から,金石・大野方面行のバスが毎時4本ほど。武蔵ヶ辻からは約30分,中橋からは約25分で到着します。ダイヤは不規則で,あらかじめ時刻検索を。

時刻・運賃検索 - 発着指定検索|北陸鉄道バス

金石バス停から徒歩6分で,このカフェ・ド・レヴェリー。金石漁港の隣,石川県漁協金沢支所の並びです。

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写真奥が,ふだんは甘えびなどや,漁期には香箱がにも揚がる金石漁港。日本海まで漁船が出入りしますが,ここはまだ犀川の河口。それで,Café de Rivièreです。倉庫をリノベートした,独特の外観でも知られています。なお,日・月定休(祝日は営業),営業時間も変則的で,それはお店のホームページで確認を。

周囲の観光スポット(醤油蔵が,糀の「手湯」を設けているヤマト糀パークからくり記念館銭屋五兵衛記念館など)とは,歩くと距離があって,客層は地元がほとんどです。観光では,車のある人がたまに,という感じです。

金沢駅から最寄りの砂浜は内灘だが,内灘駅徒歩約20分

他に海が見えるといえば,石川県庁19階展望ロビーや内灘海岸が候補です。県庁展望ロビーは無料で,金沢駅金沢港口(西口)から県庁前方面のバスで15分ほど。最初の写真で,金沢港までの道路の間で,もっとも高いビルがそうです。眺望は,駅前のホテルより海に近づいたもの。展望フロアには喫茶と軽食の店もありますが,お店は街中を向いています。

砂浜で,金沢駅から最短距離なのは,内灘海岸です。ただし,最寄りの北陸鉄道内灘駅から海岸まではバスがなく,20分ほど歩く必要があります。車があれば,そこが金沢駅から最短の砂浜です。

金沢から最速21分の小舞子駅徒歩6分で砂浜

では,金沢周辺で,駅から徒歩で最も近い日本海の砂浜はどこかというと,金沢駅から小松方面行で6駅目の小舞子駅です。毎時約2本の各駅停車で,特急待避がなければ21分です。小舞子駅から徒歩6分で,小舞子海水浴場に着きます。

北陸本線の日中は特急が毎時2~3本で,特急待避も多いところ。この列車でも,美川駅でサンダーバード大阪行の通過を待ちます。

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この光景も,2022年度まで。北陸新幹線敦賀延伸後は,このサンダーバードは,敦賀止まりで,ここには来ない可能性が大です。この駅も,JR西日本からIRいしかわ鉄道に変わるはずです。

各駅よりも通過特急が多い無人駅・小舞子

着いた小舞子駅には,駅名標の奥に,微妙な時代感の大看板があります。

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ネットで画像が見つかる昔の看板よりも,現代風に描き換えられていて,自転車をルーフキャリアに乗せた車などが描かれています。自転車は後の伏線ですが,この時点ではわかりません。なお,看板にあるキャンプ場は公園に変わり,キャンプはできなくなっています。

駅は対面式のホームで,跨線橋が渡っています。両ホームともに出入口があって,下りホーム(金沢行)側の出入り口が,小舞子海岸側。SuicaやICOCAが利用可能で,ゲートのない簡易型の自動改札機が置かれています。

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無人駅なので,改札はこれだけ。この駅までの乗車券の場合は,横にある回収箱に入れます。途中下車なら,そのまま降ります。

なお,海側の出入口には券売機がありません。乗車の際,Suicaなどがなければ,跨線橋を渡った反対側ホームの出入口にある券売機を使う仕様です。

駅前はDICの工場のほかに,お店はない

金沢からの電車が着く上りホーム側の出口には,少し離れて郵便局と信用金庫がありますが,コンビニなどはありません。他は飲み物の自販機だけで,買い物は乗車前に。

海岸に行くには,金沢行の下りホーム側出口から,DIC北陸工場に掲げられた案内通り。

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この道路を写真右へ,3分ほど歩いた小舞子の信号を海方向へ左折する,簡単なルートです。

