北陸新幹線で行く,はじめての金沢

お庭,お菓子,お魚,お酒が揃う城下町をまわるため,金沢出身・東京在住者が往復しながらヒントを書いていきます。

金沢でお抹茶と和菓子をいただけるお店リストとGoogleマップ

おもな観光スポット周辺にお抹茶のある店が30カ所超

多様な飲食・菓子・工芸品店が集積するひがし茶屋街だけでなく,どのエリアでも,徒歩圏で抹茶と和菓子をいただけるのが茶の湯と菓子処・金沢。そのはじまりは,千利休の曽孫で裏千家を築いた千仙叟宗室が,加賀藩の茶道茶具奉行として迎えられたこと。マップにまとめて,自分で撮影した写真とともに紹介していきます。

中でもお店が集中するひがし茶屋街から,駅近,兼六園周辺,広坂,長町武家屋敷,にし茶屋街へと南下する順です。

ひがし茶屋街

ひがし茶屋街は飲食店や工芸品店街へと変貌して,抹茶が楽しめる店も多くあります。ここでは,店構えや雰囲気,待ち行列などを見て,自分に合う店を選んでもらうのがよいです。その探索が,ひがし茶屋街に行く価値でしょうから。

和カフェ以外のお店も含んだ,ひがし茶屋街のマップは,下の別記事に。

茶房一笑(予約推奨)

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加賀棒茶メーカーが販売も兼ねたカフェを開いているもの。ひがし茶屋街でも,席数の少ない人気店のため,予約が推奨されています。上生菓子は高砂屋製。

金澤東山しつらえ

金箔メーカー・箔一が,ひがし茶屋街でもっとも人通りの多い広見の角地のお茶屋跡に,工芸品の展示を兼ねてカフェを出しているもの。(もとは,浅田屋の日本料理店・螢屋で,昔の地図やガイドブックでは,その店名が残っている場合があります。)

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上生菓子は森八。器は飴釉の大樋焼・大樋年雄作と,他のカフェにはないもので。

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お抹茶だけでなく,コーヒーの他,和風のパフェなども一通り揃えています。

志摩・寒村庵

ひがし茶屋街で唯一の国指定・重要文化財のお茶屋さん跡。茶屋建築が重要文化財となっているのは,日本でここだけ。そのため,建物と内部の構造が,江戸時代の建造当時のまま残されているのが特長。

金沢ひがし茶屋街の重要文化財・志摩

奥の寒村庵では,内庭を眺めながら,掘りごたつ式のカウンター席で呈茶を。

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こういうスタイルのため,おひとり様でも気楽です。

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露を打った葉のあしらいで,和菓子が草花の美しさを映していることがわかります。

森八茶寮・ひがし三番丁店

先ほどの店のあるメインストリートから,1本奥(北側)の通り。右隣の紫の暖簾は,ひがし茶屋街のフレンチの名店,ロベール・デュマさん。

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坪庭を囲むように席があります。

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最近は,お客さんが増えているようで,道路に面した格子の内側も,外向きのカウンター席になりました。その分,おひとり様でも入りやすくなったかも。

森八は,ひがし茶屋街だけで,この他にも,ひがし二番丁店うつわの器店と2店舗があります。うつわの器店では,和菓子をコーヒーにあわせる,別のスタイルのカフェ営業があります。二番丁店にはカフェはありません。

懐華楼

お茶屋さんを,昼だけ予約なしの和カフェの営業としているもの。2階のお茶屋の見学は,別料金で。

とくに縁故がなくても,予約することで参加できる芸妓さんの宴席を,英語の案内があるものも含めて不定期に催しているので,英語圏の方の訪問も比較的多いお店。

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カフェ営業としては,独特のいろりを囲むカウンタータイプの席か,

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畳敷きの長机で。

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お抹茶に合わせられるのは,個包装の黄味しぐれ。この他に,金箔を贅沢に使ったくずきりや,季節によりぜんざい,かき氷などのメニューも。

茶房素心(そしん)

