北陸新幹線で行く,はじめての金沢

お庭,お菓子,お魚,お酒が揃う城下町をまわるため,金沢出身・東京在住者が往復しながらヒントを書いていきます。

ミシュラン富山・石川(金沢)版が初公開,金沢の星2つは日本料理と鮨

石川のレストランは星2つが9店,星1つが21店

5月31日の午後に,ミシュランの地域特別版である富山・石川(金沢)版がネットで先行公開されました。特別版とは,1回限りの出版計画で,毎年の改訂がないものです。

星の数ごとの店舗数は以下の通り。石川県は,過去の地域特別版と比べても,都市規模に見合う順当な数を獲得しています。

地域特別版の星付き店舗数(2016年5月31日現在)
地域 レストラン 旅館の料理 合計
店数
*** ** * ** *
北海道 2 10 42 54 0 3 3 57
富山 1 1 8 10 0 0 0 10
石川 0 9 21 30 0 4 4 34
広島 1 5 17 23 0 1 1 24
福岡 1 9 26 36 1 0 1 37
佐賀 0 2 0 2 0 0 0 2

なお,星3つは全国で33店だけ。それも,上の表以外で,毎年改訂される東京周辺と関西に集中します。地方では,札幌2店,広島1店,福岡1店。大都市でも,横浜,川崎,北九州はゼロ(ただし藤沢に1店)と希少です。そこに今回,富山1店が加わりました。

一方で,星付きレストランの数では,石川は富山の3倍。人口が2.7倍の広島も上回り,店の集積はよく評価されています。

旅館として4店の料理に星1つ

今回の石川県の星の特色は,旅館部門の料理の評価で星1つが4店と,刊行済の都道府県で最多となること。このうち,浅田屋金茶寮きんちゃりょう和田屋わたやは,宿泊しなくても,昼夜とも食事だけの利用ができる,歴史ある料亭旅館。ミシュランのレビューでも,星については各店の料理をとりあげていて,建物や部屋の快適さマークとは別の評価です。

旅館の料理で星付きは,全国で13店。うち4店が石川県,うち2店が金沢市と,比率でもなかなかの健闘。もっとも,未刊行地域が大都市の名古屋をはじめとして多く,料理星付き旅館が今後どの程度増えるかは,新たな刊行地域の情勢次第です。

温泉旅館の料理には星が付かず

石川県の料理星付き旅館4店は,いずれも数室程度と小規模。うち上に挙げた3店は,料理だけの利用も多い料亭のスタイルで,お風呂は温泉でも露天でもありません。

対して,温泉旅館は,海や湖,渓谷の眺めや,露天風呂付の部屋など高水準のしつらえがあっても,料理に注力する小規模の別店や新店も含めて,星が付きませんでした。大手旅行代理店などで旅館として高評価でもです。

全国で13店の料理星付き旅館でも,部屋数が多い旅館はなく,温泉は4店だけ。料理には譲れない基準があるようで,温泉や眺望との「合わせ技」で星が付くことはなさそうです。

以下は,石川県の星の傾向で気の付いたことを。

星2つはすべて,星1つも2/3超が日本料理と鮨

星の付いた店を,ジャンルごとの構成でみると,石川の食の特徴がわかります。配列は,地域ごとで原典の出力順に準拠。()に地名のないものは金沢市です。

星2つ

星1つ

  • 日本料理9店:玉泉邸,つば甚,いけ森,ゆづる,さかい,山錦楼,鈴おき(白山),まつ家(小松),へら亭(加賀)
  • 旅館部門の料理4店:浅田屋*,金茶寮*,和田屋*(白山),さか本(珠洲 すず)
    *は食事だけの利用可
  • 鮨5店:みつ川乙女寿司八や志の助きく家
  • 天ぷら1店:小泉
  • フレンチ6店:ベルナール,レ・サヴール,Makino,ラ・ネネグース,エンヌ,夢喰庵ばくあん(羽咋はくい)

星2つは日本料理と鮨。星1つの21店のうち15店は,日本料理・鮨・天ぷらです。やはり,地物のかにや甘えび,ぶりなどをはじめとする魚介類を強みとして,それを活かせるジャンルが評価される地域。

