21世紀美術館周辺の隠れたスポットを徒歩で
前回の食べ歩きは,県立美術館のカフェで,スイーツと日本茶のコースの後,美術の小径を下って中村記念美術館までたどり着きました。そのルートは過去記事を。
本多の森を借景とした庭を眺めてお抹茶を
着いた中村記念美術館は,日栄で知られる金沢の造り酒屋・中村酒造の創業家が,収集した茶道具などを金沢市に寄贈して作られたもの。
展示の中心が茶道具や掛け軸だけあって,お庭と呈茶のサービスがあります。入館料300円の他に,呈茶料は干菓子が200円,半生菓子が300円。バスの一日乗車券の提示で,入館料が250円になる割引などもあります。
ただし,美術品は撮影禁止なので,最後の呈茶とお庭だけを以下に。
呈茶の部屋から眺める庭園は,写真のようにいたって静かで落ち着きます。入館者数を比べると,21世紀美術館は1か月約18万人(2015年3月)のところ,県立美術館は約32000人,こちらは約1800人ということで,限られた趣向を追求する隠れ家的存在。混雑した時期でも,静かなままの空間です。これを撮っているときも,数分に一人のペースでの来館者。
お抹茶は室内のベンチタイプのいすで,同じ高さのテーブルでいただけます。
茶道具の収集を基礎とした美術館だけあって,現代の作の何点かから,お茶碗を選べる方式。
選んだのは半生菓子の方で,合わせられるお菓子は,諸江屋の万葉の花。粒あんを生落雁で挟んでいて,落雁にしてはしっとりした食感です。それでいて日持ちするために,茶道の主菓子として重宝されています。
このお菓子,東京駅丸の内南口正面のKITTE地下1階に出店があって買えることは,過去記事に書きました。
お抹茶をいただいた後で,外のお庭の観賞です。
正面が,コンサートによく使われる本多の森ホールのある本多の森から石引方向。それが借景となっています。こちらまで県立美術館から急階段を降りてきたように,奥が高台なので,現代の建物などが目に入りません。
お庭にはつくばいが配され,江戸時代建造のものを移設した金沢市営の茶室・耕雲庵が。
茶会や句会などで貸切利用ができますが,一般の観賞はここまで。横を見ると,前記事で説明した旧中村邸(移築)です。
この敷地内,電線などの人工物がなく,人もかぶらないので,写真の構図もいろいろと考えられます。
緑の小径から鈴木大拙館と松風閣庭園へ
ここからは,2011年の鈴木大拙館の開館とともに新設された緑の小径へ。
先ほどの茶室と背後の森の間を,木橋などで抜けます。こちらも街中なのにひっそり。
進んでいくと,鈴木大拙館の壁の裏側です。現代のつくばい様に水をたたえた石に,なぜか正三角形の切り込みがあります。
鈴木大拙館を訪ねる人で,その後,この緑の小径を中村記念美術館に進む人はほとんどいないようで,このルートはとくに逆方向,閑静なまま。これを撮ったときも,誰とも行き違いませんでした。
途中,鈴木大拙館の壁の外側に開いたスリット?から,こういう風景が見えます。
足下には,水面に張り出した踏み石のようなところがあります。壁の内側には,静かに観賞している方がいますので,羽目を外すと恥ずかしいです。この写真のエリアは,館外で無料。
鈴木大拙館の内部は,長くなるので,後日,別記事に。
江戸初期作庭の本多家下屋敷跡・松風閣庭園へ
この緑の小径を鈴木大拙館へ進んできた角で,右奥に分かれる方向が松風閣庭園です。入口はこちら。
この木戸を入って,踏み石を進みます。
後に書く事情で,いまだホームページも,観光協会のページもなく,金沢市の名勝指定の説明と,口コミサイトや個人のブログの記述があるだけ。
ここは,加賀藩の前田家筆頭家老・本多家の下屋敷があったところ。そこに江戸時代初期,1616年ごろから作られた約2200坪のお庭です。
上屋敷は,前記事でスイーツのコースを食べていた,坂の上の県立美術館のあたり。ここまでのルート,すべて本多家の旧上屋敷・下屋敷の中で,こちらの住所も本多町です。
写真の灯籠の奥の庭は霞ヶ池。こぢんまりとはしていますが,同じ名前で兼六園の写真の定番でもある霞ヶ池より古いもの。兼六園の霞ヶ池の方が,ここを手本としたと言われています。こちらの作庭は1616年から,兼六園の霞ヶ池が現在の景観になったのは1836年で,同じ江戸時代でも200年の経過があります。家臣が結構なお庭を造ったので,大名も同じ名前でスケールアップしたものを造っていったのが兼六園,という順序です。
当時からなのか,茶室風の数寄屋がしつらえられています。
こちらは,後で設けられた北陶の陶芸工房。築三百年という当時の刀蔵を改装した建物とのこと。陶器の販売もされています。ここまで来る観光客も少ないためか,苔が見事です。
ここまで来て,庭園の紹介の看板があります。本多家の庭園で、江戸時代初期の作庭との表示です。
最近になって看板が改まったようで,写真も新しいものに改訂。庭園名の由来である松風閣をバックに,湧き水が吹き出しています。
その松風閣は,本多家上屋敷にあった広坂
残念ながら,松風閣は立入禁止ですが,その掲示は地元の民放・北陸放送です。下の地図のように,ここは北陸放送本社屋の裏で,松風閣庭園はその敷地内でした。日本の民間放送局で,登録文化財級の江戸時代の庭と建物を所有しているのは,この本多家下屋敷跡に本社屋があるこちらだけでしょう。
松風閣庭園はいつもは鈴木大拙館側からのみアクセス可
私が金沢に住んでいたころは,この庭は非公開。それが2011年の鈴木大拙館の開館時点から,中村記念美術館とつなぐ緑の小径から分岐した裏手からのみ,昼間に一般公開しているとのことです。ただし,私有地のため,閉鎖されることもあるようです。
なお,周遊バスの本多町バス停のある北陸放送正面の大通りとは,警備の方が常駐していて,通り抜けができません。そこで,本多町バス停から松風閣庭園へのアクセスは,下の地図のように鈴木大拙館側から回り込むルートだけです。
イベント時は主催者情報を
歴史あるきれいなお庭が知られざる状態ではもったいないと,最近では,松風閣を公開してのイベントがたまにあるようです。そのとき,周遊バス本多町バス停すぐの北陸放送左手の正面から入れるかは,主催者情報を確認ください。正面が開いていれば,本多町バス停徒歩1分の近さです。
本多の森を徒歩で巡る閑静なルート
ここまでのルートを地図にすると,下のようです。
バスでのアクセスと帰りは次の通り。
兼六園シャトル・県立美術館前バス停→石川県立美術館→中村記念美術館→松風閣庭園→鈴木大拙館→周遊バス左回り・本多町バス停(右回りは対面の北陸放送側)
(県立美術館のカフェ以外)街中なのに観光客の混雑があまりない閑静なルートで,各色の区間は,徒歩で約5分ずつの手軽さです。通り抜けるだけならすべて無料。また,県立美術館は,有料エリアやカフェに入らなくても,赤のルートの表からオレンジのルートの裏に通り抜けられます。
さらに,地図左上の21世紀美術館や右下の県立歴史博物館(いしかわ赤れんがミュージアム)と組みあわせるルートも,いろいろ工夫できます。21美や兼六園の混雑がわかった後でも,静寂を選べるエリアです。