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コーヒー主体のカフェですが,このスタイルでは珍しく,抹茶と上生菓子のセットもあります。内部は吹き抜け空間をもつようにリノベートされていて,1階,2階ともにテーブル席,1階にのみカウンター席があります。そのため,おひとり様の方が,待たずに入れる可能性があります。

抹茶に合わせられるのは,吉はしの上生菓子で,店頭にその日の菓銘があるのがよいところ。その他カフェ系のメニューも,店に入る前にわかります。

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パフェなどのスイーツもあって,こちらは抹茶のブランマンジェ(blanc-manger)。適度な渋さの抹茶に,ホイップクリームと粒あんで甘味を調節できるのがよいところ。こういうのは,相応の抹茶を仕入れてある,抹茶自体を出せる店で頼むとよいです。

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久連波(くれは)

1階にカウンター席のほか,2階はお座敷に長机形式で。上生菓子は吉はし製を合わせます。メニューにはコーヒーなども。

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加賀友禅のお店・ゑり虎の出店のため,1階には和の小物系を中心としたお土産物の販売も。和服のレンタルと着付けなども,ここでできます。

波結(はゆわ)

ひがし茶屋街のメインストリートを見通す好立地に,2016年4月に開店した新店です。もとは美容室で,Googleマップなどでは,以前の看板「コールドパーマ」の名称が残っています。

2階には内側までテーブル席が並びますが,窓側席が空いていれば,屏風状の簾戸の上から,このような眺めに。

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ガイドブックでよく観る風景を,2階から眺めています。このお店は,ここから1つ北側の路地の工芸品店・縁煌(えにしら)の2店目で,お抹茶と上生菓子もこのような器で。

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他に,写真のような抹茶パフェや,抹茶アフォガードなども。

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町家の構造上,窓際には近づけず,食べ物と景色を同時に写すのは難しいところ。抹茶パフェは,わらび餅などが特徴的で,ソフトクリームを載せないスタイルです。

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なお,同じ建物の1階奥には,別の和菓子店・菓舗Kazu Nakashimaが入っています。

十月亭(じゅうがつや)

料亭・銭屋がひがし茶屋街に出す日本料理店で,午後2時でランチタイムが終わった後,お茶やお酒だけの利用が可能。

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江戸時代のお茶屋の建築を,玄関はそのままに,内部を一人でもくつろげるコの字型カウンターと個室にリノベートしてあります。靴を脱いで入りますが,カウンターは掘りごたつ式で,足を伸ばせるスタイル。

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カウンターから,内庭と玄関を見通す構図。日本酒もこのような酒器で。

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ジャズが流れるのが,客層にはまっています。

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中田屋の和味・東山茶屋街店(カフェは2階)

1階が,きんつばを看板とする老舗和菓子店で,その2階がテーブル席のカフェ。

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2階は絨毯敷きの広間にテーブル席ながら,床の間に生け花と喫茶去の掛け軸を。

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和味としては,近江町市場対面のデパート・めいてつエムザ地下1階にも,中田屋の売場奥にコンパクトな和カフェがあります。和菓子だけでなく,ロールケーキ等もあるのは,こちらの東山茶屋街店だけ。

おそらく以上で,ひがし茶屋街で抹茶と和菓子を頼めるお店は網羅。ここまで,10店舗です。

なお,この街は,門前町などの茶店(ちゃみせ)街ではなく,芸妓さんのお座敷がある茶屋(ちゃや)街です。お茶屋さんの建物に,もともと老舗の和菓子店の本店はなく,野菜の蜜菓子を創作する奈加川が後で進出された他は,すべて出店です。

先ほどの中田屋や森八は,その店構えから,たまに本店と勘違いされますが,どちらも出店の一つです。より大きな本店と工場があります。

この他,金沢の和菓子店では,森八とならぶ規模で,毎年何か新作が期待できる小出には,ひがし茶屋街も販売店だけで,和カフェがないのが残念。同じく創作に定評のある,うら田も和カフェがありません。近年成長中のたろうの和カフェは,後で出てくる長町武家屋敷にあり,ひがし茶屋街にはお店がありません。

