その後、2015年12月14日までのデータを追記したものを,次の新しい記事としています。
6月から7月上旬も在来線の前年比3倍超は維持
北陸新幹線の利用客のデータが,JR西日本から続報されているので,更新します。例によって,延伸区間で富山・金沢方面への乗客をすべて含む区間での計測です。
期間 | 通過人数合計(万人) | 1日平均(人) | 在来線前年比(倍) | 出典 | |
---|---|---|---|---|---|
3月14~31日 |
49.0
|
27200
|
2.73
|
*1 | |
うち | 3月14日(土) |
3.5
|
35000
|
3.74
|
*2 |
3月15日(日) |
2.8
|
28000
|
2.81
|
||
3月16日(月) |
2.1
|
21000
|
2.54
|
||
4月 |
68.6
|
22900
|
3.21
|
*3 | |
うち | 4月24~30日 |
15.5
|
22100
|
3.00
|
*4 |
5月 |
89.8
|
29000
|
3.46
|
*5 | |
うち | 5月1~6日 |
23.6
|
39300
|
3.18
|
*6 |
6月(速報値) |
75.0
|
25000
|
3.22
|
*7 | |
うち | 6月の平日 |
*
|
23000
|
3.19
|
|
6月の土・日 |
*
|
32000
|
3.44
|
||
7月1~6日(速報値) |
13.7
|
22800
|
3.32
|
||
開業以降通算 | |||||
3月14日~6月30日 |
282.0
|
26000
|
3.19
|
*8 |
3か月余りで282万人の利用ですから,年間1000万人が目標に入ってきました。7月6日までの295万人をもとに,1日26000人のペースで進むと,1000万人目の利用客が出るのは,単純計算で2016年4月2日ごろ。その利用客に記念品を贈るなどのイベントが期待されます。
関西・北陸間のサンダーバードも6%増
JR西日本の7月の記者会見で追記されているのは,サンダーバードの乗客数が,開業日から6月30日までの通算で6%増という効果です。関西から北陸への流動も増えています。
乗ること自体が主目的の旅行はそろそろ終息しているでしょうから,理由はより本質的なものでしょうか。メディアへの露出が増えて,新幹線沿線以外からでも北陸が旅行の目的地に選ばれやすくなっただけでなく,関西と長野・高崎・東京間の移動で,片道でも北陸経由を選択する回遊性が生まれたことが考えられます。
たとえば,大阪・京都から長野往復では,大阪・京都→名古屋→長野が現実的なルートだったものが,(適当な接続列車は限られますが)ほぼ同じ3時間台で大阪・京都→金沢→長野と到達できます。例によって,片道名古屋経由,片道金沢経由と長く乗車券を作れば,これまでの名古屋経由の往復よりは安く行き帰りできます。
既設の新幹線区間の数字もJR東日本が更新
既設の新幹線の数字が,JR東日本から2014年度のものに更新されたので,再掲します。
区間 | 人/日 | 出典 | |
東北 | 仙台・一ノ関 |
39898
|
*9 |
一ノ関・盛岡 |
32089
|
||
盛岡・八戸 |
15251
|
||
八戸・新青森 |
10028
|
||
上越 | 高崎・越後湯沢(注) |
36271
|
|
越後湯沢・新潟 |
22411
|
||
九州 | 博多・熊本 |
25000
|
*10 |
熊本・鹿児島中央 |
13900
|
注意:北陸新幹線開業前に,越後湯沢乗換で富山・金沢方面と流動した乗客を含む
北陸新幹線の上の区間の乗客数は,6月以降も上越新幹線越後湯沢以北を上回っていて,この大小関係は定着しそうです。ただし,北陸は7月の初旬になって,やや落ち込みがみられます。これが季節変動の範囲かどうかは,夏休み明けにわかるでしょう。
駅ごとの新幹線乗車人員は富山駅がじわり増加
