北陸新幹線で行く,はじめての金沢

お庭,お菓子,お魚,お酒が揃う城下町をまわるため,金沢出身・東京在住者が往復しながらヒントを書いていきます。

金沢城内に復元された玉泉院丸庭園とお抹茶がいただける玉泉庵

兼六園に隣接する金沢城公園内に,玉泉院丸庭園ぎょくせんいんまるていえんという庭が新幹線開業前の3月7日に開園しました。できたばかりで,北陸新幹線開業にあわせた観光ガイド本には,まったく載っていません。

香林坊(中央公園前)バス停からのルート

場所は,兼六園に隣接する金沢城公園内でも,繁華街の香林坊に近い方。香林坊(中央公園前)バス停からのルートは,中央公園を斜めに突っ切って下記の通りで,徒歩6分。下の地図のゴールの位置に,金沢城公園・玉泉院丸口が整備されました。

ほかの香林坊バス停(アトリオ前)などからでも,デパート・大和の中を中央公園側に抜けて,徒歩6分くらい。新設まもない間は,Googleの地図でもブランクのままでしたが,現在は内部の散策路も描かれています(2016年追記)。

周辺には観光スポットが多く,地図の右下,しいのき迎賓館からも徒歩5分,その向かいの21世紀美術館からも徒歩10分あれば十分。

兼六園からは桂坂口,石川門を抜け金沢城公園内へ

一方,兼六園桂坂口からは,下のように,金沢城・石川門を通り,金沢城公園をずっと歩いて行けます。兼六園とあわせて1時間は歩き通せる日本庭園と現代の公園の広がりです。石川県作成の持ち歩き用のマップはこちら

庭歩きは無料,庭を眺められるお茶席だけ有料

売りは,お庭観賞だけなら無料の点。後で書く,お菓子とお抹茶をいただく場合にだけ,料金がかかります。それで,有料の兼六園をゆっくり見る余裕がないとき,香林坊や広坂・21世紀美術館から30分くらいのすき間時間でも,手軽に庭園を観賞できるスポットとして使えそうです。

なお,開放された公園と違って,下の写真にあるように基本的に午後6時(冬期は午後5時)で閉園。ライトアップして夜間も開園する日は週末などに限られ,ホームページで確認が必要です。ライトアップ時は,後で書くお茶席はありません。

その玉泉院丸口の案内。

f:id:KQX:20150318012854j:plain

兼六園とは趣が異なり,岡山の後楽園を小さくしたような,城壁と城の構造物を見上げて芝が続く,現代風の明るい庭。城内の地形のため,かなり高低差があります。

玉泉院丸庭園(右上に三十間長屋を望む)