金沢駅近

ANAクラウンプラザホテル,カスケイド・ラウンジ

金沢駅兼六園口(東口)を出てすぐ右手徒歩約1分と好立地。セットメニューとして,現在も続いています。お抹茶に飾り金箔が浮いているのが一工夫。

なお,ホテルのラウンジなので,ガトー全般やパフェなどのスイーツ,コーヒーや紅茶なども,ふつうにあります。

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駅ナカ金沢百番街金沢港口(西口)側くつろぎ館1階の不室屋カフェは,抹茶ラテとかあんみつ,ぜんざい系はありますが,お抹茶自体と,あわせる和菓子はないです。

足湯カフェ・トキ(閉店)

なお,金沢駅兼六園口から武蔵ヶ辻・近江町市場への中間には,足湯カフェがあったのですが,残念ながら閉店されています。

武蔵ヶ辻(近江町市場対面)

めいてつエムザ1階・黒門小路・茶庵黒門(さあんくろもん)

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セットされるのは,越山甘清堂の上生菓子のはずですが,このときはクリスマス・シーズンで,創作が得意な「うら田」のサンタをかたどった上生菓子でした。

こちらはコーヒーもあるものの,写真のように,対面の近江町市場から見て,スターバックスの斜め奥と,強気の立地。

中田屋の和味・めいてつエムザ店

ひがし茶屋街でも登場した中田屋が,そのデパ地下1階に構える売場奥のスペースです。新幹線開業を前に,1階におみやげ品を集めた黒門小路ができて,地下1階に金沢を代表する和菓子が何店舗もあるのが気付かれにくくなりました。それらお店なら,お菓子の種類はこちらの方が豊富です。

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テーブル3卓ほどのこぢんまりしたスペースですが,和菓子店ならではのセットです。なお,洋菓子類のセットは,ひがし茶屋街の出店だけです。

越山甘清堂本店・越山茶房

めいてつエムザの裏通りをさらに入ったところで,そこが本社工場です。和菓子づくりの体験も行っています。

近江町市場・十間町(じゅっけんまち)口向かい

森八茶寮・近江町店(森八近江町店)

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近江町市場・十間町口ほぼ正面なのに,あまり気付かれにくい店。席数も20は超えていて,コーヒーなども提供。内向きながらカウンター席もあって,混雑時におひとり様でも入りやすい形態。街中にしては珍しく,店舗横に数台の駐車場があります。

なお,同じ通りを東側に進んだ,こちらも有力和菓子店,村上・十間町店は,お茶できるカフェがありません。隣がバスの駐車場ということもあって,観光客が多数入っているのに,もったいないです。

尾張町・下新町

不室屋本店・茶寮不室屋

江戸時代から続くお麩の老舗で,東京のデパ地下(池袋西武など)にも何店舗か出しているお店の本店です。武蔵ヶ辻バス停と尾張町バス停の中間あたりの大通り沿いで,近江町市場駐車場の対面にあたります。

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写真の本店に入って右奥が,蔵をリノベートした不室屋茶寮。午後2時までは,麩料理の専門店としての営業で,料理と一緒の場合に,抹茶とお麩屋さんならではの生麩まんじゅうを注文できる形式です。それ以降は,甘味だけのオーダーができ,気軽に入れます。

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餅は餅屋,お麩はお麩屋さんということで,グルテン由来の弾力が独特です。この他,麩焼きなどを特徴とした不室屋パフェや,生麩ぜんざいなどもメニューに。

小路を挟んで左隣には,甘味処の不むろ茶屋を併設。そちらは,セルフサービス形式で,ベンチで食べるタイプです。上の写真のお抹茶と生麩まんじゅうやパフェ類のほか,お料理全般は,本店から入る不室屋茶寮しかありませんので,ご注意を。

上林金沢茶舗

お菓子よりお抹茶を求めるのなら,こちらを目指すのが正しいのでしょう。京都の上林春松から古くに暖簾分けされたお店。尾張町バス停から,主計町(かずえまち)茶屋街側に入った小路沿いです。

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お菓子は,吉はし製で,このときは金箔をあしらった麦羊羹に,季節により冷たい棒茶も付きました。

橋場町(ひがし茶屋街徒歩8分ほど)