飛び出し坊や,ではなく,飛び出し女子

その間の住宅街には,関西の方ならツボにはまる逸品が。

飛び出し女子(飛び出し坊やの女子版で,北陸本線小舞子駅から小舞子海岸側へ徒歩約3分)

みうらじゅん氏が名付けた「飛び出し坊や」の女の子バージョンが,なぜかここに2体。滋賀県に集中して見られる,飛び出す子どもの警告看板?です。しかも,ネットで写真を検索しても,あまり出てこない,女子キャラでした。

参勤交代サブルートの腰掛石は…

この後は,海岸まで一本道です。海に向かう途中の左手に,元キャンプ場があって,このあたりで駅から徒歩5分。加賀藩で最後から二番目の藩主・前田斉泰なりやすが,参勤交代の帰り,江戸から金沢までの道中,腰掛けた石との記念碑です。斉泰は,兼六園の霞ヶ池を完成させ,隣接する奥方御殿・成巽閣せいそんかくを建てたことでも知られています。

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しかし,説明によれば,肝心の腰掛石は所在不明で,右の石碑だけが残っているとのこと!?

ところで,この場所は,東京から北陸新幹線で金沢に着いて,その方向へ6駅先。どうして参勤交代帰りの江戸から金沢への道中でここを通るのか,疑問もありそう。たしかに,江戸時代の江戸・北陸間のメインルートは北国街道で,それは現在の北陸新幹線におおむね沿っています。

この間,新潟・富山県境に近い親不知などは,崖が海岸に迫る難所。そうした難所が荒天の場合には,遠回りでも難所の少ない,東海道回り,中山道鳥居本宿から北陸道米原へ分岐するルートも選ばれていました。現在では,東海道新幹線米原乗り換え,福井経由のルートです。

この碑の近くには,松尾芭蕉の句碑「濡れて行くや 人もをかしき 雨の萩」もあります。「おくのほそ道」の旅路,小松の歓生亭で詠まれた句。松尾芭蕉は,金沢からこの周辺を通り小松へと歩いていますが,句碑が小松ではなく,その手前のここにあるのは今一つ謎です。

この元キャンプ場を過ぎると,北陸自動車道をくぐるアプローチ。奥に海が見えてきます。

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北陸道をくぐり,海岸へ

アンダーパスの奥に見えていたのは,海岸の石碑でした。駅からここまで,徒歩6分。消波ブロックが冬の波の厳しさを物語る,日本海の海岸です。

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よく晴れていて,左手には福井の東尋坊方向が望めます。そして,釣り人が一人。

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ひたすらのどかな光景です。この日は平日で,他には,車で来てバーベキューらしき食事を試みるカップルが1組だけ。すぐ前の駐車場はただで,好きなだけいられます。一方,電車で来た人は,駅からの往復,誰もいませんでした。

手取川の河口に近く,ところどころに石も残る海岸線で,裸足では厳しい部分もあります。あいにく,適当なベンチはなく,折りたたみ椅子かビニールシートがあれば寛げる感じ。

シャワーのある建物などは,夏のみの営業。それ以外の時期は,飲み物の自販機以外,何もありません。やはり,車でいろいろ持ち込むことで,楽しめる場所です。

それがたまたま,駅徒歩6分なわけで,車がなくても日本海の砂浜に出たいなら,穴場といえます。

100km以上続く日本海沿いの自転車道

ところで,海岸線と並行して,砂浜にずっと舗装路があります。現場に標識がなく,帰ってから調べての説明ですが,石川県の日本海沿いに118kmも続く自転車道の一部。この部分は愛称が加賀海浜自転車道(25km),正式名称が金沢小松自転車道です。後で書く,伊集院光氏からは,同じような名前を2つも付けるから,わかりにくくなる,といじられています。

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この先,金沢市の健民海浜公園まで,20kmほどこの調子で続きます。その公園とは,先ほどのカフェ・ド・レヴェリーから犀川を挟んだ,すぐそば。ここから,先ほどのカフェまで,自転車なら約1時間で走れるはずです。はずというのは,途中がどうなっているのか,ネットに完走のレビューがほとんどありません。

