北陸新幹線で行く,はじめての金沢

お庭,お菓子,お魚,お酒が揃う城下町をまわるため,金沢出身・東京在住者が往復しながらヒントを書いていきます。

安いまま満室になるホテルいくつかと,割安感のある羽田・小松便のパッケージツアー

金沢のホテルの混雑や値上がり傾向ですが,解消にはホテルの新規開業が本質的と,以前書きました。

北陸全般に,真冬は観光客が大きく落ち込みます。期待されるAKB(甘えび,かに,ぶり)は冬が一番おいしいのですが,積雪を過剰に心配されるからです。混雑や価格の問題も,冬の到来とともに,ひとまずは落ち着くのでしょう。それでも混雑する特定の日や,来年以降の対策を書いてみます。

ネットの予約サイトで直前に検索して出てくる部屋は,高すぎて売れ残ったもので,マーケット全体を反映していない

金沢のホテル稼働率は,現在,恒常的に8割を超えているようです。そこで,ネット予約サイトを直前に検索して出てくる客室は,価格が高すぎて売れ残ったものに偏ります。すでに予約された部屋は,検索結果に現れないからです。

予約済みの部屋を含めた客室料金全体の分布は,日付未定で各ホテルを検索して,さらにカレンダー表示に直さないとわかりません。そのとき,売れた部屋の価格がわからないサイトも結構あります。一方で,たとえばじゃらんでは,すでに予約済みの客室料金も掲載したカレンダー表示を提供しています。

このカレンダー表示によって,同じ部屋の,日による価格変動がわかります。1か月先の空いている平日がいくらなのか見ておくと,過度な期待によるがっかり感も減ります。

価格を大きく変動させるホテルは,シティホテルの需要も取り込める一部のビジネスホテル

価格を大きく変動させる戦略のホテルは,泊まるまで設備やアメニティが想像しにくく,シティホテルのようにも売れるビジネスホテルに多いようです。

また,需要に応じて価格の上下を誘導する機能がシステム側にあって,現場に価格設定の権限があまりないホテルチェーンも,極端に変動する価格付けをしがちです。価格を上げているのは人ではなく,システムに仕込まれたアルゴリズムという場合もあります。

さらに,全国に展開していて金沢の店舗のウェイトが小さければ,そのときに稼げる店で稼いで,需要が減った地域からは速やかに撤退という戦略も否定できません。

価格をあまり変動させないビジネスホテルも

一方,価格をあまり変動させない,潔い戦略のビジネスホテルも,もちろんあります。いずれも,早々に満室になり,予約サイトから消えています。

1.設備がよく知られている東横インなど

たとえば,設備や部屋の水準が全国同様で,シティホテルのような売り方を考えない東横インは,金沢に2店舗。金沢駅兼六園口から南側へ徒歩6分の東横イン金沢駅東口と繁華街の東横イン金沢兼六園香林坊ともに,シングルを5000円程度で早々に売り切っています。

わかりきった設備で宿泊客が過大な期待をもたないため,混雑時もシティホテルに連れ高せず,予約がとれた宿泊客には好都合。サービスは期待を含むものですから,幻想がない方がコスパはよくなります。ただし空室があればですが。

B&Bという割り切りで,夜の食事がまったくないのも,金沢の両店ではあまり困りません。金沢駅東口の方は,隣に24時間営業のファミレス・ガスト金沢駅前店があります。全国チェーンでない懐石料理店や割烹,居酒屋も徒歩圏に。香林坊の方は深夜から未明まで営業する飲食店街・片町が徒歩圏です。それらも満室になりやすい理由の一つでしょう。

2.開業が古く独立経営の金沢シティホテルやガーデンホテル金沢など

金沢駅兼六園口から同じく南側へ徒歩12分の金沢シティホテルも,なんとか駅徒歩圏なのに,価格を大きく上げない例。平日シングル4300円からの表示のままで,早くに満室になっています。こちらは,開業当時はレストランのほかバンケットもあったシティホテルが,リニューアルでビジネスホテルのチェーンに入ったものです。過去のレストランやバンケットは,居酒屋と割烹の中間形態の店での朝夕食と,大浴場に転換しています。