大樋美術館(大樋焼十代大樋長左衛門窯)

抹茶碗を目的とするなら,金沢では,大樋焼を継承する文化勲章受賞作家の窯元へ。

大樋焼窯元である大樋美術館(金沢市橋場町)

その十代大樋長左衛門作,大樋年雄作を含む作品数点から,お茶碗を選べる趣向。お茶碗を選べるのは,市内でもこちらと,後で記す中村記念美術館だけです。

大樋焼の抹茶椀を選んでの呈茶(大樋焼美術館・金沢市)

他の行事や混み具合に応じてですが,このときは中のお茶室・芳土庵で。

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和菓子は早春で,吉はし製の雛の段。

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十一代を襲名したばかりの大樋年雄作のお茶碗でのひとときでした。

大手町(橋場町バス停下車徒歩3~5分)

森八茶寮・本店(森八本店2階)

上の大樋美術館の斜め向かいに移転新築された,老舗和菓子店の大きな本店。とはいえ,工場はさらに郊外ですが。

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市内でお抹茶をいただけるお店で,もっとも席数があり,30人以上は入れます。

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カウンター席もあり,一人でも気兼ねがありません。窓側カウンター席からは,次に書く武家屋敷・寺島蔵人邸のお庭が見渡せます。

街中でお抹茶を出している店では数少ない,敷地内に平置の無料駐車場のある店ですが,混雑する休日は満車ぎみです。

寺島蔵人邸(森八茶寮・本店のカウンターから見下ろしているお庭)

加賀藩の中級藩士・寺島蔵人(くらんど)が住んでいた武家屋敷で,1777年の建造。後で出てくる長町の武家屋敷とは異なり,周囲ではこの一棟だけが残っているので,ひっそりとしています。

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石を敷き詰める枯山水とは異なり,水を入れない枯池(乾泉)を配した庭が特徴。1808年に浦上玉堂が来訪した時に,乾泉としたためた額がかかります。

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先ほどの森八本店2階のカウンターの明かりが,庭の右上にうっすらと望めます。下の写真は,冬に訪れた時の雪吊りと,菰がかけられた灯籠。

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当時からの茶室である乾泉亭。

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お庭にはつくばいと灯籠が。

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お抹茶とあわせられるお菓子は,武家屋敷らしく,家紋の入った素朴な落雁,一方でお茶碗は当地の武家ですから飴釉の大樋焼。何より,窯元がすぐそこです。どちらかといえば,お庭と邸内を観賞する目的の施設です。

金沢に茶の湯と和菓子文化をもたらした史跡

寺島蔵人邸まで訪れたなら,前の道を兼六園方向に徒歩1分で,その発端がわかる史跡が。

茶道裏千家・千仙叟宗室居士邸地跡

千利休の曽孫で,茶道裏千家を築いた千仙叟宗室(初代の宗室)は,29歳だった1651年,加賀藩の茶道茶具奉行として迎えられました。奉行が小松城を経て,1661年(39歳)から1688年(66歳)まで,ここ金沢市大手町(当時は味噌蔵町)で暮らした邸宅跡です。

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先に記した,窯元と大樋美術館のある大樋焼も,その指導により,京都から職人を招聘したことがはじまり。現在も,和菓子が日本でもっとも買われている都市なのも,元をたどればここからです。

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こちらは現在も裏千家の私邸で非公開のため,写真は家元の書による石碑にとどめます。

兼六園周辺

金沢白鳥路ホテル山楽・ティーラウンジパルティ

その史跡から2分ほど兼六園方向へ歩いて,金沢城公園の方へ曲がったすぐが,こちらのホテル。

兼六園下交差点からは,裁判所に見えないガラス張り現代建築の金沢地裁前を通って徒歩5分ほど。裏手の木立ちの中の遊歩道・白鳥路を通っても徒歩5分ほどです。

こちらのロビーにあるカフェは,あえて外を見せず,ステンドグラスをはめこんだクラシカルな雰囲気。

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合わせられるのは,吉はしのシンプルな上生菓子で,お薄には金箔があしらわれています。なお,ホテルのカフェなので,ふつうにコーヒーなどもあります。