伊集院光氏が走り,「深夜の馬鹿力」で語る

この自転車道は,サイクリングが趣味の伊集院光氏が走破を試みたことが,TBSラジオ「深夜の馬鹿力」で語られています。その動機は,観光でよく紹介される,日本で唯一自動車で走れる砂浜・千里浜なぎさドライブウエイを調べたとき,自転車道もあることに気づいたからとのこと。それも,加賀市・大聖寺駅前のビジネスホテルと能登ロイヤルホテル(トークからの推定)に2泊する,本格的なツーリングでした。

当然ながら,ラジオなので,さんざんネタにされています。まず,地元の人に聞いてもどこにあるかわからない。そして,舗装が突然不良になるところがあり,実際にパンク。その修理のための自転車屋で…,と話が続きます。

現場を見るに,なるほどと納得。駅から自転車道まで特別な標識なし。自転車道にも,この先どこへ行くのか,表示がありません。これは,わかった人しか進めません。

終端の金沢でも,観光案内所にはリーフレットなどがなく,観光向けサイトやガイド本でも,まず扱われません。そういうわけで,走るなら,上の公式サイトの予習,スマホの位置情報と路面の確認を。

雨と雷の天気予報に注意

日没まで,好きなだけいられる海岸ですが,リスクは雨,雪,雷です。駅には屋根があるものの,その先,雨宿りできるところはゼロ。トイレは,先ほどの元キャンプ場と,海岸に1箇所ずつです。

天気の変わりやすい北陸では,天気予報のチェックを入念に。雨の予報なら無理をせず,雷なら冗談抜きで即待避です。

東京都区内からは3駅先の小松まで同額,観光スポットも

なお,東京都区内からの乗車券は,金沢まで7340円,小舞子まで7560円。そして,金沢から小舞子までの運賃は320円です。小舞子までの乗車券では,金沢で途中下車できるので,金沢観光のついででも,通しで買うのが得です。

東京都区内からは,7560円でこの3駅先の小松まで同額です。小松まで買っておけば,金沢と小舞子で途中下車した後,小松観光もできます。

金沢から最短で海沿いの旅館は和倉温泉

最後に,ずっと日本海を眺めていたいのなら,電車で行ける海沿いの旅館が候補です。その条件で金沢から最短なのは,能登半島の和倉温泉。特急で約1時間の和倉温泉駅から,大きな旅館なら送迎があって,車は不要です。

和倉温泉は温泉街が七尾湾に面していて,海沿いに建つ旅館がほとんどですが,海側の部屋は限られていて,眺望指定は重要です。さらに,地図を確認すると,多くの旅館は海が東向きで,夕日が見えるのは,少し離れたところだけ。一例を挙げれば多田屋で,こんな感じ。

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七尾湾に日が沈む頃で,客室付の露天風呂がある部屋では,こうして海がいつまでも眺められます。一方,温泉街中心の東向きの旅館なら,朝日が期待できます。

海の観光メインなら,お隣の富山に多様なスポット

なお,観光で日本海をメインにするなら,お隣富山県の方が,駅から近いところに,多様な見どころが揃います。ひみ番屋街海王丸パーク,北前船の拠点だった港町・岩瀬などです。

実は金沢も,先ほどの金石漁港が北前船の一大拠点でした。ところが,それで莫大な利益をあげた加賀藩の御用商人・銭屋五兵衛は,手がけた干拓事業などで不正の疑いをかけられます。そして,藩に投獄され,そのまま獄死.お家断絶という結末です。

残った旧家の一部は現在,銭屋五兵衛記念館になっています。金沢は,幸運なことに太平洋戦争の空襲をまったく受けず,長町武家屋敷や,ひがし茶屋街などに古くは江戸時代の木造建築が残るのですが,北前船の港に廻船問屋の街並みがほとんど残っていないのは,そういう事情もあります。