ただし,星2つで鮨は1店だけで,日本料理は8店。星付き全体でも,鮨6店より日本料理17店の方がずっと多いのは,意外でした。店数としては,鮨よりも日本料理。ネタは地域で横並びで,同様の握りだけでは高評価にならないということでしょうか。

星付きは金沢に集中する一方,市外の店には特色が

石川県の星付き店30店のうち,24店は金沢に集中しています。ほか1店は,野々市市ののいちしの鮨店で,金沢から切れ目のない住宅地。バスがわずかな場所で,金沢駅や市内のホテルからタクシー2000円台で行かれる方が多いでしょう。

金沢市外では,日本料理で小松市の2店,白山市(旧松任市域)と加賀市1店ずつ,フレンチで羽咋の1店が星付きに。さらに,旅館部門ですが食事だけの利用もできる老舗として,白山市(旧鶴来町域)の和田屋が星1つ。こちらは季節により囲炉裏で焼く鮎のほか,鹿や猪なども使われるなど,特色あるところは,よく調査されています。

他の例としては,小松の安宅漁港近くにある料亭・まつ家は,漁船の通る梯川沿いに灯台の見える数寄屋造り。個室の料亭としては全国でも希有な立地と店構えと感じます。

一方で,ネタでは金沢を凌ぐはずの能登の鮨店が星付きとならなかったのは,残念。能登の星付きは,フレンチが1店と,旅館部門の料理で温泉でない1店でした。ただし,石川県の鮨店で唯一星2つの「めくみ」は,金沢の南隣の野々市にあって,仕入れを能登半島の七尾まで,毎朝店主自身で行うこだわり。こちらが能登水揚げのネタを主体として獲得された星2つとも考えられます。

星付き店の過去記事を

たとえば過去記事から,鮨について星1つとなったお店。上にこんもりと青い卵の乗った甘えびは,金沢ならではのネタと特徴ある握りです。閉店された小松弥助の門下として貴重な一店。

次は,ひがし茶屋街の星1つの鮨店の姉妹店。姉妹店なら予約なしでも入れることが多く,カウンターで一貫ずつ出される鮨としてはリーズナブル。このうち金沢駅店は,この水準の鮨店としては珍しく,昼から夜へ通し営業で,旅行や出張での合間にも食べていける都合のよさです。

金沢市認定の料亭から4店,さらに旅館として2店

日本料理では,過去記事に書いた金沢市の補助対象の老舗料亭から,星2つが2店(つる幸杉の井),星1つが2店(つば甚山錦楼)。それに加えて,旅館部門で,浅田屋金茶寮の料理が,それぞれ星1つです。このほか,建物の要件だけで補助の対象外となっていますが,料亭・銭屋が星2つに認定。

補助金の対象料亭のうちミシュラン星付き率は50%。補助時点では結果がわからない海外の第三者評価としては,なかなかの成果の補助事業といえます。上の写真は,その金茶寮。

また,星1つの山錦楼は,犀川大橋を片町から南へ渡る人なら,寺町にショートカットする坂の途中に見覚えがある,大正時代の木造3階(一部4階)建で金沢市指定保存建造物。それでいて,現在でもホームページやFacebookなどがまったくないお店です。完全予約制のため大きな看板もなく,料亭だとは気付かない建築。口コミもほとんどないところを,よく見つけられました。なお,ここも住所は寺町で,寺町は繁華街ではないのに,ミシュラン星付き3店(つば甚,金茶寮,山錦楼)の町に。さらに,杉の井もこの一角で,星付き4店が集うエリアです。

なお,上の老舗料亭でのキャリアを経て,独立開業されたお店では,少なくとも3店,星付きが確認できます。学校に対する補助金と同様に,人材育成の成果もあったことになります。

料亭のうち星2つの1店は,前に記事にしていました。

料亭の星2つのもう1店・杉の井は,和カフェの別店を過去記事に。

こちらは,上の補助対象ではありませんが,星2つの料亭の,ひがし茶屋街の別店です。

その銭屋から十月屋の料理長を経て独立され,2つ星となったのが小松さん。

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カウンター形式で気軽な,現代の日本料理店ですが,夏の季節に虫籠,お花を添えられるなど,あしらいまで含めたおもてなしは素敵です。