かなざわ玉泉邸

兼六園下交差点を観光物産館の方向に進み,向かいの路地を入った右手が,かなざわ玉泉邸。江戸時代に,加賀藩の家臣脇田直賢が作庭した玉泉園とその邸宅をリノベートしたものです。お庭から室内を見ると,写真のような風景で,室内の他,季節によってはテラス席も。

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隠れキリシタン灯籠を含め,現代では作れないような灯籠の多いお庭です。

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入口で受付をすませると,庭の鑑賞料金とセットで,テーブル席でサーブされます。庭の見学は,お茶の前後にできます。このときのお菓子は,諸江屋の生落雁で餡をはさんだ万葉の花に,お店の紋である杜若を入れたオリジナル。このほか,別の意匠の落雁なども。

兼六園内

県営の施設・時雨亭

園内でもっとも広い県営のお茶席で,和服でのおもてなし。ただし,大広間での呈茶のため,庭向きとは限りません。

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お茶をいただいてから,上の写真にある縁側で庭を眺めることができます。

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その他,民間の茶店がいくつか

兼六園は,もとは加賀藩の私庭,現在は石川県営ですが,園内には,歴史的経緯で営業が続いている民間の料理店があります。代表的なものが,三芳庵(みよしあん)です。

金沢城公園

玉泉院丸庭園・玉泉庵

兼六園から石川門を通っても行けますが,香林坊バス停から徒歩6分程度の玉泉院丸口から入るとすぐ。

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金沢城内に復元された玉泉院丸庭園と,そのお茶室・玉泉庵。正面の眺めは,江戸時代建造の重要文化財・三十間長屋。

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県営のお茶席ですが,和服の正装でのおもてなし。このときの上生菓子は小出製でした。

本多町(21世紀美術館や鈴木大拙館から徒歩5分程度)

金沢市立中村記念美術館

日栄ブランドで知られる金沢の酒蔵・中村酒造の創業家が収集した茶道具等を,金沢市に寄贈してできた美術館。本多の森を借景とした庭を眺められる室内で,ベンチタイプのいす席での呈茶があります。入館料300円(種々の割引もあり)に加えて,干菓子なら200円,半生菓子なら300円。

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特徴は抹茶椀を選べること。こちらは,九谷焼の中村基克作,面取窯変茶碗。

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合わせられる半生菓子は,諸江屋の万葉の花。比較的日持ちする主菓子として重宝するため,金沢市内各所で見る定番です。

眺めている外のお庭は,下のように後で観賞できます。秋には紅葉が一層きれいでしょう。

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灯籠の奥は,江戸時代建造の茶室を移築した耕雲庵。市営の茶室で,茶会や句会などで貸切利用できますが,ふだんは外から観賞するところまでです。

広坂(21世紀美術館市役所口から徒歩数分)

漆の実

漆器店・能作(のさく)の上階に位置する和カフェです。上生菓子は吉はし製。和菓子の色合いと複雑な凹凸が,奥深い艶のある黒の漆器で引きたちます。

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つぼみ

料亭・杉の井が出している,くずきりがおいしい和カフェ。最近の夏の時期は,凝ったかき氷も加わったようです。ただし,抹茶パフェや抹茶アイスはあっても,お抹茶そのものと上生菓子はないので,ちょっと惜しい。

長町武家屋敷(香林坊バス停下車徒歩6分)

野村家庭園・離れ2階の茶室・不莫庵

こちらは,加賀藩の中級藩士・野村伝兵衛が住んでいた江戸時代建造の武家屋敷。茶室は奥に進んだ離れの2階なので,気付かないまま帰る人も多いです。

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かがんで入るにじり口のある江戸時代の茶室。

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鯉の泳ぐ池を眺めて混雑している庭園を見下ろせます。

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武家屋敷らしく,しつらえもお菓子も質実に。お隣のたろうの,日持ちする半生菓子「地の香」です。

