北陸新幹線で行く,はじめての金沢

お庭,お菓子,お魚,お酒が揃う城下町をまわるため,金沢出身・東京在住者が往復しながらヒントを書いていきます。

東京駅の東海道↔東北・上越・北陸の乗換改札に残る壁:モバイルSuica特急券やEX-ICの利用不可

東京駅だけの新幹線同士の乗り換え改札

東京駅の東北・上越・北陸新幹線はJR東日本,東海道新幹線はJR東海です。両社の新幹線を,在来線に出ずに,直接乗り換えられる改札があります。しかし,その改札では,両社でシステムの違うICカード類が使えません。現状を整理すると,下の図です。

東京駅にある東海道新幹線と東北・上越・北陸新幹線の乗り換え改札でのICカード(SuicaとEX-ICなど)の対応図

新幹線同士の乗換改札は,現在は東京駅だけ。新幹線の会社境界駅は,他に,新青森,上越妙高,新大阪,博多があります。東京以外の境界駅にはすべて,直通列車があって,特急券も通しのものが存在。それら駅では,別会社間でも特別な改札はありません。会社ごとに改札から分かれている新幹線駅は,東京駅だけです。

毎時最大15本が発車する新幹線の間に

東京駅の新幹線同士の乗り換え改札を,東北・上越・北陸新幹線側から東海道新幹線方向に撮ったもの。手前がJR東日本で,奥がJR東海です。

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たとえば,仙台・新潟・金沢・大宮方面から東京に着き,東海道の新横浜・名古屋・京都・新大阪方向へ乗り換えるとき,ここが最短経路。両線のホームが並んでいるため,階段そばなら,2分ほどで余裕の乗り換えができます。

一部の発車表示が見えていますが,東北・上越・北陸は,あわせて4分ごと,毎時15本の発車が基本。奥の東海道ではやや不規則で,毎時14本ペースで発車するダイヤです。あわせて毎時29本の新幹線が全国へ出発する点で,高速鉄道としては世界で最過密のターミナル。それは,東京一極集中の原因とも,結果ともいえます。

ここはEX-ICやモバイルSuicaで通れません

この都心ど真ん中の改札に,「Suica・EX-IC通れません」と大きな警告。片方でも,モバイルSuica特急券Suica定期券なども含む)かEX-ICスマートEXも含む)の場合は,ここを通れません。掲示では,有人の通路でも対応できず,上の図のように新幹線→在来線→新幹線と回れという指示。すると,大きく迂回する経路で,5分でも不安です。

ちなみに,東海道側から東北・上越・北陸側を見ても,同じ警告です。

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この乗り換え改札の利用者は,一つは仙台↔名古屋といった大都市間の流動で,片道3時間ほど。また,メーカーの多い北関東と中京・関西間の出張需要も堅調です。それらに加え,一方の新幹線を東京まで,通勤・通学の定期券で乗っている乗客も多く,その先に出張や旅行のとき,ここを通れれば便利です。

その際,どちらかがICカードかモバイルSuicaで,この最短経路が通れない面倒は,多発しているはず。しかし,両システムに対応する費用が巨額だからか,費用分担で両社が折り合わないのか,改修されていません。

囲い込みを図る新幹線のICカード

両新幹線で,紙のきっぷを受け取る必要のないICカード類は,まったく別です。

東海道・山陽では,専用のクレカを作らせるエクスプレス予約会員に,ICカード・EX-ICを発行しています。一方,東北・上越・北陸では,定期券の他は,JR東日本系のビューカードとその提携カードで決済させる,モバイルSuica特急券です。どちらも,自社関連のカードへの囲い込みです。

モバイルSuicaの機能は広げ,クレカ縛りは残すJR東日本

すでに,モバイルSuicaには,EX-IC機能を付加できるため,モバイルSuica万能感もあるところ。しかし,決済に使うクレジットカードとして,JR東日本と東海のものは利用できる一方,JR西日本のものは利用不可です。ここでも,JR3社がからむとだめという,毎度の限界。モバイルSuicaの機能を拡張しているものの,クレカの種類は,自由になっていません。

一部でクレカ縛りを外して会員を増やすJR東海

対する東海道・山陽では,スマートEXを2017年9月30日からはじめています。これは,手持ちのSuicaやPASMO,ICOCAなどの交通系ICカードと支払に使うクレカを登録すると,発券せずに,そのICカードで東海道・山陽新幹線に乗れるもの*1。クレカを特定しない点は,新幹線に乗れるICカード類では初。しかし,専用のクレカを持たせるEX-ICと比べて,割引は限定的で,グリーン車に乗れるポイントも付きません。その実態は,ライトユーザーを取り込むための,エクスプレス予約の下位互換サービスです。