各駅の新幹線乗車人員も,開業直後に公表された数字から3か月余り経過して,続報が発表されました。JR東日本は定期的に公表しておらず,続報はJR西日本だけです。
なお,この部分,当初引用していた時事通信の記事が消えましたので,JR東日本,西日本の原典をあげておきます。
駅 | 3月14日~16日 | 3月14日~6月30日 |
長野 |
7000
|
|
飯山 |
800
|
|
上越妙高 |
2300
|
|
糸魚川 |
600
|
400
|
黒部宇奈月温泉 |
700
|
800
|
富山 |
4700
|
4800
|
新高岡 |
1600
|
1600
|
金沢 |
9800
|
8700
|
出所:北陸新幹線金沢〜長野開業後のご利用状況について:JR東日本,JR西日本
7月定例社長会見:JR西日本
これは,新幹線の自動改札入場記録をもとにした,乗車だけの人員です。降りた客,在来線の乗客は含んでいません。入場券も除かれています。また,有人改札の利用者(磁気券でない団体利用など)も入っていません。
これも似た水準のJR東日本の新幹線駅の過去1年の値と比べると,以下のようです。(なお,金沢駅はJR西日本ですが,同社の山陽新幹線の駅では,新幹線に限った乗車人員のデータが見当たりません。)こちらも,過去記事の2013年度のデータから,2014年度のものに更新しました。
新幹線の乗車人員 | 2014年度の1日平均 |
新潟 |
10626
|
長岡 |
6022
|
長野 |
6782
|
軽井沢 |
3360
|
郡山 |
9392
|
福島 |
8143
|
仙台 |
26571
|
盛岡 |
7691
|
八戸 |
3598
|
新青森 |
4850
|
金沢駅については,開業直後の記念乗車需要が消え,平常時の実力に収束してきたようです。在来線から新幹線への乗り継ぎ客も含めて,片道で1日8千人台後半。JR東日本の新幹線で首都圏外の駅では,仙台,新潟,郡山の次に位置します。それぞれの都市規模に対して妥当な順位でしょう。
一方で,富山駅がじわりと増加。しかしまだ,盛岡や長野,長岡に及ばないのは意外です。人口では富山42万,盛岡30万,長野38万,長岡27万なのにです。この結果になる理由は,富山では航空機の利用がまだ相当あることと,在来線との乗り継ぎ客の差くらいでしょうか。むしろ,北陸新幹線の駅で,今後の伸びしろが大きいのは富山駅と思えます。
航空路線は約4割減まできたが
その航空路線の旅客も,毎月更新されています。
2015年 | 羽田・小松(JAL) 1日6往復 |
羽田・小松(ANA) 1日6往復 |
羽田・富山(ANA) 1日6往復 |
2月 |
58138
(+7.5%) |
69260
(+14.0%) |
52588
(+5.9%) |
3月 |
56867
(-14.4%) |
64197
(-14.4%) |
55539
(-20.8%) |
4月 |
37549
(-36.2%) |
36674
(-41.7%) |
34493
(-43.7%) |
5月 |
46006
(-30.4%) |
42765
(-42.6%) |
39901
(-43.1%) |
おおむね4割減ですが,ゴールデン・ウィークの旅行客もあり,5月の数字は下げ止まり感もあるでしょうか。小松も両社足せば,前年比でさらなる減少はしていません。
鉄道と航空機の競争がある方が,双方の運賃を費用に近づける圧力になることと,新幹線のダイヤの速達性が維持されますが,どうなるでしょう。航空路がないと,鉄道側に速達の誘因がなくなり,停車駅が増加していくことは,上越新幹線などの経緯でわかります。
なお,これら空港の羽田便の旅客を合計すると,5月で1日平均往復で4150人(うち小松2863人,富山1287人)です。すると,航空から鉄道へ移行する可能性のある需要は,最大でその値。かりにすべてが移行すると,北陸新幹線は冒頭の推移の区間で1日約3万人になります。それは,現在の乗車率で,かがやきを片道5本程度増発できる需要です。ただし,そうなってしまうと,今度はかがやきの停車駅が,これもじわりと増えていくかもしれません。
