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北陸新幹線で行く,はじめての金沢

お庭,お菓子,お魚,お酒が揃う城下町をまわるため,金沢出身・東京在住者が往復しながらヒントを書いていきます。

10,11月の乗客は1日29000人,前年比3倍を維持,JR東西とも過去最高益で西は増配へ

金沢までの交通

1日2万人台後半,在来線比3倍超が定着か

北陸新幹線の利用客のデータですが,おおむね安定的で新しい話題もなかったところ,年が改まり追記です。継続して発表されているのは,延伸区間で富山・金沢方面への乗客をすべて含む区間の上下線合計の乗客数。

上越妙高・糸魚川間乗車人員(上下線合計,2015年)
期間 期間合計(万人) 1日平均(人) 在来線前年比(倍) 出典
3月14~31日
49.0
27200
2.73
*1
うち 14日(土)
3.5
35000
3.74
*2
15日(日)
2.8
28000
2.81
16日(月)
2.1
21000
2.54
4月
68.6
22900
3.21
*3
うち 24~30日
15.5
22100
3.00
*4
5月
89.8
29000
3.46
*5
うち 1~6日
23.6
39300
3.18
*6
6月
75.0
25000
3.22
*7
うち 平日
*
23000
3.19
土・日
*
32000
3.44
7月
75.7
24400
3.05
*8
8月
91.9
29600
2.64
*9
うち 7~17日
37.9
34500
2.51
*10
9月
82.0
27300
3.08
*11
うち 18~23日
23.6
39300
4.44
*12
10月
90.0
29000
3.19
*13
11月(速報値)
86.7
28900
3.19
*14
12月1~14日(速報値)
28.7
20500
3.09
開業以降通算
3月14日~11月30日
708.7
27000
3.08
*15

秋の大型連休は1日平均39300人で開業日超え

9月からは前年在来線比3倍をキープしています。とくに,曜日の並びのよかった秋の大型連休は1日39300人と,春の大型連休の後半と同数を達成。両期間は開業日の記念乗車分を上回っていて過去最高です。さらに,10月は祝日が1回だけなのに,大型連休のあった5月,9月に匹敵する乗客数と好成績です。

ただし,12月前半の数値は急減。それでも,前年比は3倍をキープしているので,毎年の季節変動,つまり冬の観光の減少分と,ひとまずは考えます。次の注意点は,夏のお盆よりも多いはずの年末年始の帰省の動向でしょう,

JR東日本の純増収は半期で260億円

この乗客数は当初計画を超えるものと報道されています。きりのよい数字では,延伸区間で「前年比2倍程度との予測が3倍に」などと言われます。

公式の文書としては,JR東日本の次の開示資料の12ページで確認できます。
2016年3月期第2四半期決算説明会資料|JR東日本

2015年4月から9月までの上期,北陸新幹線による純増収(在来線の減収分を減算後)を165億円と計画していたところ,大幅に上振れして260億円。計画の1.58倍の出来で,2倍の想定が3倍にという報道内容と符合します。

その好調で,通期で285億円の純増収となる当初計画が,10月時点で450億円に上積みされています。

JR西日本の純増収は半期で153億円

一方,JR西日本の純増収分は同じ時期で153億円。連結ベースで過去最高益で,純利益は前年同期比21%増です。

それを受けて,2016年3月期で中間に5円増配,期末も5円増配予定です。増収額は東日本の方が大きいですが,1株当たり利益への貢献は西日本の方が大きく,西日本は増配ができました。

北陸新幹線開業前から,JRの配当利回りは,西日本>東日本>東海の順です。収益性は,東海道新幹線をもつ東海が一段高く,つづく東日本の水準を西日本が追うところ。ということは,西の株価が,JRの本州3社では過小評価されがちなことになります。なお,東海はJR3社で収益性や財務内容がもっとも良好ですが,今後のリニア建設という兆円単位の巨額投資があるので,配当を増やせる状況ではありません。

さて,JR西日本の収益還元は,株主だけでなく全従業員に及んでいます。冬のボーナスに付加して,一時金が正社員に5万円,契約社員に3万円支給されました。

首都圏と関西を新幹線で行き来するたびに,すべて名古屋に吸収される東海道新幹線の収益。それが,回遊性のある別ルートの創出で,一部でも大阪や東京に流れる道ができたともいえます。交通機関を選択できる区間が増えることで,健全な競争が進んでほしいものです。