右上に見えているのは,1858年に建造された重要文化財の三十間長屋(これは復元ではなく現存)。

池が曲線状なので,違う場所から見るとまた違う景観に。現在,中の島には渡れず,外周だけ歩ける池泉回遊式です。

2015年3月に新設された玉泉院丸庭園から三十間長屋を望む

日本庭園の遠景は,スケールがわかりにくいのですが,一番左の雪吊りの左側を散策中の方を参考にしてください。

左に移動すると,中央奥の茶色いところに段落ちの滝が見えてきます。

玉泉院丸庭園の段落ちの滝

もっと左から見ると高低差がよくわかります。奥が,広坂のしいのき迎賓館,21世紀美術館,そしてはるか白山連峰の方向です。

玉泉院丸庭園,左上が三十間長屋,右が玉泉庵

お茶席はガラス張りで庭を眺める数寄屋造の玉泉庵

上の写真右側の建物が玉泉庵で,新築ながら柿葺きの数寄屋造。

玉泉院丸庭園・玉泉庵でのお抹茶とお菓子

お抹茶と上生菓子がいただけます。720円,茶屋街の凝ったお店よりは安いですね。

玉泉院丸庭園・玉泉庵

ここを入って,中の受付で支払いを済ませると,

玉泉院丸庭園・玉泉庵の入口

広間ながら和室で和服でのおもてなし

奥の畳敷きの広間へ通されます。こちらは別のお客さまへのおもてなし中で,きちんと和服です。

玉泉院丸庭園・玉泉庵の茶室へ

床の間には,軸と生け花がしつらえられていて,

玉泉院丸庭園・玉泉庵の床の間に掛け軸と生け花

先ほどのお庭と三十間長屋を見通せる,前面ガラス張りの現代の茶室。下の写真に写る奥まで,12畳+8畳の広々とした畳敷きです。

茶室・玉泉庵からの玉泉院丸庭園の眺め

三方に青の毛氈が敷かれていて,そのどこでも座ってよいとのこと。試してみたところ,入口から見て奥の,床の間側の方が,この写真のように三十間長屋が正面に遠望できて気持ちよいです。

しばらくすると,水屋で点てられたお抹茶とお菓子が,上の写真の右奥のように,ご挨拶をされてもてなされます。いただく側は,自由にどうぞとのことで,正座が苦手な方には椅子が用意されていました。

お菓子は柴舟の小出製で,季節によって変わるもの。このときは,春の宴という菓銘のきんとんです。なお,小出は上生菓子は予約制で,金沢百番街を含むお店に行っても買えません。

小出の上生菓子・春の宴とお抹茶(お薄)

県営施設だけあって,器は両方とも九谷焼。お菓子の器は,こちらも上出長右衛門窯でした。金沢の多くの料理屋さんで見ますから,現代の九谷焼の定番なのでしょう。抹茶椀はグラデーションが美しく,彩釉の九谷のはずですが,あいにく落款が読めませんでした。

玉泉院丸庭園を眺めての和菓子とお抹茶

開放感のある和室から,お城の遺産を眺めてほっこりできるひとときでした。

兼六園でこのような公設(県営)のお茶席は,時雨亭なのですが,そちらは園内に後で設けられた建物のため,高低差のないお庭だけの眺め。しかも,広間の内側にもお客さんを入れるため,お庭向きになるとは限りません。それで,作庭時に設計されているこちらの方が,眺めの奥行きや立体感では上回りますし,内向きの席がないのもよいことです。

香林坊徒歩圏で,城と庭を眺めながらお茶をいただきたいなら,ここですね。ただし,コーヒーとか食事はありません。よくある飲み物の自販機とベンチが外にありますので,好みによりどうぞ。

ご注意:かなざわ玉泉邸(玉泉園)とは違うお庭です

以前,江戸時代の庭を眺めながら会席料理が食べられるお店,かなざわ玉泉邸のことを書きました。

名前が「玉泉」まで同じですが,違う場所,違う庭です。

  • 玉泉院丸庭園玉泉庵
    金沢城公園内に2015年3月に新設された日本庭園
    玉泉庵で上生菓子と抹茶をいただける(午後4時受付終了で,昼清掃と貸切時を除く)
  • かなざわ玉泉邸・玉泉園
    兼六園の近くにある,前田家の家臣脇田家が江戸時代に作庭した日本庭園。その邸宅を改装して,2014年4月に日本料理店が開業したもの。昼・夜とも懐石料理がいただけるほか,その間の時間帯に,お茶かコーヒーとお菓子セットでの庭園観賞ができる。2016年刊行のミシュラン富山・石川(金沢)特別版では,1つ星を獲得。

そのミシュランの件は,下の別記事へ。

これ,ガイドブックに両方が整うまで,混同する人が続出すると思うので,気をつけてください。タクシーも,住所か地図を見せないと危ないかも。両方とも,それぞれの写真にあげたように,上出長右衛門窯の九谷焼が出てきたのはびっくりしましたが,いずれも石川県の美を伝えるおもてなしです。

困ったときのために,2つの庭の位置関係の地図を貼り付けておきます。

なお,玉泉とは織田信長の四女で,加賀藩二代藩主・前田利長の正室・玉泉院に由来する命名です。