写真は,南風のため,金沢市街を左に見て小松に着陸した珍しいアプローチ。犀川と北陸自動車道が交差する真ん中が,ツエーゲン金沢のホームグラウンドです。
羽田・小松便のシェアはJALがANAを逆転
小松便の乗客は約4割減少しましたが,利用の少ない4月でも,両社合わせて7万人台。このままなら年間80万人台は確保できそうで,羽田では高知や山口宇部便と同じ水準です*11。もちろん,それら路線に比べ,羽田・小松便は運賃をかなり割り引いているので,収益性はかないません。しかし,すぐに撤退となる水準でもなく,転機はあと8年を切った北陸新幹線の敦賀延伸時点か,前倒しの余地のある福井先行開業時点でしょう。
旅客大幅減のなかで,ちょっとした変動は,ANAのシェアが優位だったものをJALが逆転したことです。マイレージも含めた過去からの営業基盤(羽田・小松はもとはANAの独占で,JAL,当時のJASの順の参入です),羽田で接続する国際線,小松や羽田のラウンジなどは,ANAの方が充実しているのにです。
もう乗る機会もほとんどないですが,JALが有利になるのは3つぐらい。
新幹線開業後,小松便はどちらも6往復で737主体ですが,JALは767を時刻表上2便入れていること。一方,ANAは時刻表では全便737表示として,需要予測に応じて日によって機種を柔軟に変える方式。混雑時にだけ,いつの間にか767などになっています。
この方式,効率はよくなりそうですが,ネットで予約する時点まで,機種がわかりません。すると,両社の時刻表を並べている空港などのウェブサイトで,JALの767表示を見て,まずJALのサイトから予約を入れ始める客が,少なからずいると思います。
また,小松発羽田行が多く着陸する滑走路(34Lか22)からスポットへのタキシングが,JALの第1ターミナルまでより,ANAの第2ターミナルまでの方が長いため,同時間帯の同じ機種で,ANAがJALより5分長くかかるダイヤが存在します。これも,時刻表上の印象に差が付きます。
最後は,JALは一部の便でWi-Fi(有料ですが無料の特典もあり)が利用できること。ANAは未対応です。北陸新幹線は,高崎を過ぎると黒部宇奈月温泉までトンネルで通信が細切れになるため,それなりに需要はありそうです。
今後の鍵は福井方面の旅客ということで,小松で多い北風の場合のアプローチで撮れた,東尋坊と雄島方面の写真です。
羽田・富山便を維持できれば新たな経験に
一方,富山便は,これまでの経験則では無理だった競争が続いています。東京・富山駅を約2時間で結ぶ「かがやき」が1日片道10本以上走っていても,羽田・富山を1時間で飛ぶ全日空が片道6便をキープしていることです。空港アクセスと15分前のゲート通過を考えると,ドアツードアでは新幹線が有利なところが多いはずなのにです。
新幹線開通で航空路が撤退したわかりやすい例は,羽田・新潟,仙台,花巻(盛岡最寄り)です。とくに,東京駅から富山駅(最速2時間8分)までとほぼ同じ時間の盛岡駅(最速2時間11分)最寄りの花巻便が撤退していることは,羽田・富山便の参考例になると思っていました。都市規模も似ています。
花巻撤退時点との大きな変化は,羽田空港のアクセスが便利になったことでしょうか。とくに,京急の乗り入れと京急蒲田の改良,首都高の中央環状線の延伸で,東京駅より羽田空港が選ばれる地域が増えたからかもしれません。また,羽田の国際化も,欧米向け国際線のない地方空港から,羽田を乗り継ぎとする需要を引き出していそうです。
さらに,富山空港は,とくに日数制限のない無料駐車場を,少し歩く位置ですが持っています。羽田までだけでなく,羽田乗り継ぎで海外へでも,置きっ放しができます。これは,大都市の空港ではありえないことで,車移動がふつうの地域では,空港利用客の維持に大きく効いているのかもしれません。
最後に,富山空港ならではの,地物が揃う回転寿司店の写真を。これができるのは,富山空港が市街地でもあるから。小松は,2階のレストラン・エアポートから鮨カウンターがなくなって久しいです。