観光と直接関係ないコラムを思いついたので一つ。
こういう城下町で,とくに観光客が多い店では,観光遺産をあてにした受動的な商売になりがちで,殿様商法と呼ばれることもあります。お買い上げありがとうございます,ではなく,ほしければ売ってあげます,という態度です。もちろん現在では,あからさまにそんな態度をとる店はわずかです。
たとえば,客が長い列を作っていても特別な対応をしない,呼んでも返事が遅いとか,臨機応変の対応を避ける,店員が別の話をしていることなどが,起こりがちです。また,老舗の商品やメニューに,長らく新作も新メニューもなく,特別な広告もしないこともよくあります。
度が過ぎると,某和菓子店などのようにいったん倒産してしまい,それで債務が整理されると,何事もなかったように復活するという経緯になります。債務さえ消えれば復活できるのは,職人は内向きに努力を続けていて,商品の質この場合は味は悪くないという実証。営業やサービス,広告に力を入れていなかったため,せっかくの需要を逃していたという解釈です。要するに,質は高いが商売下手だっということです。
昔はこういう殿様商法は損だと戒められてきたものですが,それは店にとって売れるはずのものが売れずに損ということ。しかし,品質が維持されている限り,内容だけとれば意外と得ではないかと,最近思い始めています。
殿様商法は売り手のプライドで維持されているので,「特別おいしくはないが安い,まあこんなもんか,次も来よう」と思わせるのではなく,「おいしいけど高い,次は来ない」と思われてもよい売り方になります。たとえば,食材の質を選べる料理店では,客が減ってもいいから,割高でも安っぽくないものを出していることです。結局,店が見栄を張っているようなものでしょうか。
その場合,高くてもそれ以上の価値のあるものが提供されているのですから,一度限りの旅行なら,特別損はしてないんじゃないかと。営業力がないというのは,広告や営業に経費を使っていないということでもあって,その分が食材のコストに回っているのなら,あまり問題もないはずです。むしろ,食材をけちって,営業とくに広告にコストをかけるお店の方が,お金のかけ方が本末転倒です。
商売上手だがそれだけの店と,商売下手だが職人は仕事をしている店。商売上手な店の方が店は成長するでしょうが,価格に対する品質の点で,客が得をしているのはどちらなのか,一概にはいえそうもありません。
なお,プライドの高そうなお店では,直前でも予約するのが吉です。フリーで入店すると,忙しいときほど,後回しにしよう,適当に済ませようという調理やサービスになります。予約した方にはむしろ,恥をかかないようなものを出そうという姿勢がとられます。店に仕入れの裁量が大きい場合なら,予約のない場合よりよいものが使われる可能性があります。