ひがし茶屋街では,お茶屋のままに営業する店は少なくなる一方,内部をうまくリノベートした多様なジャンルのお店が集まってきています。
こちらは,茶屋街の景観に溶け込む,フレンチの東山ロベールデュマ。
メインストリートの一本北側の小路で,左隣は和菓子店の森八の和カフェという場所。昼は観光客も多くなった通りで,アクセスは最後にあげる過去記事のマップにあげています。
ひがし茶屋街で統一された白い行灯に,藤色の暖簾が印象的。遠目には和のお店で,フレンチ・レストランと気付かずに通り過ぎる観光客も多そうです。
シェフはフランスで修行された方で,こちらに移転される前から,もともと市内の名店。それに加えて,ひがし茶屋街での食事を考える観光客が増えた現在では,昼夜とも早めの予約が必要です。
地物の魚介も活かす変化のあるコース
まずは,うにを帆立のソースをふくんだジュレがけで。
うにの濃厚なこくが,帆立のうまみで一層引き立てられます。
メインがお肉のため,ワインは赤を選ぶことに。昼なので,値頃感もあるところで,ボルドーのシャトー・モンタロン(Chateau Montalon)を,ソムリエの女性店長さんのおすすめで。
カウンター席もあって,おひとり様でも気楽なつくり
二品目は,地物の魚介を活かすように,フレンチですがあえてカルパッチョ。甘えび,ひらめ,まぐろ,さば,さらに,みずたこと,食感とうまみの異なるものが揃います。
このようなオープンキッチンに面したカウンター席のほか,テーブル席と,2階に個室があります。カウンター席があるので,おひとり様を含む少人数でも浮きません。
甘えびに青い卵が添えられるのが,漁場が近い金沢ならではの品。それをカルパッチョ仕立てにすることで,素材の個性を酸味で包み込む味わい。そこにトマトが合います。
手前には加賀野菜の金時草(きんじそう)がアクセント。ほうれん草とわかめの中間のようなしゃきしゃきした歯ごたえで,さらにわずかなぬめりが,めかぶのようでもある,珍しい野菜です。
もちろん,コースの前に食材の好みが尋ねられ,お魚などがだめな方でも対応できます。
フォアグラの脂身をつつむポルトソース
さて,フォアグラのポアレをポルトソースで。
オープンキッチンということもあり,ナイフとフォークに箸も添えられる,堅苦しくないスタイル。一方で,ワイングラスは脚の部分が九谷焼のおもてなしです。
フォアグラならではのしっかりとした脂身に,酸味と甘味が調和したソースがからみます。キウイが添えられているのも印象的です。
真鯛のポワレに白子と蟹が
そして,真鯛のポワレ。
右上の付け合わせは,これも秋から冬がおいしくなる,たらの白子をグラタン風に。
奥には,小蕪をくりぬいて,ずわい蟹のクリームが添えられます。料理法の自由度はフレンチならではで,近海の素材のうまみが,和にはない形で引き出されます。
メインは鴨をうまみが冴えるソースで
メインは,鴨の胸肉のローストを,シャンピニオンソースで。
こちらもジューシーな焼き加減に,しっかりとした味わいのソースがからみます。
デザートまで細かな仕事
そして,最後は細かな仕事が映えるアソートを。
カウンター席の右側やテーブル席からは,前の小路を行く観光客が格子を通して見える奥ゆかしさ。
結局ワインをほぼ1本空けてしまいました。やはり,食と酒はセットですね。逆サイドのカウンター席左側は,内側の坪庭が見えるしつらえです。
他にない店内の雰囲気とともに,記憶に残る金沢フレンチです。
斜め裏がお茶屋のしつらえを残す重要文化財・志摩
江戸時代のお茶屋さんの建築がいくつか残るひがし茶屋街だけあって,こちらのフレンチ・ロベールデュマの斜め裏は,当時のしつらえのままの重要文化財・志摩。
重要文化財指定を受けると改築ができないので,そちらには続きの棟にお抹茶と和菓子で坪庭を眺められる席をもうけています。
フレンチと重要文化財が並び立つのが,ひがし茶屋街の今の魅力
正統派のフレンチ・レストランの裏が,江戸時代建造の重要文化財というのは,他の街にはあまりないお店の集積。伝統的な食に限らず,多様な好みの人をもてなすのに,はまる店を選べる街で,ひがし茶屋街の今のおもしろさは,そこにあります。
お店へのアクセスは,和カフェやカフェバーなど他のジャンルのお店も含めて,以前につくったマップに挙げました。