経営はこの一軒で独立。1982年開業,2006年のリニューアルで,設備投資資金がかなり回収されていることが,値上げをしてまで利益を追求しない理由の一つでしょう。またホテル名がナショナル・ブランドではないのも割安の要因。一部客室にマッサージチェアがあるのも,独立経営ならではです。

同様に,駅兼六園口正面右角のガーデンホテル金沢も,古参の独立系。平日シングル5900円からと安いまま売り切る戦略で,1か月先あたりまで見事に埋まっています。こちらも1983年開業,2002年のリニューアルと,設備投資資金はかなり回収されている状態と見ます。なお,三井ガーデンホテルズとは無関係で,名誉のために書いておくと,三井ガーデンホテルの1号店よりも早い開業です。

両店に共通するのは,他地域の店舗がなく,金沢の一店での永続的な経営を考える立場。より上位の組織の意向を受けず,「需要が減れば金沢から撤退」などという出口戦略がとれないのが,長期的視野に立った価格設定を続ける決め手と思われます。

網羅はできませんが,ホテル名や経営母体が変わらずに業歴が長いのは,それで行き詰まらなかったことの証し。地域で外されない信用が築かれているからで,その分のハードウェアの経過に納得できれば,お値打ちです。

駅近ビジネスホテルなら兼六園口(東口)南下に割安感

駅近ビジネスホテルの価格分布では,兼六園口の北側が高めです。駅のバス乗り場に近いことや,夜10時30分ラストオーダーまで20店のレストランフロアが営業しているイオン系の金沢フォーラスが徒歩数分になるからです。夜遅くに着く場合は,それが安心感。また,都ホテル周辺や堀川町交差点周辺にも,多様な価格帯の飲食店が集積しています。

逆方向の南側は,フォーラスやバス乗り場から離れるので,相対的に割安。駅近ビジホの価格分布は,地図から受ける周辺施設の充実度の印象と一致しています。

とはいえ,金沢駅から南に歩く東横イン金沢駅東口の隣には24時間営業のガスト金沢駅前店があります。金沢シティホテル南隣には,駐車場のある大きめのローソンがあります。いつも通りの夜でよいなら,とくに不満のない立地。

また,全国チェーンではなく地物の魚がある飲食店は,南側にも複数あります。懐石料理なら,以前ブログに書いた町家懐石六花も,両ホテルから徒歩2分ほど。

さらに,市内の用務や観光からの帰り,一般路線バスでは六枚町を通って金沢駅に着くものが結構あり,東横イン金沢駅東口はその六枚町バス停(六枚町2カ所停車便は2カ所目のバス停)の前です。わかってしまうと便利な立地です。

株式会社ではない共済組合のホテルも,費用に応じた価格設定のまま

需要の増加でするすると価格が上がるのは,短期的には客室の供給が一定で,新規参入に時間がかかるから。しかし,費用を大きく上回る価格が付けられるのなら,新規参入があって,そのうち費用に応じた価格設定に戻ります。価格が費用に見合う水準に戻るのは,供給の増加と価格競争があってこそです。

では,ホテルが増えれば,客室料金はどうなるのか。費用に応じた価格の水準を知るには,需要が増えても価格を上げる誘因があまりない宿泊施設が参考になります。それは,営利の株式会社ではなく,非営利の共済組合のホテル。いわゆる公共の宿です。金沢では,

です。種々の委託はしているものの,営利組織ではないので,値上げして利益を高め,事業を拡大するという誘因がありません。ただし,赤字では,お取り潰しになるので,それが価格の下限です。

なお,この2つには夕食も提供するレストランがあるので,B&Bタイプ(たとえば東横インなど)よりも高めになるのは仕方ありません。

兼六荘は,小規模で築年数が経っている分安く,一般向けで平日・土休日ともシングル16m2で7500円,冬期6500円の設定を,今でも続けています。

KKRホテル金沢は,1998年築と比較的新しく,レストランが会席料理とコース料理まである和洋,さらにカフェが揃う分、もともと高めです。それでも,シングル15m2を一般向けに平日7800円,休前日8800円で出しています。

どちらも金沢駅から頻発するバスで数分の立地。さらに,近江町市場と金沢城公園が徒歩数分にある市街地の中心部です。

それで,現状では1か月先あたりまで満室ぎみです。空室さえあればネット予約サイトに出ているのですが,1か月前にもなると,ネット予約サイトで地域から空室検索しても出て来ないことが多く,存在も伝わりません。