両陣営は別の進展で,比較はますます面倒に

結局,新幹線のICカード類は,基盤が共通化される方向ではなく,JR東日本とJR東海それぞれが,自社のシステムの利用者を増やそうとする,主導権争いの最中。両対応の自動改札機を開発する誘因は,どちらにもなさそうです。

これだけあると,区間,予約と支払,発券の条件によって,安くて便利な乗り方は変わります。それには,JR東日本(えきねっと),西日本(e5489),モバイルSuicaエクスプレス予約スマートEXの比較が必要です*2

この制限の説明は,FAQと定期券の解説に

ところで,この乗り換え改札がSuicaとEX-ICなどでは通れないことは,公式サイトの利用方法の説明では,すぐに読み取れません。

上の説明では,現場ではじめてわかる人も多そうです。

読み進めると,エクスプレス予約のサイトでは,「よくある質問」に長い解説があって,調べてはじめてわかる状態。

東京駅で、東海道・山陽新幹線はEX-ICサービスを利用し、東北などの各新幹線と乗り継ぐには?|エクスプレス予約

Suicaでは,Suica FREX定期券などの注意のかなり下の方に,説明があります。

Suica FREX定期券・Suica FREXパル定期券での利用|JR東日本

この乗り換え改札は,東京駅の構内図に記されています。紙のきっぷで通れた情報や構内図をもとに,この乗り換え改札をあてにして,EX-ICやSuicaの利用でタイトな乗り換えを組んでしまうと,現場で大慌てが必至。EX-ICやSuicaの説明には,東京駅の新幹線同士の乗り換え改札が通れないことの注意が必要と思います。

東京駅にあるJR東日本とJR東海の壁

新幹線の会社境界が,東京駅だけ厳然としているのは,直通列車がないからですが,技術的に不可能なのではありません*3。東北・上越新幹線建設時から東海道新幹線との直通構想はあって,後でJR東海が拒絶に転じたことが知られています。

記事にあるように,現在の東海道新幹線の14・15番線ホームは,直通を前提に東北・上越新幹線共用として建設されていたもの。しかも,新設する側の東北新幹線の建設費によってです。そのホームを上野方向に撮影したのが下の写真。

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左のホームが東北・上越・北陸新幹線の22・23番線,フェンスの向こうが東海道新幹線の14・15番線です。東海道では14・15番線だけ,JR東海の施設の丸の内側に入り,東北・上越・北陸新幹線の線路と接するようにカーブして,中途半端に延びています。しかし,終端は素朴に砂利の車止めです。

なお,フェンスの手前はJR東日本で,向こうはJR東海ですが,車両が両方に乗り入れる会社がただ一つあります。それがJR西日本です。偶然ですが,この写真で,東海道のホームに停車するN700系は,車両ドア右下にあるJRのロゴが青いことでわかるように,JR西日本の車両でした。フェンス手前には,北陸用のJR西日本の車両,W7系が入ることがあります。

フェンス奥のホームは,計画では,東海道と東北・上越とを直通できる共用だったもの。その直通構想の断念で,当時はホームが逼迫していた東海道新幹線専用に転化,国鉄の分割民営化でJR東海の所有物となってしまいました。

東北・上越・北陸が成長して,現在は東海道よりタイト

それが現在は,東北・上越・北陸で毎時15本の発車を2面4線でさばくのに対して,東海道は毎時14本の発車を3面6線でさばくダイヤ。東京駅の新幹線ホームは,今や,東海道より東北・上越・北陸の方がタイトです。にもかかわらず,当初計画では両新幹線共用だった14・15番線ホームが,JR東海で東海道用になっているという,皮肉な現状です。

直通拒絶によるホーム不足の結末:中央線が上へ

日経の記事では触れてありませんが,東北・上越新幹線で当初計画のホームが使えなかったことは,無関係な別路線の乗客に影響を及ぼしています。

ホームを別に1つ増設せざるをえなくなった東北・上越新幹線では,JR東海の所有で寸分も譲らない八重洲側への拡張は不可能で,建設は丸の内方向の在来線ホーム側へ。玉突きで,ホームが丸の内側へ1つずつずれ,丸の内側の赤煉瓦の駅舎すぐ横の中央線が,結局上階に押し上げられました。中央線が上階で,アクセスが面倒なのは,玉突きの最後の行き場が上空しかなかったということです。

