金沢駅徒歩圏で,ホテルではなく一軒の料理屋さんで会席料理を食べようとすると,町家懐石
出色なのは,そのキャリア。長く京都嵐山吉兆で修行され,そのウィンザーホテル洞爺湖のお店で料理長を務められた店主が,どうしてか金沢で独立開業されたという点です。
料亭のように和室の個室ではなく,カウンターとテーブル席での提供で,ゆとりの少ない旅行でも対応できます。このときは昼食で,コンパクトなコースですが,まずは,えびと加賀太胡瓜に酸味を効かせたジュレがけから。
つづく吸物は,蒔絵が美しいお椀で。蓋の裏側にも仕事がされています。
やはりベースが京料理で,昆布だしがきっちりきいた,あたたかくやわらかい真丈です。次のお造りは,時期が夏の終わりで,ぶりなどの冬の魚がない中,焼霜つくりを一つ。お醤油のほかに,ちり酢を添えて。
八寸は,加賀野菜の一つ,市内打木の赤皮南瓜のすり流しなどを,立体的なあしらいで。
鱧をあつあつの餡かけで。
器は古伊万里でしょうか。こういうところも凝っています。
おくらが意外ですが,とろみと辛みに存在感のある蒸し物です。
季節を映して,土鍋で炊かれた香ばしいとうもろこしのご飯。
デザートのソルベには,洋酒のジュレがかかります。
地物の魚が少ない時期と言われましたが,野菜,根菜など他の地物の素材で季節感を堪能できるコース。薄味でありながら,その分当然だしがきいていて,さらに酸味と香辛料が要所で変化を与えているお料理でした。
こうして金沢で伸びている飲食店の一角には,まったく金沢周辺の出身でない方がおられるんですよね。ひがし茶屋街の有力な鮨店さんもそうと聞きます。何か地元の老舗にはない素材の使い方なり,ニーズがあるのかもしれません。