北陸新幹線で行く,はじめての金沢

お庭,お菓子,お魚,お酒が揃う城下町をまわるため,金沢出身・東京在住者が往復しながらヒントを書いていきます。

狛犬が逆立ちする金沢:ひがし茶屋街奥の宇多須神社や21世紀美術館向かいの石浦神社などに

逆立ちしている狛犬が,なぜか多くある金沢。すでにいろいろ紹介されていますが,観光スポット近くで,立ち寄りやすい2社を,回ってみました。

ひがし茶屋街の北東端:宇多須うたす神社

ひがし茶屋街の北東の端にあたる場所。観光客がメインストリートを進んで,突き当たりを左,左と曲がる角の山側にあります。神社の名前は,ガイド本や旅行アプリなどにも出ていて,場所は簡単にわかります。ひがし茶屋街へのアクセスはこちら

しかし,観光用の案内には,狛犬の紹介がありません。私も気付かずに何度も前を通り,お参りしていました。その狛犬は,鳥居をくぐってすぐ右にあります。

逆立ちする狛犬(宇多須神社:金沢市)

奥に本殿が見えています。老獪な顔立ちで,怖いタイプではありません。足を上げるところを,下から見上げるように撮ると…

ドヤ顔で足を蹴り上げ,逆立ちしている狛犬(宇多須神社:金沢市)

威厳というより,余裕を感じさせるドヤ顔。しゃちほこのような姿勢で,足を別方向へ蹴り上げています。このポーズで崩れない彫りも見どころです。

振り返って写真をとると,MEGUMIさんのパンケーキ・カフェ,多聞たもん

宇多須神社の逆立ちする狛犬は,パンケーキ・カフェ多聞のすぐ前

店の玄関から10mくらいの位置で,あれ,この場所に逆立ち狛犬があったのかというところ。この鳥居の影で狛犬に気付きにくく,私も以前パンケーキを食べたときに気付いていませんでした。

店のお客さんの出入りが結構ありますが,皆さま気付かず通り過ぎていきます。ヨーロッパ風の外国人の観光客も,とくに足を止めず,健脚で参道の階段を登っていきました。彼らはよく歩きます。

この神社は,節分にひがし茶屋街の芸妓さんの豆まきがあるところ。それで,NHKの「鶴瓶の家族に乾杯」で,鶴瓶さんが訪れて,豆まきをされた回がありました。ブラタモリのような街歩きなら,この狛犬はツボですが,あいにく触れられませんでした。

なお,境内の一部は,ひがし茶屋街を訪れる観光タクシー・ハイヤーなどの契約駐車場になっていて,車の出入りにはご注意を。

尾山神社の前身ともいえる神社

この場所は,金沢城の鬼門(北東方向)にあたるところ。その守護の意味も込め,加賀藩二代藩主の前田利長が,初代・前田利家をお祀りした卯辰八幡宮がありました。

そこから二百年以上が経ち,明治維新で禄を失った旧加賀藩士は,前田家の顕彰の意図もあって,初代・前田利家と正室まつを祀る神社を,金沢城に続く敷地に建立します。それが,明治6年(1873年)に創建された尾山神社。文明開化で取り入れたステンドグラスのある神門が珍しく,重要文化財となっています。

その時点で,前田利家の祭神は尾山神社に移り,藩主を祀る役割を終えたこちらは,地名由来の宇多須神社に改まりました。尾山神社のウェブサイトでも,ここにあった卯辰八幡宮からの歴史に触れてあり,その前身の役割もあった神社です。

21世紀美術館向かい:石浦神社

金沢で,観光客も含めて参拝客がもっとも多い尾山神社は,士族が建立した経緯で,当初は町人が氏子にならなかったものです。では,金沢の現在の中心部の町人が,古くから氏子だった神社はと言うと,金沢に前田利家が乗り込む前からある,こちらの石浦神社です。建物は,明治時代にこの場所に移転したときのものですが,歴史は加賀藩・金沢城・兼六園のどれよりも古いものです。