開業前の在来線は大阪・名古屋方面が東京方面の約3倍の乗客数

北陸新幹線は現在敦賀まで建設中で,その先敦賀から関西へのルートは,今年中に決定されます。首都圏では過小評価されがちなこの区間,現在はサンダーバードが9両編成で毎時ほぼ2本,しらさぎが6両編成で毎時ほぼ1本走っていて,乗客数は以下の通りです。

新幹線開業前の在来線特急と開業後の新幹線の乗車人員
各区間片道(人/日) はくたか・北越など
直江津-糸魚川
サンダーバードなど
京都-敦賀
しらさぎ
米原-敦賀
新幹線開業前(2014年)
4352
8566
3879
新幹線開業後
13500
ルート検討中

出典:データで見るJR西日本2015(79ページ)

東京方面が新幹線になったことで,在来線時代の1日あたり片道の乗客4352人の区間が,開業からの1日平均で13500人(=27000/2)と,3倍に増えました。もちろん,増えた分は航空機からのシフトが中心です。これが投資プロジェクトとして成功なのは,JR両社とも増収増益,JR西では増配と一時金のおまけ付きで,実証済です。

この先,北陸新幹線が当初計画通り,関西まで完成すれば,現在サンダーバードやしらさぎに乗っている8566+3879=12445人のほとんどすべては,北陸新幹線に移行するでしょう。

この基礎的な需要は,増益と増配をもたらした現在の北陸新幹線の上越妙高・糸魚川間の乗客数をやや下回る位。これだけでも建設に十分な旅客需要で,過去の整備新幹線区間の熊本以南,盛岡以北を超えています。

関西まで完成後は,関西から長野・高崎・新潟への最速ルートに

その従来の需要に加え,乗客が増える部分は,関西から長野・軽井沢へ乗り換えなしで2時間台と,北陸新幹線が新たに最速の選択肢になる地域です。また,関西・新潟間も,上越妙高乗り換えで3時間台と,東海道新幹線の東京駅乗り換えよりも速く,安くなります。

さらに意外な効果は,関西から高崎へ,北陸新幹線で乗り換えなしの3時間程度となること。こちらも現在の東海道新幹線東京駅乗り換えよりも,速くなります。

群馬・長野・新潟から関西への流動が今後の純増要因

北陸新幹線は観光路線と思われがちですが,この区間の沿線には有力な企業が並びます。たとえば,製造業の自動車関連で富士重工,日信工業,ミツバ,サンデン,化学では信越化学,デンカ,電子部品で太陽誘電,新光電工などの本社や基幹工場,流通ではヤマダ電機の本社です。この区間が関西に直通すれば,ビジネス需要は底堅いでしょう。

その関西への移動が,現在は,長野からは中央本線・名古屋経由,群馬からは東京を経由していて,北陸新幹線の需要予測で見落とされがちです。これら長野や高崎と関西間の流動は,現在のサンダーバードにはほとんど乗っていませんから,今後の関西延伸時の乗客の増加要因です。

また,新潟と関西との流動も,現在は航空機か上越・東海道新幹線経由が多数派です。こちらは北陸経由が上越・東海道経由よりかなり短く,安くなるでしょうから,大きなシフトが見込めます。

関西から見れば,これまで東海道新幹線に払っていた運賃・料金のうち,一部の行先でも北陸新幹線にシフトすれば,収益はJR西日本を通じて大阪をはじめ関西圏に戻ってきます。金沢延伸で増益・増配が実証済の現在,関西まで完成させることの波及効果は,経営主体のJR西日本をもつ関西にとって大きいはずです。

京都の舟運の拠点跡で一服

最後は,今後の鍵を握る京都で一服ということで,国の名勝指定・一之舩入。

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そこに面したあんカフェ,ル・プティ・スエトミ(Le Petit Suetomi)。

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高瀬川から引き込んだ運河の船着き場を修景したところで,明治時代になるまで大坂からの舟運があったそうです。そこに老舗和菓子店・末富が開くカフェ。

海に面していない都に,瀬戸内海・大阪湾からここまで船で来るルートを築いたことに敬服します。その時代の京都・大阪の繁栄にも,こうした交通手段の整備が大きく寄与しています。

京都駅に北陸新幹線が通れば,金沢から1時間30分,富山から2時間弱となるだけでなく,長野から2時間半,軽井沢や高崎からは3時間あまりで直通します。今後の関西延伸での乗客増を予測するには,長野・高崎方面や新潟方面の需要の評価が鍵と思われます。