東京駅で中央線の特別長いエスカレーターを使うたび,JR東海の拒絶からはじまって,当初の直通構想が頓挫し,結果として玉突きされるまでの長い経緯が思い出されます。

京都・新大阪の新幹線乗り換え改札はどうなるか

新幹線同士の乗り換え改札が,「現在は」東京駅だけという,冒頭の話。現在と断ったのは,将来はもう1駅か2駅,作られる可能性があるからです。それは,北陸新幹線が京都・新大阪へ延伸したときに,両駅で東海道・山陽と北陸新幹線を乗り換える改札です。

東京駅で北と南逆方向へ向かった両新幹線は,再び京都で出会います。たとえば,上の写真では,9時20分に,のぞみ号新大阪行とかがやき号金沢行が,逆方向に同時出発しています。このかがやき号は,北陸新幹線新大阪延伸後は(愛称は不明ですが)そのまま金沢経由新大阪行になる可能性が高いです*4。それで,京都・新大阪駅では,東京駅の乗り換え改札と同じ問題が浮上します。

とくに,新大阪駅では,JR西日本の運行区間が,山陽新幹線から北陸新幹線へ長く続くことになり,自社だけの判断で割引きっぷが設定できる区間が拡大します。そして,北陸新幹線の新大阪開業時には,関西から長野はもちろん,高崎までは,現在の東京経由よりも北陸経由が速くなります。

すると,新神戸や姫路などと北関東間の乗客が,東海道と北陸にどう分かれるかが,北陸新幹線の費用対便益を左右するところ。どちら回りも乗り換え1回で,距離と時間は互角になります。その選択には,ダイヤや料金と共に,新大阪駅での山陽・北陸新幹線の乗り換え改札の利便性が鍵ですが,さてどうなるでしょうか。

*1:スマートEXがSuicaなどを使う点で誤解がありそうなのは,新幹線の運賃・料金は,改札にタッチするSuicaなどの残高と無関係に,登録したクレカから引き落とされる点です。一方,JR東日本の新幹線には,並行する在来線区間のSuica定期券で乗る場合,特急料金をSuica残高で引き落とす仕組み(Suica定期券)があります。両者はSuicaなどを改札にタッチして乗車するものの,支払方法はまったく異なります。

*2:会社ごとの予約システムや割引きっぷの体系の違いで,意外な予約方法が最安という場合があります。北陸新幹線の例だと,東京→軽井沢などのJR東日本で完結する区間でも,速いタイプの列車・はくたかに乗るなら,JR西日本のe5489で購入できるeきっぷの方が安くなる現象などです。よくある,JR1社の情報をまとめたサイトでは,こうした比較には触れられていません。

*3:当初,直通に最大の障害だったのは,東海道が60Hz,東北・上越が50Hzと,電源の特性が異なる問題でした。しかし,その後の北陸では50Hzと60Hz区間が混在し,両対応の車両ができて,解決済み。残る問題は,信号などの列車運行のシステムだけで,要件を満たすハードが存在しないからではありません。結局は,お金の問題だけです。

*4:北陸新幹線は,長野駅で乗務員がJR東日本から西日本へ交代します。その先,長野から金沢までは現在約1時間。新大阪まで完成すると,長野・新大阪間が約2時間20分と,驚きの速さです。
 そこで,列車を金沢または富山終着や始発として,東京方面と新大阪方面に分断すると,JR西日本側では,1時間程度の細切れ乗務と,清掃など折返しのロスタイムが多発して,著しく非効率です。効率的なのは,金沢や富山で折り返さず,長野・新大阪間2時間20分を通し乗務とし,ロスタイムを最小化する運用。すると,少なくとも速達列車は,金沢を越して,東京発金沢経由新大阪行となる可能性が高いでしょう。
 また,そうすることで,東京↔北陸と北陸↔関西の乗客に,直通する1列車で対応でき,全区間の乗車率を高められます。たとえば,富山で東京から来た客が降りた席に,関西へ向かう客が富山で座れば,座席効率が最高の運用。その席が関西方面への客で埋まるのが早い段階(金沢や福井)となるほど,座席の効率は高まります。それは,金沢折返しでは不可能です。
 北陸新幹線は両端が大都市圏で,旅客需要は末端に向かって単調減少でなく,中間がフラットに近いU字型。それが,他の整備新幹線にない特長で,全線開業と直通運転で,このメリットが活かされます。