割安感がでてきた航空会社のダイナミック・パッケージ

航空会社のパッケージ・ツアーは,新幹線開業前よりむしろ安く提供されています。それは,羽田・小松便の搭乗客が前年比約4割減で推移していて,減便の危機にあり,航空会社が航空運賃部分の大幅な値下げを続けているからです。

数日前まで申し込めて,出発前に受取る必要のないダイナミック・パッケージが普及して,不自由さも減ってきました。楽天やじゃらんなどからも,ホテル単独の予約と似たような手順で申し込めます。

一つだけ例示するなら,一番いいホテルということで,「何とかもう1年粘る」と言われていた日本航空の系列にあるホテル日航金沢。

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出典:じゃらん(www.jalan.net)で,12月3日(木)の1泊1人を,11月15日に検索

22m2のゆとりあるダブル仕様で,休前日でない平日で13055円からのところ,羽田・小松の往復が付いて27500円です。北陸新幹線の東京・金沢の往復旅費そのもので,金沢でもっともよいホテルに泊まれます。他のホテルも同様で,宿泊単独よりも,航空会社のダイナミック・パッケージの方に割安感があるのが,新幹線開業後の現在です。

もちろん,以上は空室がある日での話。金・土曜や,学校が休みの期間は,どのホテルもかなり先まで,このタイプのパックは埋まっています。また,そうなることが予想される日は,最初からより高い価格設定です。

金沢駅から電車で約11分の松任駅前にもホテル2軒が

それでも,金沢に適当なホテルがないと,隣の市も検討対象です。お隣の都市でホテルがあるのは白山市で,その松任駅南口の西側徒歩3分には,グランドホテル白山があります。同じく南口の東側徒歩3分には,小規模のため満室ぎみで,ネット予約サイトに出なくなった松任ターミナルホテルがあります。(白山エリアの検索で出てくるその他のホテルは,車でのアクセスが常識的なところです)

最初におことわりですが,金沢・松任間の電車は昼間は毎時2本程度,朝夕だけ毎時3本以上と,スマホなどで電車の時刻を調べておく必要があります。金沢市内の各所へ直接タクシーなら,30分以上4000円程度の覚悟がいります。

松任は,人口11万人の白山市の中心となる駅。金沢のベッドタウンであるとともに,ハイエンドのディスプレイを製造するEIZOの本社・工場や,京都の村田製作所の子会社である金沢村田製作所の本社・工場などが揃う市です。さらに,日本酒の菊姫天狗舞手取川萬歳楽が作られる市。そこで,ホテル近くにコンビニはもちろん,居酒屋も含めて飲食店が点在します。

楽天トラベル,じゃらんなどで金沢と別の地域設定:白山

ポイントは,上記宿泊予約サイトで,松任駅前は金沢と別のエリア設定であること。地域で金沢を選んでホテルを検索している人は,隣接の白山エリアのホテルまでたどり着きにくいシステムです。

東京都区内→松任は,東京都区内→金沢と同じ運賃

もう一つのポイントは,東京都区内→金沢の乗車券,東京都区内→松任の乗車券ともに7340円という点。つまり,東京都区内からなら松任駅前のホテルまで,金沢駅前までと同料金で行けます。出張などでも,旅費精算の面倒のない場所です。 

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東京都区内→松任の乗車券で金沢で途中下車可能:追加交通費なし

金沢周辺には,JRの乗車券での都市制度がありません。乗車券は,遠距離のものでも金沢市内着とはならず,上の写真のように,単駅の金沢着や松任着で発券されます。

それで,この写真の下の乗車券では,金沢駅で途中下車して仕事または観光,金沢駅から再びこの乗車券で普通列車に乗り松任へ向かえます。写真の下の乗車券は,金沢駅の新幹線出口で,途中下車の印字がされ,戻ってきたものです。

次の日の仕事や観光も,帰りの松任→東京都区内の乗車券で,金沢まで乗り途中下車,ふたたびその乗車券で金沢から東京へ帰れます。追加交通費は要りません。結局,金沢・松任間の往復が,おまけになっているようなものです。

これは大都市にない利点。都市規模のより大きな仙台や新潟ですと,乗車券が仙台市内着,新潟市内着になってしまい,その市内ゾーンで最初に降りた駅で乗車券が回収され,前途無効になります。