場所は,市役所と旧県庁(しいのき迎賓館)のある広坂通りの奥,広坂交差点の角です。今では,21美の向かいと言う方が通りがよく,兼六園真弓坂口も向かいです。

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写真左下に見える参道両脇の狛犬は,足を前に揃えた標準形。逆立ちする狛犬は,そこではなく,この参道左手奥に併設されている,広坂稲荷の前にあります。 

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こちらには来歴が説明してあって,明治24年(1891年)の建立で福嶋伊之助作とのこと。跳ね上げた足がほどよく揃い,顔は蹴り上げた方向を振り返るものです。表情にも,先ほどのような余裕ではなく,狛犬本来の睨みがあります。

すし塚

この広坂稲荷の参道の左横には,変わった塚が。

すし塚(金沢市の石浦神社)

ちょうどツツジの花がきれいな季節。あえて金沢弁の説明の前に,一句添えられています。

加賀の鮨 つやつやと良き 燈下かな 雪

掛けているのかもしれませんが,後ろに江戸後期に建てられた常夜燈台の瓦屋根が見えます。当時は,日本海から金沢の街中の燈台として見えたというもの。ここから日本海の海岸線までは標高が下がり続けるため,町家の灯りがすべて消えた深夜の江戸時代なら,そうとも思わせます。

この塚は,鮨店の組合が現代に奉納したもので,史跡ではありません。そのかわり,寄進した店名がずらり。組合に入っていない新しい鮨店も増えているものの,地場で営業をつづける店は,多くをカバーしています。観光客にも有名どころでは,乙女寿司,千取寿し,宝生寿し,太平寿し。そして,小松弥助さんが,金沢に移る前,小松の欄に入っているのがわかります。

位置関係のわかるマップが地元用に

逆立ち狛犬のネット情報もすでにたくさんありますが,おやと思って参考にしたのがこのプラン。地元向けのウォーキング用です。

出典:http://www.pref.ishikawa.jp/seikatu/kouryu/02kenkouPDF/aruku/cousemap/map9komainu.pdf|石川県

金沢駅から10km,3時間のウォーキングで,逆立ち狛犬6つが見られるもの。このうち,ひがし茶屋街から兼六園・金沢城を抜け,21美の向かいまでは,観光の定番です。

そこから金沢駅までの帰りでは,逆立ち狛犬はないものの,上に書いた尾山神社(重要文化財)と尾崎神社(重要文化財),近江町市場も通ります。すべて歩いて3時間(観光時間抜き)と計算されると,歩く観光客が増えるのもわかります。

観光とあわせてなら,金沢駅からひがし茶屋街まで直行すれば,約30分短縮できて,ほかの観光スポットやお店の切れる区間もなくなります。ウォーキングが習慣の方には,ちょうどよい街歩きでしょう。

バスでも行ける各神社

観光スポットから離れた以下の神社でも,どれもバス停から徒歩数分。ただし,観光客をほとんど見ないところです。

  • 浅野神社:周遊バス小橋町下車徒歩4分
    以下は路線バスだけが通るところ。金沢駅からはJRバス・東長江または森本方面行,香林坊など市内各所からは,北鉄バスの橋場町経由柳橋・東金沢方面行で,山の上・春日町・鳴和の順に止まります。
  • 児安こやす神社:鳴和下車徒歩6分
  • 鹿島神社:春日町下車徒歩7分
  • 小坂神社:山の上下車徒歩6分

このうち,小坂神社は,松尾芭蕉が「奥の細道」で金沢を訪れたとき,句会を開いた場所で,碑が建っています。また,鳴和バス停から児安神社の間には,江戸時代から続くやちや酒造があって,予約すると酒蔵見学ができます。300円ですが,お酒購入の場合は同額分割引くので,何か買うなら実質無料です。

逆立ち狛犬は石川県の神社113箇所に

上のコースマップによれば,石川県には逆立ち狛犬が113あるそうです。数の多さもそうですが,1桁までカウントされていることが,また驚きです。