北陸新幹線で行く,はじめての金沢

お庭,お菓子,お魚,お酒が揃う城下町をまわるため,金沢出身・東京在住者が往復しながらヒントを書いていきます。

おみやげにしている金沢の和菓子その3(高砂屋・高木屋編)

この似た名前の2店は,金沢の旧市街地で大正時代からつづく老舗。老舗ながら洋菓子風の品があることも,似ています。

どちらも金沢駅の金沢百番街に出店している和菓子店ですが,県外には出店がありません。東京・銀座の石川県のアンテナショップには,高木屋のお菓子の一部(あんず餅の冷凍や紙ふうせんなど)が出ていることがあります。

高砂屋*1:看板の餅菓子だけでなく,早くに浮島生地からカステラ風に展開したお店

巻絹

大正4年創業の老舗で,古くから続く看板商品。あっさり目の白味噌餡を,羽二重餅で包んだ餅菓子・巻絹。外側の柔らかさは餅菓子でも特筆もので,味噌の配合もくどくならないところで止めていて,全体として上品な仕上がりに。個包装でエージレスパックのため,そこそこの日持ちもあり,配るおみやげにも使えるもの。

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こういう古典的な看板商品がありながら,かなり早くから洋菓子風のものも作っているお店。これまでに挙げたお店が蒸しカステラ生地を手がけるのよりも早かったと記憶しています。

たぶん30年は続いているのが,幸(しあわせ)のうた。

幸のうた

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一見パウンドケーキですが,餡を含ませた浮島生地を焼いたもので,小豆の風味がして和洋折衷の仕上がり。真ん中の層がチョコレートであることが一工夫です。

佐賀県周辺の方は,同じ浮島生地の「さが錦」をイメージしていただくと,わかっていただけると思います。チョコレートの使い方あたりがオリジナリティ。

この浮島生地の「幸のうた」に対して,餡を入れずにカステラ生地とした,近年の新作が,加賀野。

加賀野

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栗を含んだものと,抹茶風味に丹波大納言を含んだもの,ココア風味にクルミを含んだものと,三種類の構成。餡を使わないので,ほぼ洋菓子の仕上がりで,万人受けします。

幸のうた,加賀野とも,写真のサイズで個包装のエージレスパックで日持ちします。それで,職場で配ったり,箱のまま置いておくおみやげに重宝します。

老舗の和菓子店でも,こういう品を30年は作っているわけで,昔風の羊羹,饅頭,最中に留まらなかったのが,今でも金沢に和菓子店が多く残っている理由の一つでしょう。

高木屋:酸味と素材の食感を活かした,あんず餅とあんずパイで急展開

こちらは大正14年創業の老舗。棹菓子が看板商品という老舗の典型といえるお店でした。それが,フルーツのあんずを丸ごと使った和菓子を手がけるようになり,他にあまりないことで広く売れ出したものです。

あんず餅

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掛け紙の説明通り,あんずの蜜漬けを一つ丸ごと,薄い白あん層と羽二重餅で包んだ生菓子です。

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中はこうなって,おだやかな甘みに,あんずの酸味が爽やかです。

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外側から順に,やわらかさ,甘さ,果肉の食感,酸味が口の中に広がっていきます。和菓子のうち,とくに餅菓子で酸味が効いているものは,ほとんどないでしょうから,この組み合わせが当たったのでしょうか。

また,皮が薄い羽二重餅であることで,大阪方面で多様な進化を遂げているフルーツ大福よりも,いたって柔らか。フルーツ大福とは別のおいしさです。そのため,生菓子扱いで,日持ちが4日。

東京・有楽町のアンテナショップでは冷凍で販売

それで,金沢駅のあんとには売場がありますが,東京など大都市のデパ地下にはふつう出ていません。日本橋三越の菓遊庵などに出ている場合も,期間限定の売り切りです。

以下の記事に書いた銀座の有楽町寄りの石川県のアンテナショップでは,冷凍ショーケースで売られていることがあります。 

惜しいのは,この短い日持ちと,個包装ではなく,配ることができないこと。そこで,配れて,日持ちするものが登場ということで‥

あんずパイ

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先ほどのあんずが,パイ皮で包まれて軽く焼かれています。

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それでいて,中のあんずは柔らかいままで,焼菓子なのに中はしっとり感もある面白さです。

1個単位のエージレスパックで,日持ち20日を達成しているので,配ったり,箱置きでおみやげとするのにも適したパッケージ。店構えからしても,こういう方向に進まれるとは,予想外でした。

ここまで写真を並べてみると,羊羹,饅頭,最中という古典以外の和生菓子が買われている理由がわかります。お菓子記事は,これで1/3くらい来たでしょうか。まだまだ続きます。

あんずパイは香林坊東急スクエア地下の文豪カフェでも

なお,高木屋のあんずパイと紙ふうせんは,香林坊東急スクエア地下1階の文豪カフェあんずで,好きな飲み物とセットで食べられます。金沢東急ホテルと同じ建物の地下1階。

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このカフェは地場の書店うつのみやに併設で,永年の書店経営で集積された文豪の直筆サイン等が壁に掛かっています。古いところだと与謝野晶子や,新しいところでは2016年に芥川賞を受賞された石川県出身の本谷有希子さんなどで,このカフェはそのうち記事にしましょう。

*1:お店のホームページが工事中のため,その他に解説があるページをリンクしています