金沢駅徒歩圏で星付きは日本料理とフレンチ各1店

古くからの飲食店街・片町周辺に老舗の料理店や鮨店が揃う金沢では,星も片町周辺に集まりました。逆に,金沢駅徒歩圏では,星付きは2店で,いずれも新店。

まず,星2つの日本料理がこちら。

駅兼六園口から右手に徒歩8分ほどの六枚交差点角。お店から徒歩5分圏に,金沢で筆頭といえるホテル日航金沢などシティホテルからビジネスホテルまで多数。その駅近から動かずに,お造りを含めた懐石料理を堪能できる希少価値です。新店とはいえ,建物は元造り酒屋をリノベートしたもので,お料理を象徴する端正な町家建築です。

駅徒歩圏内でもう1店星付きは,フレンチのエンヌ。同じく兼六園口から,鼓門をくぐって正面に直進,別院通り口を斜め右折して徒歩8分程度の白銀交差点(本町バス停)そばです。金沢駅徒歩圏の星付き店は,和洋別方向ですが,洞爺湖サミットを開催した,ウィンザーホテル洞爺時代の同僚と伝わっています。

兼六園徒歩圏にも星付き店が

こちらは,兼六園徒歩圏で唯一の星付き店。桂坂口や兼六園下バス停から徒歩4分ほどです。

新店ですが,修行されたのが上で紹介した星2つの料亭で,こちらでもキャリアは重視されているのでしょう。それは,白山市の旧松任市域で唯一星が付いた日本料理店と同じです。なお,庭と建物が江戸時代という点は,上に挙げた料亭の金茶寮と並んで,全国の星付き店としてもまれな存在になりました。

天ぷら1店は会席料理志向

天ぷらは1店,小泉さんのみ。生の魚介類で満足されがちな金沢では,もともと天ぷら専門店の数がわずか。それでいて星付きとなるからには,作り込まれた先付や,お造りやお椀もあわせたコースがあって,会席料理の満足度も得られます。

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さくさく,あつあつの天ぷらの上に,冷たい生うにを後のせ。さらにわさびで締めます。ほどけゆく温度差と食感の差が,喩えようのない旨み。奥に竹のそよぐ,ゆとりある白木のカウンターのしつらえで,考えられた一品をいただけます。

イタリアンや中華料理は星付きゼロ

一方で,星付きがゼロだったジャンルは,イタリアンと中華料理など。このジャンルで星付き店がないのは,強みのある魚介類の活かし方に,限りがあるからかもしれません。むしろ,地場に競合店が少ないだけ,今後の新規参入の余地は大きいともいえます。

新天地の鮨の新店に星1つ

海外からの来訪にも応えるよう,店構えやしつらえも重視されると言われる中で,新天地の鮨の新店・きく家が星1つとなったのは,希望の星。新天地とは,繁華街片町の裏通りで,きく家はその中でも「中央味食街」と呼ばれるディープなエリア。1階建ての簡素な長屋の造りの店が,壁1つ隔てるだけで密接しています。

東京の路地裏の飲食店街でいえば,新宿ゴールデン街を,地方都市のスケールと時代感にしたところ。そういうエリアですから,多いのは居酒屋やスナックです。そこにミシュラン星1つの鮨店というのは,今回の公開で一番のサプライズでした。

なお,これ以外のサプライズ,たとえば「金沢おでん」や「金沢カレー」で星付きはありませんでした。旅行では人気の「海鮮丼」も,作りこまれた鮨の評価に至らないのは,妥当な結論。また,長くオイルマリネされたビーフステーキ限定のお店も,驚くほど簡素な店構えとともに,他にないスタイルとしてよく取り上げられますが,収録されませんでした。

特別版なので改訂は未定

このミシュランは地域特別版で,1回限りの刊行予定。一発勝負で,その後伸びましたとか,普通になりました,という再評価の計画はありません。北海道,広島,福岡なども,今のところ同様です。

しかし,開業数年目でもキャリアが認められて星付きとなった店も複数あり,店の歴史は必要条件でないこともわかります。何年後でもよいですので,新店も含めた再チャレンジのもとに,次の改訂版を期待したいところです。