たろう鬼川店

その武家屋敷野村家庭園の西隣。野村家庭園が借景になる,なかなか工夫された建て方。こちらも,本店ではありませんが,上生菓子の他,コーヒーや他のスイーツなども。

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たろうは,明治創業の老舗和菓子店・村上の経営者が,近年になって別会社を作ったもの。スピンアウトの一種で,定番ものを東京も含め多店舗で扱う村上に比べ,創作と意匠に凝ったお菓子をわずかな店で出す考えです。

大野庄用水の流れを挟んで,見えるところに村上本店(本社工場は別です)があって,品揃えの比較も面白いです。

竪町(片町バス停から徒歩5分)

野田屋茶店

野田屋茶店の店構え

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こちらの売りは,抹茶アフォガード。

アイスクリームにきちんと点てられた抹茶をかけていく抹茶アフォガード

クラッシュされたチョコレートを含んだアイスクリームに,あたたかい抹茶を,そのままかけていきます。融けゆくほどに,洋から和へ変わる感覚。

クラフトギャラリー 波

ビルの3階にある,手工芸品の展示と販売も兼ねた喫茶店です。野田屋と同じ竪町通り沿いで,大通りのマクドナルドに近い方。

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コーヒーがメインの喫茶店で,「吉はしの生菓子」と書いてあると,ケーキかと思うところですが,吉はしは先ほどの「漆の実」で出ていた,上生菓子が主体の和菓子店です。

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喫茶店とは思えないセット。もちろん,コーヒーなどの方が出ています。

にし茶屋街(広小路バス停から徒歩3分)

諸江屋・西茶屋菓寮「味和以」

森八の次に古い,江戸時代創業で落雁を主とする老舗和菓子店。その本店から程近い,にし茶屋街への出店です。他にない趣向として,秋口から,自分でお餅を焼いて食べるぜんざいもあります。反対に,夏場はかき氷。

諸江屋にし茶屋菓寮と和カフェ・味和以

諸江屋菓寮・味和以の抹茶と上生菓子

炭火の七輪で餅を焼くぜんざい(諸江屋菓寮・味和以・金沢市にし茶屋街)

なお,こちらのお店の本店は徒歩圏の大通り沿いですが,本店にはカフェがありません。

郊外

街中と違って,いずれも無料の駐車場があるため,車移動で寄っていくのなら選択肢になります。現代の建築で,とくに和の内装でもありません。

料亭

会席料理の最後は,最近では,果物などの水菓子かデザートにコーヒーというところも多くなりましたが,本来は抹茶と和菓子を選べるのが正統です。それではじめて,茶事である茶懐石を発祥とする懐石料理といえるのでしょう。

金沢の料亭でのお抹茶と和菓子の例として,

金茶寮・加賀藩家老横山家の江戸時代建造の茶室・御亭の間

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自家製わらび餅を大樋焼の器で。このときは,呈茶の前に水菓子(フルーツ)も付いていました。

江戸時代の武士の邸宅で食事ができるのは,ここ金茶寮と先ほどのかなざわ玉泉邸ぐらいです。それは,江戸・東京を含む空襲に遭った他の城下町にはほとんどなく,金沢旅行の価値の一つです。

希望:他の和菓子屋さんもカフェ営業されては

小出いなほ工場店

今や森八と並び立つ金沢和菓子の大手,小出の新工場。

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野町本店,横川本社店などテーブルのあるお店では,たくさん買うと,このようにサービスでお茶とお菓子がいただけますが,どのお店もカフェ営業はしていません。

こちらは椅子とテーブルが備えられた,新築の工場併設店舗。車利用ならば,北陸自動車道白山インターすぐの立地で,広い平置駐車場があり,トイレもあるのが有用です。

30カ所超で,ほぼ完成かな

何度か追記してきて,テーブルのない茶店風のお店も並ぶ兼六園の門前,それと日本料理店が合わせるものを除き,リストとしてはほぼ完成でしょうか。写真が撮れてないお店も数カ所ありますが,ここまで34カ所(うち庭園内2カ所,武家屋敷跡3カ所,美術館2カ所)と,「抹茶密度」は高そうです。

他に抜けている可能性は,和風でないカフェのメニューになぜか抹茶や和菓子がある場合で,行く機会があれば追記します。